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鷲ヶ峰の昆虫

 自然回帰の森ではどんな種類の昆虫がいて、いつ頃みられるかチョウ、トンボ、セミ、甲虫などについてお話しします。

 

 チョウのなかまは、現在までに隠岐島から80種が知られており、その多くが大満寺山系で見られます。よく目につく大型のアゲハチョウのなかまはアゲハ、アオスジアゲハ、キアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、モンキアゲハ、オナガアゲハの8種が主に見られます。これらのアゲハチョウは年に2回成虫が出ます(年2化)が、春に出る小型なものを春型、夏に出る大型なものを夏型と呼びます。クサギやネムノキの花などによくきたり、水たまりではオスが吸水していることもあります。

  

大型で美しいしま模様のアサギマダラはヒラリヒラリとゆっくりと飛翔します。このチョウは数百kmも渡りをすることが知られており、隠岐島で見られるものも本土から海を越えてやってきているか、逆に隠岐島から本土へ渡っているかも知れません。アサギマダラを捕まえた時にはねの色の薄いところに油性マジックで場所と日付をつけて放蝶すれば、もしかすると本土のどこかで誰かが再び捕まえてアサギマダラがどこに移動するのかがわかるかもしれません。

 白いチョウを見かけたら、それはスジグロシロチョウかモンシロチョウでしょう。春先にはぎこちなく飛ぶツマキチョウが見られますが、数が多くありません。なおスジグロシロチョウに似ているエゾスジグロシロチョウが海岸近くにいるので注意が必要です。

  

 黄色いチョウはキチョウで、モンシロチョウは白いですが黄色がかっています。またキチョウに似た種類のツマグロキチョウが那久から見つかっていますので、気をつけて観察しましょう。

小さなかわいらしいチョウはシジミチョウのなかまで、ベニシジミ、ルリシジミ、ヤマトシジミなどが普通に観察ができます。産地が限られ非常に珍しいキリシマミドリシジは夏になると原生林の斜面をすごい速さで飛ぶのが見られます。

  

 木陰や草むらに多い黒っぽいチョウはジャノメチョウ、ヒメウラナミジャノミ、コジャノメなどです。

この他、セセリチョウでは山陰本土より白い紋が大きいダイミョウセセリやイチモンジセセリ、タテハチョウの仲間では本土よりもはねの白おびが太いイチモンジチョウや、春型と夏型ではねの模様が異なるサカハチチョウ、はねの紋がヒョウに似たミドリヒョウモン、ウラギンヒョウモンなどが見られます。

 


  

 夜に活動するのなかまは隠岐島から約540種も知られています。晩夏から秋に見られるオキナワルリチラシは南方系の美しい種です。この種は夜間ではなくチョウのように昼間に活動するので昼ガと呼ばれます。

 


 

 次にトンボのなかまですが、隠岐島では56種類のトンボが見つかっていますが、そのうち約30種ほどが自然回帰の森で見ることができます。

最も普通に見られるものはシオカラトンボ、アキアカネ、ウスバキトンボ、オオカワトンボなどです。大型のヤンマ類はオニヤンマ、ミルンヤンマ、ギンヤンマ、コシボソヤンマなどが見られます。

 

ヤンマとサナエの違いヤンマとサナエの違いの画像

ヤンマ:目がくっつく

サナエ:目がはなれる

 

 

 

 

 

 小型のサナエトンボではコオニヤンマの他に、ダビドサナエ、ヒメクロサナエ、オジロサナエなど比較的珍しいものが多いです。また、離島では珍しいムカシトンボも島後からは知られています。ムカシトンボのなかまは世界中でヒマラヤと日本にしか分布せず、幼虫は7年間かけて成虫となる非常に原始的なトンボと言われています。体はサナエトンボのような大きさで、はねはカワトンボのように前ばねと後ばねがほぼ同じ形をしています。

カワトンボのなかまはハグロトンボと、離島では島後のみしか記録のないオオカワトンボが見られます。

 


  

 夏に鳴くセミのなかまは7種が知られています。本土では高い山にしかいないエゾゼミが島後では標高300mから見られます。ただし木の高いところでジィーと鳴いているので姿を見ることは難しいです。他にはミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシなどがいます。

 


  

 セミと親戚のくさい臭いをだすカメムシのなかまは山地性のトホシカメムシやツノアオカメムシなどや、クサギカメムシ、チャバネアオカメムシなどがいます。

 

それから皆さんがよく知っているカブトムシやクワガタムシの仲間が含まれ、最も種類の多い甲虫のなかまについてお話しします。隠岐島から甲虫は700種ほど知られていますが、本当はその数倍の種類がいると思われます。

  

 そのなかでも最も調べられているのは長いヒゲ(触覚)をもったカミキリムシのなかまで、隠岐島全体では150種ものカミキリムシが見つかっています。そのうち約80種がこの森で確認されていることから、このまわりが昆虫の宝庫であることがわかります。

 カミキリムシの仲間は花や伐採木、枯木などに集まります。カエデやツシマナナカマドの花にはチャイロヒメハナカミキリ、セスジヒメハナカミキリなどのハナカミキリや、ヒメクロトラカミキリ、シロトラカミキリなどのトラカミキリのなかまがみられます。さらにウツギの花には、ヤツボシハナカミキリやニンフハナカミキリが集まってきます。特にヤツボシハナカミキリは北海道〜本州中部以北に見られる北方系の種で、隠岐以外の中国地方では別種のツマグロハナカミキリが知られています。夏のあつい頃に、新しい枯木や伐採木を見てみるとオオアオカミキリやルリボシカミキリが、やや古い伐採木にはウスバカミキリやニセノコギリカミキリ、が歩いていることがあります。また、春と秋には枯れ葉を食べに来るダイセンセダカコブヤハズカミキリが見られます。このカミキリムシは後ばねが退化したため飛べなくなった種で、背中が高くふくらみ、前ばねの先が矢のおしり(矢はず)のような形から名前がついています。

  

 それ以外の甲虫で隠岐固有の種や亜種もいつくか見ることができます。島後の固有種であるオキツヤヒサゴゴミムシダマシは春から秋にかけて倒木の上に見られるかも知れません。前種と同様に後ばねの退化したオサムシのなかまも見られます。それぞれ隠岐の固有亜種である小型のオキオサムシ、大型のオキヤコンオサムシ、カタツムリを食べるオキマイマイカブリ、および島後の固有種であるオキナガゴミムシなどを見ることができます。これらは主に夜行性なので日中はあまり見られませんが、昼間でも遊歩道を歩いていることがありますのでマムシと同様に足もとに注意してみましょう。また、春先には褐色のオキチャイロコガネが林の低いところを飛んでいたり、葉の上に止まっていたりするのが見られます。これは体長が約8mmと小さいですが島後の固有種として知られています。

  

 クワガタムシはミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、アカアシクワガタ、コクワガタなどや、カブトムシの仲間のコカブトムシが知られていますが、どの種も夜行性なので日中にはなかなか見られません。

  


  

 山で気をつけなくてはいけないのが毒針をもつハチのなかまで、キイロスズメバチ、オオスズメバチ、セグロアシナガバチ、キアシナガバチなどがいます。アリのなかまでは大型のニシムネアカオオアリやクロオオアリ、体にトゲのあるトゲアリなどがいます。ここにあげたなかまの他にも昆虫にはバッタ、ハエなどたくさんの種類がいます。

 


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