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 職員の給与等に関する報告

 

 

まえがき報告及び勧告に当たって

 

まえがき全文:PDF版94.5KB

 

 人事委員会の勧告制度は、公務員の労働基本権制約に対する代償措置として、職員の勤務条件を社会一般の情勢に応じた適正なものとする機能を有しており、職員が、県行政を公正かつ効率的に進めるという使命の下で、安心して職務に取り組むための基盤であるとともに、職員の勤務条件について県民の理解を得る上で重要な役割を担っている。

 

 また、地方公務員の給与については、地方公務員法で「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」という均衡の原則に基づいて決定することとされている。人事委員会はこの原則に立脚し、さらに同法の「地方公共団体は、…給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、随時、適当な措置を講じなければならない。」という情勢適応の原則により、給与等の勤務条件について地方公共団体の議会及び長に報告・勧告を行っている。

 

 本委員会では5月から6月にかけて例年通り職種別民間給与実態調査を実施したが、その結果県内民間事業所従業員の給与に関する状況は依然として厳しいものであることが分かった。このような民間給与の実態をもとに、本年の職員の給与等に関する報告及び勧告を行うものである。

 

 ところで、現在本県においては、特例条例による職員給与の減額措置や、定員削減をはじめとする行政の効率化・スリム化、事務事業の見直しなど行財政改革への取り組みが引き続き進められており、本県職員には、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう今後一層の業務の効率化や職務能力の向上に努めるとともに、県民の期待と要請に応えるよう職務に精励することが求められている。

 

 本委員会では、今後とも県民各位の理解を得られるよう適切な職員の給与等に関する報告及び勧告を行うことにより、職員の給与が上記のような職務の遂行に適合したものであるよう、引き続き努力していく所存である。

 

職員の給与等に関する報告

 

 報告全文:PDF版454.5KB

 

 本委員会は、地方公務員法の規定に基づき、平成22年4月現在の島根県職員に係る給与並びに県内の民間事業所の従業員の給与の実態を把握するとともに、職員の給与等を決定する諸条件について調査検討を行ってきたが、その結果の概要は次のとおりである。

なお、職員の給与については、職員の給与の特例に関する条例(平成15年島根県条例第15号。以下「特例条例」という。)により減額して支給されている(注)ことから、このような状況も踏まえて報告を行うものである。

 

(注)本県においては、県財政の健全化へ向けた取組として特例条例が制定され、平成15年4月以降、職員の給料、諸手当が減額して支給されている。当該条例は数次の改正(減額率の改定、減額期間の延長等)を経て、現在の減額期間の終期は平成23年度末とされている。

 

○減額率(給料及び給料月額を算出基礎とする諸手当(退職手当除く))

・管理職:10%・8%(管理職手当は25%・20%)

・その他:6%(若年層の諸手当連動は3%)

 

職員給与実態調査及び民間給与実態調査の調査人員

 

1職員給与等の状況について

 

(1)職員の構成等

 職員には、その従事する職務の種類に応じて、行政職、公安職、医療職、教育職など9種類の給料表が適用されており、その構成比をみると、中学校及び小学校教育職が38.1%と最も高く、以下行政職30.0%、高等学校等教育職16.4%、公安職11.6%等の順となっている。

 また、職員の平均年齢は44.0歳、平均経験年数は21.9年となっており、このうち行政職の職員についてみると、平均年齢は44.3歳(昨年44.3歳)、平均経験年数は22.7年(同22.8年)となっている。(参考資料第1表・PDF版65.8KB

 

 給料表別職員数等

 

 

構成比 

 

 年齢別の職員数を10年前と比較してみると、近年の採用者数の抑制を受けて職員数が減少する中、平均年齢は全職員で3.1歳、行政職では3.9歳上昇している。(参考資料第4表・PDF版90.0KB

 

 年齢別職員数

 

 

(2)職員の給与

 平成22年4月分の職員の平均給与月額は、特例条例による減額措置前(以下「減額措置前」という。)では401,372円で、昨年に比べ3,406円減少(マイナス0.8%)しており、特例条例による減額措置後(以下「減額措置後」という。)では376,403円で3,245円の減少(マイナス0.9%)となっている。

 職員の平均年齢が昨年に比べ高くなっているにも関わらず、平均給与月額が減少しているのは、平成18年4月の給料表の切替に伴う経過措置により支給されている差額(注)(以下「切替に伴う差額」という。)が減少していることによる。

 また、行政職の職員の平均給与月額は、減額措置前では378,345円で、昨年に比べ4,069円減少(マイナス1.1%)しており、減額措置後では354,103円で3,923円の減少(マイナス1.1%)となっている。(参考資料第7表・PDF版8.0KB

 

 (注)国においては、平成18年4月から、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金水準が最も低い地域に合わせ、平均4.8%の引下げ改定を行い、経過措置を設けて段階的に実施するなどの改正が行われた。

 本県においても、国に準じて給料表の引下げ改定が行われている。

 

○経過措置の内容

 改定後の給料表の適用の日(平成18年4月1日)における給料月額が、その前日に受けていた給料月額(切替前給料月額)に達しない職員に対しては、その者の受ける給料月額が、昇給等により切替前給料月額に達するまでの間、その差額を支給する。

 

 職員の平均給与月額

 

 

2民間給与等の状況について

 本年5月から6月にかけて、職員の給与等と比較検討するため、人事院と共同で、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の県内237の民間事業所のうちから層化無作為抽出法(注)により抽出した126事業所を対象に「平成22年職種別民間給与実態調査」を実施し、うち121事業所の調査を完了した。(参考資料第19表・PDF版6.6KB

 民間給与実態調査の調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、96.0%と引き続き極めて高いものとなっている。

 なお、調査では、公務の行政職と類似すると認められる事務・技術関係職種3,601人及び研究員、医師等職種1,069人について、本年4月分として支払われた給与月額等を調査するとともに、各民間企業における給与改定の状況や、雇用調整の実施状況等についても調査を行った。

 

(注)層化無作為抽出法とは、特定の条件でグループ(層)を作成し、それぞれの層から無作為に対象を抽出する方法。民間給与実態調査においては、「産業」「企業規模」「組織」を基準として層を作成し、各層から一定数の事業所を無作為に抽出し、調査対象としている。

 

 

(1)本年の給与改定等の状況

 一般の従業員(係員)の給与改定状況をみると、ベースアップを実施した事業所の割合は16.7%(昨年17.2%)、ベースアップを中止した事業所の割合は33.8%(同35.7%)とともに昨年に比べて減少している

 一方、ベースダウンを実施した事業所について、昨年は1.2%であったが、本年は該当がなかった。

 また、一般の従業員について、定期昇給を実施した事業所の割合は82.8%(昨年65.5%)と増加し、定期昇給を停止した事業所の割合は1.4%(同15.1%)と減少している。昇給額が昨年に比べ増額となっている事業所の割合は38.7%(同26.0%)と増加しているのに対し、減額となっている事業所の割合は11.0%(同12.7%)と減少している。

 

 民間における給与改定の状況

 

民間における定期昇給の状況

 

(2)雇用調整の実施状況

 平成22年1月以降の民間事業所における雇用調整の実施状況をみると、雇用調整を行った事業所の割合は43.1%と昨年(55.7%)に比べて減少しているものの、依然として高い水準となっている。

 

 民間における雇用調整の状況

 

3物価及び生計費について

 

 本年4月の消費者物価指数(総務省)は、昨年4月に比べ、全国でマイナス1.2%、松江市でマイナス0.7%とそれぞれ減少している。

 また、勤労者世帯における消費支出(総務省「家計調査」)等を基礎として算定した本年4月の松江市における2人世帯、3人世帯及び4人世帯の標準生計費は、それぞれ184,950円、200,800円及び216,660円となっている。(参考資料第30表、第31表・PDF版14.1KB

 

4都道府県職員の給与について

 

 先に総務省が公表した平成21年4月1日現在の都道府県ラスパイレス指数(行政職)の平均は、98.7であった。

 本県のラスパイレス指数は、特例条例による給与の減額措置の影響もあり93.1となっており、平成17年度以降は全国でも低い水準となっている。

 都道府県のラスパイレス指数の分布状況

5職員給与と民間給与との比較

(1)月例給

 職員給与と民間給与との比較は、職員と民間企業従業員の同種・同等の者同士を比較することを基本として、公務においては行政職給料表適用者、民間においては公務の行政職と類似すると認められる事務・技術関係職種の者について行っている。

 また、職員と民間企業従業員では、それぞれ年齢、学歴などの人員構成が異なっており、このように異なる集団間での給与の比較を行う場合には、それぞれの集団における単純な給与の平均値を比較することは適当ではないため、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴を同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行っている。(参考資料第20表・PDF版6.6KB

 本年4月分の給与額について、職員給与と民間給与を比較すると、民間給与370,200円に対して職員給与は減額措置前では380,965円であり、10,765円(2.83%)上回っているが、減額措置後では356,542円であり、逆に13,658円(3.83%)下回っている。(参考資料第16表・PDF版3.8KB

 

 職員給与と民間給与との月例給較差

 

(2)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の3.61月分に相当していた。これは、昨年(3.65月分)より減少しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間平均支給月数(3.90月)を0.29月分下回っている。(参考資料第27表・PDF版5.1KB

 なお、特例条例により、期末手当・勤勉手当も連動して減額されており、期末手当・勤勉手当の支給月数から特例条例による減額率分に相当する月数を減じた月数(3.67月分)と比べても、民間の支給割合が0.06月分下回っている。

 

 職員の期末・勤勉手当と民間の特別給との較差

6人事院勧告の概要

 

 人事院は、本年8月10日に、国会及び内閣に対して一般職の国家公務員の給与等について報告し、併せて給与の改定について勧告を行ったが、その概要は次のとおりである。(参考資料5・PDF版31.2KB

 

【職員の給与等に関する報告・勧告】
第1.職員の給与等

(1)民間給与との較差に基づく給与改定

ア)公務員給与と民間給与の実態

(ア)公務員給与の状況

 民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(144,513人、平均年齢41.9歳)の本年4月における平均給与月額は395,666円となっており、税務署職員、刑務官等を含めた職員全体(260,581人、平均年齢42.2歳)では408,496円となっている。

(イ)民間給与の状況

 一般の従業員について、ベースアップを実施した事業所の割合は昨年に比べてやや増加している。また、定期昇給の額が昨年に比べて増額となっている事業所の割合が昨年に比べて増加しているのに対し、減額となっている事業所の割合は減少している。

 また、本年1月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は39.0%で、その内容は採用の停止・抑制、残業の規制、一時帰休・休業の順になっている。

 

イ)民間給与との比較

(ア)月例給

 公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、4月分の給与額の比較(ラスパイレス方式)を行ったところ、公務員給与が民間給与を757円(0.19%)上回っていた。

 国の月例給較差

 

(イ)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の3.97月分に相当しており、公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.15月)が民間事業所の特別給を0.18月分上回っていた。

 

ウ)本年の給与の改定

(ア)50歳台後半層の職員の給与の抑制措置

 55歳を超える職員(行政職俸給表(一)5級及びこれに相当する職務の級以下の職員、医療職俸給表(一)適用職員等を除く。)に対する俸給月額の支給に当たっては、当分の間、その者が55歳に達した年度の翌年度から、当該職員の俸給月額に本年の官民較差を考慮して定めた100分の1.5を乗じて得た額に相当する額を当該俸給月額から減ずることとし、これによると職務の級の最低の号俸の俸給月額に達しない場合にあっては、当該最低の号俸の俸給月額まで減ずることとする。

 この措置の適用を受ける職員に支給する専門スタッフ職調整手当等について、所要の措置を講ずるものとする。また、俸給の特別調整額についても、同様とする。

(イ)俸給表

 (ア)の措置による解消分を除いた残りの公務と民間の給与差と同程度の平均0.1%の引下げ改定を行うこととする。改定に当たっては、民間の給与水準を下回っている30歳台までは据え置くこととし、40歳台の職員が受ける号俸以上の号俸を対象として引き下げるものとする。

 また、行政職俸給表(一)以外の俸給表(医療職俸給表(一)及び任期付研究員俸給表(若手育成型)を除く。)についても、行政職俸給表(一)との均衡を考慮して、俸給月額の引下げ改定を行うものとする。

(ウ)経過措置額の取扱い

 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(平成17年法律第113号)附則第11条の規定による俸給(経過措置額)についても、医療職俸給表(一)適用職員及び任期付研究員(若手育成型)を除き、引き下げることとする。引下げ後の経過措置額の算定の基礎となる額は、平成18年3月31日において受けていた俸給月額に、その者に係る昨年の経過措置額の引下げ率(△0.24%)及び本年の行政職俸給表(一)の最大の号俸別改定率(△0.17%)を考慮して定めた100分の99.59を乗じて得た額とする。さらに、(ア)の措置の対象職員にあっては、これにより算定される経過措置額から、当該経過措置額に(ア)の措置の割合(100分の1.5)を乗じて得た額に相当する額を減じた額をその者の経過措置額とする。

(エ)期末手当・勤勉手当

 民間の特別給の支給割合との均衡を図るため、支給月数を0.2月分引き下げ、3.95月分とする。本年度については、12月期の期末手当・勤勉手当から差し引くこととし、平成23年度以降においては、民間の特別給の支給状況等を参考に、6月期及び12月期における期末手当・勤勉手当の支給月数を定めることとする。

 

国の期末手当等支給月数

 

(オ)超過勤務手当

 民間の実態を踏まえ、公務においても、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日の勤務の時間を含めることとし、平成23年度から実施することとする。

(カ)改定の実施時期等

 公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から施行する。

 本年4月からこの改定の実施の日の前日までの期間に係る較差相当分を解消するため、本年4月に受けた民間給与との比較の基礎となる給与種目の給与額の合計額に調整率(マイナス0.28%)を乗じて得た額に、本年4月からこの改定の実施の日の属する月の前月までの月数を乗じて得た額と、本年6月に支給された特別給に当該調整率を乗じて得た額を合算した額を基にして、本年12月期の期末手当の額において調整を行うこととする。

 

(2)給与構造改革の進捗状況等

ア)給与構造改革の進捗状況

 給与構造改革は、平成18年度から平成22年度までの5年間で段階的に実施してきており、当初予定していた施策の導入・実施は本年度ですべて終了することとなる。

イ)地域別の民間給与との較差の状況

 給与構造改革前と比べると、地域別の較差の差は相当程度縮小していることから、地域ブロック間の給与配分の見直しについては、これまでのところ着実に成果を挙げてきているものと考えられるが、今後最終的な検証を行う必要がある。

ウ)給与構造改革期間終了後の取組

(ア)昇給抑制の回復措置の実施

 俸給の引下げについては経過措置を設けて段階的に行うこととしたため、必要な制度改正原資を確保することを目的として平成18年度から平成21年度までの4年間にわたり全職員の昇給を毎年1号俸抑制してきたところであるが、平成23年4月にかけて生ずる制度改正原資については若年・中堅層を中心にこれまで抑制されてきた昇給の回復に充てることとし、具体的には平成22年1月1日に昇給抑制を受けた者の号俸を平成23年4月1日に1号俸上位に調整することとする。

(イ)高齢層給与の見直し

 50歳台後半層の職員の給与については、民間の動向を踏まえながら、適切な均衡が図られるよう、定年延長の検討の中であるべき給与制度についても検討することとしたい。60歳台前半の給与についても、民間の給与の状況等を踏まえ、職務と責任を考慮しつつ、具体的な給与水準及び給与体系を設計することとする。

(ウ)その他の取組

 勤務実績の給与への反映については、必要に応じて基準の見直しを行うなど、今後も適切な運用が確保されるよう努めていくこととする。

 

第2.公務員の高齢期の雇用問題(65歳定年制の実現に向けて)

(1)高齢期雇用をめぐる社会の動き

 高齢者の雇用を推進しその能力等を十分活用していくことが社会全体の課題となっており、公務においても能率的な行政運営を確保しながらこの問題に取り組んでいく必要がある。

 

(2)公務における高齢期雇用の基本的な方向

 本格的な高齢社会において公務能率を確保しながら職員の能力を十分活用していくためには、公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、定年を段階的に65歳まで延長することが適当である。60歳台前半の職員の給与水準については、民間の所得水準を踏まえつつ、職員の職務と責任を考慮して設定する。あわせて、多様な働き方を選択できるようにすることが適当である。

 なお、定年延長に当たっては、能力・実績主義の徹底を図りながら、60歳以降の働き方を含めて採用から退職に至る公務員人事管理全体を見直していくことが不可欠と考える。

 

(3)定年延長に向けた制度見直しの骨格と今後の課題

ア)定年延長に向けた制度見直しの骨格

(ア)定年延長と60歳台の多様な働き方

 定年の65歳への引上げ、高齢期の働き方に関する意向を聴取する仕組み、役職定年制、定年前の短時間勤務制、人事交流の機会の拡充を検討する。

(イ)定年延長に伴う給与制度の見直し

 60歳台前半の職員については、民間の実情を踏まえ、給与水準を相当程度引き下げることとして具体的な給与水準及び給与体系を設計する。なお、60歳前の給与については、本年の勧告においても民間水準を上回っている50歳台後半層の給与について特に1.5%減ずる方策を講ずることとしたところであるが、今回の改定後においても50歳台においては公務員給与が民間給与を上回っている状況にあり、今後、定年延長に伴う給与制度の見直しを行うことも念頭に置きつつ、特に官民の差の大きい50歳台後半層を中心とする50歳台の給与の在り方について必要な見直しを行うよう検討する。

(ウ)その他関連する措置

 加齢に伴い就労が厳しくなる職務に従事する職員の取扱いや、原則となる定年を超える特例的な定年の必要性、勤務延長制度や現行の再任用制度の存置、能力開発等を検討する。

イ)今後の課題

 アに基づき、更に検討を進め、本年中を目途に具体的な立法措置のための意見の申出を行うこととしたい。

 

(4)60歳定年まで勤務できる環境の整備

 定年までの勤務を前提とした人事管理を行うための環境整備に関する「退職管理基本方針」に掲げられた課題について検討を進め、可能なものから施策を具体化していく。

 

【公務員人事管理に関する報告】

(1)公務員の労働基本権問題の議論に向けて

ア)公務における労働基本権問題の検討は、公務特有の基本的枠組みと特徴を十分踏まえて行う必要がある。

イ)自律的労使関係制度の在り方については、基本権制約の程度等に応じ4つのパターンが考えられる。

  • パターン1協約締結権及び争議権を付与。予算等の制約は存在
  • パターン2協約締結権を付与し争議権は認めない。この場合は代償措置(仲裁制度)が必要
  • パターン3協約締結権及び争議権は認めずその代償措置として第三者機関の勧告制度を設けるとともに、勤務条件決定の各過程における職員団体の参加の仕組みを新たに制度化
  • パターン4職位、職務内容、職種等に応じてパターン1〜3を適用

ウ)自立的労使関係制度の在り方を議論する際は、国会の関与(法律・予算)と当事者能力の確保等の論点について詰める必要がある。

エ)見直しの基本的方向を定め、各論点を十分に詰めた上で、全体像を国民に示し理解を得て、広く議論を尽くして結論を得る必要がある。

 

(2)基本法に定める課題についての取組

 平成24年度の新採用試験実施に向け、所要の準備を行うとともに、時代の要請に応じた公務員の育成を図るため研修の体系化と研修内容の充実を図る。また、官民人事交流等を推進する。さらに女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針を見直すなど実効性のある取組みを強化していく。

 

(3)その他の課題についての取組

 非常勤職員制度の改善、超過勤務の縮減、適切な健康管理及び円滑な職場復帰の促進を図る。

 

7むすび

 職員の給与決定に関する諸条件については、以上述べたとおりである。

 これらの調査結果等を基に、国及び他の都道府県の動向並びに特例条例による減額措置が行われていること等を踏まえ、様々な角度から慎重に検討を重ねた結果、職員の給与等について所要の措置を講ずる必要があると判断し、次のとおり報告する。

 

(1)月例給について

 本県の民間事業所の給与等の状況をみると、定期昇給が改善傾向にあるものの、ベースアップを中止した事業所の割合や、賃金カット等の雇用調整の実施状況については依然として高い水準にとどまっている。このような状況の中で、本年4月分の職員給与と民間給与を比較したところ、減額措置前では職員給与が民間給与を上回っており、(2.83%)、昨年(2.83%)と同じ較差率となった。

 このように、昨年の給料月額の減額改定及び切替に伴う差額の減少により職員の給料水準が段階的に引き下げられているにもかかわらず、依然として県内の民間給与が減額措置前の職員給与を下回り、その較差が縮小しておらず調整を要する状況となっている。

 一方、国は、俸給表(医療職俸給表(一)、任期付研究員俸給表(若手育成型)及び若年層等の職員が受ける号俸を除く。)の引下げ改定とともに、50歳台後半層の職員の給与の抑制措置を併せて行うこととしている。具体的には、国は定年延長に伴う給与制度の見直しの中で、50歳台後半層を中心とする50歳台の給与の在り方について必要な見直しのための検討を行うこととしており、当面の措置として50歳台後半層の職員の俸給等及び俸給の特別調整額について一定率を乗じた額を減ずることとした。

 このような状況を踏まえ、職員の月例給については一定の引下げを行う必要があると判断した。

 引下げを行うに当たっては、本県職員について特例条例による給与の減額措置が継続中であり、減額措置後の職員給与が民間給与を下回っている中で、公務への有能な人材の確保や職員の士気の確保の観点等を引き続き考慮する必要がある。

 また、人事院は俸給表の引下げ改定に併せ、50歳台後半層の職員(注1)を対象とした給与の抑制措置を給与制度の見直しを念頭に置いて勧告している。

 以上を総合的に勘案して人事院勧告に準じた給料表の引下げ改定及び当該給与の抑制措置を行うこととする。

 なお、給料月額について上記の改定及び措置を行うことから、切替に伴う差額の算定基礎となる額についても人事院勧告の内容を考慮して引き下げることとする。

 また、高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表についても、行政職給料表との均衡を基本に、給料月額及び切替に伴う差額の算定基礎となる額の引下げ改定並びに50歳台後半層の職員の給与の抑制措置を行うこととする。(注2)

 50歳台後半層の職員の給与の抑制措置の適用を受ける職員に支給する農林漁業普及指導手当及びへき地手当(これに準ずる手当を含む。)についても、当該給与の抑制措置と同様の措置を講ずることとする。

   

(注1)行政職俸給表(一)5級及びこれに相当する職務の級以下の職員、医療職俸給表(一)適用職員、指定職俸給表適用職員、再任用職員、任期付研究員並びに特定任期付職員を除く。

(注2)国は、平成16年4月の国立大学の法人化に伴い、本県の高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表に相当する俸給表を廃止しているため、当該俸給表にかかる勧告を行っていない。

 

(2)期末手当・勤勉手当について

 前記のとおり、民間の特別給の支給割合(3.61月分)は昨年(3.65月分)と比べて減少(△0.04月分)している。このため職員の期末手当・勤勉手当の支給月数(3.90月分)は民間の支給割合を0.29月分上回っている。

 また、特例条例による減額措置により実際に支給されている期末手当・勤勉手当の支給相当月数(3.67月分)で比較した場合においても、民間の特別給の支給割合を0.06月分上回っていることが認められた。

 一方、国は、期末手当・勤勉手当の年間の支給月数を3.95月分とすることとしている。

 本委員会は、職員の士気の高揚や有能な人材確保の観点から、国や他の都道府県の職員の状況を考慮し、一定の水準を確保しつつも、広く県民の理解を得るために地域の民間事業所における支給実態をより反映したものとする必要があると考えている。

 以上の点を総合的に勘案し、本年の期末手当・勤勉手当については、0.05月分引き下げ3.85月分とすることが適当であると判断した。

 なお、引下げに当たっては12月期の期末手当を0.05月分引き下げることとする。

 また、任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても同様に支給月数を引き下げることとする。

 

(3)高等学校及び特別支援学校に設置される主幹教諭について

 学校教育法が改正され、平成20年4月1日より学校の組織運営体制や指導体制の充実を図るため、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校等に新たな職として副校長、主幹教諭、指導教諭(注)を置くことができるととなった。

 

(注)各職の職務内容

  • 副校長:校長を助け、命を受けて校務をつかさどる
  • 主幹教諭:校長等を助け、命を受けて校務の一部を整理するとともに、児童生徒の教育等をつかさどる
  • 指導教諭:児童生徒の教育をつかさどるとともに、他の教諭等に対して、教育指導の改善・充実のために必要な指導・助言を行う

 

 本県においては平成21年4月より小・中学校に主幹教諭が設置されたところであるが、今般、平成23年度より高等学校及び特別支援学校に主幹教諭を設置する方針が決定されたところである。

 この方針決定を受け、本委員会として主幹教諭の処遇を検討した結果、小・中学校と同様に以下のとおりとすることが適当であると判断した。

ア)主幹教諭の給料表

 職員の職務は、その複雑、困難及び責任の度合に基づき、給料表に定める職務の級に分類することとされており、現在の4級制の高等学校等教育職給料表のうち、教諭は2級、教頭は3級に分類されている。

 高等学校及び特別支援学校に新たに設置される主幹教諭の職務については、その職責等が現在の教諭、教頭のいずれとも異なることから、現行の2級と3級の間に新たな級(特2級)を設けることとする。

イ)主幹教諭の諸手当等

 主幹教諭については、教職調整額を支給することとし、管理職手当は支給しない。また、期末手当・勤勉手当における役職段階別加算の割合については、100分の10とする。

 

(注)教育職員には時間外勤務手当は支給されず、校長及び教頭には管理職手当が、職務の級が1級又は2級の教諭等には教職調整額(給料月額の4%)が支給されている。

 また、期末手当・勤勉手当の基礎となる額については、職の職制上の段階、職務の級等に応じ、校長及び教頭については給料の月額の10〜20%が、教諭については給料の月額の0〜10%が、それぞれ加算(役職段階別加算)されている。

 

(4)その他の手当等について

ア)時間外勤務手当

 月60時間を超える時間外勤務に係る時間外勤務手当の支給割合については、労働基準法の改正に伴い、本年4月より引上げを行ったところである。国においては、民間の実態を踏まえ、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日の勤務の時間を含めることとした。本県においても、県内民間事業所の実態を踏まえ、人事院勧告に準じて平成23年度から月60時間の時間外勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日を含めることとする。(参考資料第29表・PDF版3.6KB

イ)特地勤務手当等

 平成22年4月に国家公務員の特地公署等及び小・中学校等教職員のへき地学校等の見直しが実施されたところであるが、本県においても国の特地公署等及びへき地学校等との均衡を考慮し、特地公署及び準特地公署の見直しを行う必要がある。

ウ)初任給調整手当

 家畜伝染病発生時の対応等、獣医師の役割がより重要となる中、本県においては獣医師の採用者数が採用予定者数を下回る状況が続いている。現在、本県の獣医師のう過半数近くが50歳台であることから、このような状況が続いた場合、今後の獣医師の退職により必要な獣医師数の確保が困難になることが考えられる。このことから、本県における獣医師の確保を図るため、獣医師に支給する初任給調整手当を改善する必要がある。

エ)特殊勤務手当

 特殊勤務手当については、状況の変化等に応じて定期的に見直しを行ってきたところであるが、昨今の社会情勢の変動や業務内容の変化等を踏まえ、手当の対象となる業務を精選し、実績や業務の特殊性をより反映した支給内容となるよう見直しを行う必要がある。

オ)教育職員の給与等

 本年度の文部科学省予算においては、義務教育等教員特別手当及び給料の調整額の縮減が予定されているところであるが、本県における教員給与については、職務や実績に見合った教育職員の処遇を行うという観点から、国や他の都道府県の動向を踏まえ、適時適切に見直しを行っていく必要がある。

 

(5)改定の実施時期等について

 今回の給与改定は、職員の給与水準を引き下げる内容の改定であることから、この改定を実施するための条例の規定は遡及することなく施行日からの適用とする。

 また、減額改定に伴う日割計算などの事務の複雑化を避けるため、この改定は、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)から施行する。

 なお、現在職員給与について特例条例による減額措置が行われており、実際の職員給与の支給水準が民間給与を下回っていること等を考慮し、今回の改定に伴う給与の年間調整については行わないこととする。

 

(6)人事管理上の課題について

ア)人材の確保・育成

 社会経済情勢がめまぐるしく変化する中で、県の果たすべき役割はこれまで以上に大きくなっており、複雑・高度化する行政課題に対応した質の高い行政運営を進めなければならない。そのためには、高い気概、使命感、倫理観を持った優秀な人材や高度な専門的知識や民間企業等の経験を有する多様な人材の確保が必要不可欠である。

 このため、職員採用に当たっては、細やかな知識の検証よりも論理的な思考力・応用能力の検証や人物面をより重視していく必要がある。

 また、採用試験における応募者数については、採用予定者数に比して受験者数が増加せず、受験年齢人口の減少、民間企業志向等により依然減少傾向にあり、人材確保上厳しい状況が続いている。

 今年度の採用試験の実施に当たっては、年齢要件等の緩和やより人物重視の試験とするための制度見直しを行った。また、民間企業経験者等を対象とする経験者採用試験を7年ぶりに行うことにしている。引き続き優秀かつ多様な人材を確保するために、このような見直し等の効果を検証した上で、試験制度の一層の見直し・改善に取り組む必要がある。

 さらに、近年の職員採用の抑制に伴い、他の年齢層に比べて30歳台前半以下の層が少ない状況にあることから、将来の適正な組織運営に支障を来すことがないよう、より一層の計画的・安定的な人材確保が必要である。

 一方、大幅な人員削減への取組みが行われている状況にあって、複雑・高度化する行政課題に的確に対応し、県民の期待と信頼に十分応えていくためには、これまで以上に職員一人ひとりの意識改革と資質向上を図ることが必要である。

 このため、「島根県人材育成基本方針」に基づき、職員が各職場で求められている具体的能力を把握し、自律的にその能力開発を行うための支援や職員同士で刺激やサポートし合う育て・育てられる学習的な職場づくりなどを一層進めていく必要がある。

 また、ますます高度専門化する行政ニーズに対応するためには、行政職の職員などの専門性を高めることも必要である。これまでも、このような観点から特定分野に精通した職員の育成が行われているが、今後も、人事異動ローテーションや研修の充実などにより、幅広い視野を持ちつつ専門的な知識や技術を身につけた職員の計画的な育成に努める必要がある。

イ)能力・実績に基づく人事管理

 時代の変化に的確に対応し、県民の負託に応えていくためには、職員の公務に対する意欲と能力を高め、組織の活性化と公務能率の向上を図ることが重要であり、そのためには、能力・実績に基づく人事管理を一層推進する必要がある。

 国は、昨年4月に新たな人事評価制度を施行して、人事評価の結果を任免、給与及び人材育成に活用するなど、能力・実績に基づく人事管理を進めている。

 本委員会でも、これまで、人事評価制度は職員の能力を的確に評価し、その結果を処遇に反映できるものでなければならない旨言及してきたところである。

 本県は、昨年10月から、それまでの管理職に加えて一般職員についても人事評価制度を本格実施するなど、人事評価制度の整備を図っているが、管理職以外の一般行政職員及び教育職員については、評価結果を処遇に反映する仕組みとなっていない。

 評価結果を処遇に反映するに当たっては、職員の勤務成績がより一層、客観的かつ公正に評価されることが重要である。今後、実効性のある人事評価制度の確立に向けた取組みを進める必要がある。

ウ)女性職員の登用

 男女共同参画社会の実現の観点はもとより、多様化する県民ニーズへの幅広い対応の観点からも、女性職員の果たす役割はますます重要となっている。

 しかし、管理職に占める女性の割合(病院職員・教育職員・警察職員を除く。)は、平成19年度の2.6%が平成22年度には5.2%となるなど、年々向上はしているものの依然低い状況にある。また、平成22年度における各年齢層に占める女性職員の割合は、50歳台が10.1%、40歳台が17.5%、30歳台が29.9%、20歳台が35.9%と若年層になるほど高くなっている。

 このため、女性職員が多様な経験を積めるように職域を拡大するなど、計画的な人材養成をこれまで以上に進めるとともに、女性職員の管理職への積極的登用に引き続き取り組んでいく必要がある。

 さらに、女性職員は家事や育児等家庭生活における負担が大きいことから、女性職員の登用を進めるには、仕事と家庭生活を両立しやすい職場環境づくりを一層推進する必要がある。

エ)両立支援の推進

 職員が、家庭生活、地域活動、自己啓発など自らの生活と職業生活を調和させ、生き生きと意欲的に仕事に臨むことができる環境を整備するワーク・ライフ・バランスの推進は、少子高齢化に対応しつつ、優秀な人材を確保し、質の高い行政を安定的・継続的に展開していく上で非常に重要である。中でも、仕事と育児・介護の両立に向けた支援は大きな課題である。

 本県は、これまでも育児・介護のための休暇や育児休業等の両立支援の制度を整備してきており、本年6月には、育児休業制度の拡充、子の看護休暇の取得日数の拡充、短期の介護休暇の新設等を行ったところである。

 任命権者は、本年3月に、平成22年度から平成26年度までの5年間を計画期間とする「子育てしやすい職場づくり推進計画(特定事業主行動計画)」の後期計画を策定した。この計画に基づき、職員の仕事と子育ての両立を支援するための環境の整備に向けた取組みをより一層推進する必要がある。

 とりわけ、男性職員の育児休業等の取得促進は、男性の子育て参加の最初の重要な契機となるとともに、女性の仕事と子育ての両立の負担を軽減するための取組みとして、最も重要である。

 計画において、任命権者は男性職員の育児休業等取得率の数値目標を50パーセントと設定した。(男性の育児参加のための休暇、育児時間休暇、育児部分休業及び育児短時間勤務を含む。)計画を策定する際に実施したアンケートによれば、多くの男性職員は、環境さえ整えば育児休業等を取得したいと考えていることが明らかになっている。

 このことから、管理監督者は両立支援の必要性や、両立支援制度の内容を十分に理解したうえで、対象職員に対する個別の制度説明や、休暇・休業期間中の職場の業務遂行体制を見直す等、男性職員が育児休業等を取得しやすい職場環境づくりをさらに進めていくことが重要である。

オ)時間外勤務の縮減

 時間外勤務の縮減は、職員の健康保持、仕事と生活の調和及び公務能率の確保を図る上での重要な課題であることから、本委員会でも毎年言及しているところである。

 任命権者も、時間外勤務の縮減を重要な課題と位置づけて、縮減目標時間の設定、ノー残業デーの設定等の様々な取組みを継続的に行っている。一人当たりの時間外勤務実績は、近年ほぼ横ばいの状態であったものが、昨年度は、緊急経済対策や新型インフルエンザ対応等の影響もあり増加に転じたところである。時間外勤務は、職員の心身の健康の保持にも影響を与え、最終的には県民サービスにも影響を与える可能性があることから、今後もより一層の時間外勤務縮減に取り組む必要がある。

 このため、管理監督者は、職員それぞれの在庁時間、業務負荷の実態や、休暇取得の状況等を常に適切に把握し、効率的な業務運営を図る必要がある。

 また、職員一人ひとりにおいても計画的に仕事を進め、効率よく日々の業務を遂行していく必要がある。

カ)メンタルヘルス対策

 メンタルヘルス対策は、職員が高い士気を持って能力を十分に発揮し、質の高い行政サービスを提供するために、また、職員個人や家族の充実した生活を確保するために、極めて重要な課題である。このことから、本委員会では、取組みの必要性について従来から言及してきたところである。

 任命権者は、研修の受講機会の拡大、専門医師・臨床心理士によるストレスカウンセリング等の予防対策や、療養後の職場復帰支援事業等の様々な取組みを継続的に行っている。本委員会の調査によれば、病気休職者等のうち精神疾患を原因とする者の数は、一昨年、昨年と減少している。

 一方、行政課題の複雑化・高度化により職務の困難性が増す中、様々な要因によりストレスは増大する傾向にあることから、これまで以上に職場単位での対策も必要となっている。

 管理監督者は、自らがメンタルヘルス対策の中心的な立場であることを自覚し、職員の日々の勤務状況・健康状態の把握や、所属職員が気軽に相談できる雰囲気をつくる等、きめ細かい対策を行い、実効性あるものにすることが重要である。

 また、職員一人ひとりにおいても、お互い常にコミュニケーションを図りながら助け合い、何でも相談できる職場環境づくりを心がけることが必要である。

キ)高齢期の雇用問題

 公的年金の支給開始年齢の引上げに伴い、雇用と年金の連携を図ることは喫緊の課題となっている。

 人事院は、年金支給開始年齢の引上げに合わせて、平成25年度から、定年年齢を段階的に65歳まで延長することが適当であるとし、定年延長を行う上での高齢期における雇用の考え方を示した上で、定年延長に向けた制度見直しの骨格を示した。この骨格を基に今後さらに検討を進め、本年中を目途に具体的な立法措置のための意見の申出を行うことにしている。

 本県も、このような国の動向を注視しながら、高齢期における給与制度の見直しや加齢に伴い就労が厳しくなる職務に従事する職員の取扱いなど、高齢期の雇用に伴う具体的な課題について検討を進める必要がある。

 

(7)勧告実施の要請について

 人事委員会の勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき、公務員の勤務条件を社会一般の情勢に適応させるためのものとして、県民の理解と支持を得て定着し、行政運営の安定に寄与してきている。

 現在、危機的な状況にある県財政の下、個々の職員は、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう、複雑・多様化する業務に対し、強い使命感をもって立ち向かっていくことが求められており、給与をはじめとする職員の勤務条件は、そのような職員の努力や成果に的確に報いるものでなければならない。

 一方、現在行われている特例条例による給与の減額措置は、県財政が極めて厳しい状況下でのやむを得ない措置であるとはいえ、職員の生活や士気に与える影響が極めて大きく、可能な限り早期に本来あるべき給与水準が確保されることを期待するものである。

 県議会及び知事におかれては、この報告並びに勧告に深い理解を示され、適切な対応をいただくよう要請する。

 


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