●発生状況
RSウイルス感染症は、例年、秋から冬季に流行がみられますが、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年以降流行パターンが変化しています。2020年は流行がみられませんでしたが、2021年以降は夏期に流行がみられ、
2023年も5月以降に流行が拡大しています。
例年は0歳から1歳が流行の中心ですが、2021年・2022年では2歳以上の報告が多くみられています。
年齢を問わず、生涯にわたり何度も症状を伴う感染を繰り返します。生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに初感染すると言われています。
乳幼児や高齢者では、細気管支炎や肺炎を引き起こし重症化することもあり、注意が必要です。
●病原体
ニューモウイルス科のニューモウイルス属に分類されるRSウイルス(Respiratory syncytial virus)です。
●感染経路
患者の咳やくしゃみのしぶきに含まれるウイルスによる飛沫感染や、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感染で感染します。
年長児や成人の再感染例では、感染してもかぜ様症状のみで終始し、RSウイルスに感染していることに気付かないままに乳幼児等への感染源となることもあります。
保育園や高齢者施設等での集団発生など施設内・院内感染対策に注意しましょう。
●潜伏期
2〜8日(標準的には4〜6日)です。
●臨床症状
症状は、発熱や鼻汁などの軽いかぜ樣症状から重い肺炎まで様々です。
乳幼児期においては重要な疾患で、特に生後数週間〜数か月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こすことがあります。細気管支炎による喘鳴、呼吸困難、肺炎など重症化し、入院による呼吸管理を必要とする場合もあります。
再感染あるいは幼児の感染の場合は、細気管支炎や肺炎などは減り、上気道炎が多くなります。中耳炎を併発することもあります。
また、高齢者においても急性の重症下気道炎を起こす原因となることが知られています。
●検査室診断
急性の呼吸器感染症状を呈する患者からのRSウイルスの検出、あるいは迅速診断キットにより抗原が陽性の場合、RSウイルス感染症と診断します。
●治療と予防
気管支炎・細気管支炎・肺炎などは、適切な輸液・気道分泌液の機械的な除去、酸素の投与などの入院管理下で症状に応じた治療を必要とします。
乳幼児及び高齢者施設等での施設内・院内感染の原因疾患として最も注意すべき感染症のひとつであり、まん延防止対策が重要です。
咳やくしゃみによる飛まつ感染や手指等を介して接触感染することが多いので、咳エチケットを心掛け、手洗いや手指消毒で感染予防に努めましょう。
接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いか又はアルコール製剤による手指衛生の励行を行います。
低出生体重児や免疫異常、心臓疾患などの基礎疾患がある乳幼児に対しては、流行期に、RSVの表面蛋白の一つであるF(Fusion)蛋白に対するモノクローナ ル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)を投与(月1回の筋肉注射)する予防方法があります(詳細は主治医にご相談ください)。
●感染症法での取扱い
定点把握5類感染症として診断した指定届出機関(小児科定点)から、症状や所見から当該疾患が疑われ、
病原、血清学的診断がなされたものについて届け出ることになっています。
学校保健安全法では「急性細気管支炎(RSウイルス感染症など)」として「その他の感染症」に分類されており、通常は出席停止の対象にはなりません。