5.果実障害と対策
(1)樹上軟化
- 発生原因
樹上軟化する樹体の特徴は,樹勢が衰弱し,葉色が淡く,生育がやや不良である。また,園内の排水が悪く,地下水位が高い水田転換園などの例が多い。一般的な樹上軟化は,台風や落葉病などによって早期落葉が発生し,樹勢が衰弱した場合に助長される。さらに,風によって葉及び枝との擦れ,炭疸病,スリップス,ダニなどによる障害,過湿や日焼け果などのよる汚損果によっても助長される。気象条件と軟化の発生との関係をみると,生育前半の5月〜6月にかけて雨が少なく,土壌が乾燥した場合に発生が多くなる。さらに,9月の降水量が多い場合にも発生を助長する。
樹上軟化と系統との関わりをみると,早生系のものが普通系より多く発生する傾向がみられる。
一般的な原因をのべたが,樹体内栄養条件も大きく関与していることが推測される。すなはち,樹上軟化の発生樹と健全樹との無機成分含量を比較すると,発生樹においては,葉及び果実中のマンガン含量が健全樹に比べて少ない傾向が認められた。特に,果実中のマンガン含量が軟化発生と関わり合いがある可能性が示唆され,基本的には土壌の乾燥やアルカリ化が関係しているものと考えられる。また,根が長期間浸水した場合には,マンガン含量が多くても軟化が発生する。根が浸水すると導管内にエチレンの前駆体であるACC濃度が高くなる報告があり,軟化の引き金になることも考えられる。
- 対策
カキの軟化はジベレリンの葉面散布,果実への浸漬によって抑制されることが明らかになっているが,変形果の発生や着色を抑制するなどの問題がある。
その他の対策としては次のようなことが上げられる。
果面障害,病害虫被害対策,早期落葉防止
排水対策
樹勢の維持:弱勢樹は施肥量を多めにし,せん定の程度を強くする。
乾燥防止:灌水と樹幹周辺の除草の徹底
土壌酸度:アルカリ性であれば石灰質肥料の施用を控え,pH5.5〜6.5の範囲になるようにつとめる。
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