4.土壌管理技術
(2)施肥管理
一般に果樹栽培の施肥は元肥,追肥及び礼肥の3回行うが,かきでは礼肥の代わりに収穫1カ月前頃に秋肥を行うことが多い。また,果樹栽培において年間の無機成分吸収量が明らかになれば,それは施肥量を決定するうえで極めて参考となる。そのため,島根農試では連年3t/10a以上の収量をあげている10年生‘西条’の強制誘引開心形樹の年間無機分吸収量を調査した。その結果,10a当たりの無機成分吸収量はカリウムが15kgで最も多く,次いで窒素9.3kg,カルシウム7.1kg,マグネシウム1.9kgの順で,りん酸は1.6kgで最も少なかった。
器官別無機成分の吸収量は各要素とも葉や果実などの新生器官に多く,旧器官には少なかった。実際の施肥量は樹齢,土壌条件,樹勢などで調整するが,目標収量3トンとした成園時の施肥例を表3-8に示した。10a当たりの施肥量は窒素20kg,リン酸15kg,カリウム20kg,苦土12kg程度とする。施用時期は元肥が12月上旬〜2月上旬,追肥は6月上旬〜下旬,秋肥は9月上旬〜9月中旬とし,りん酸は元肥に全量施用し,苦土は元肥に年間施肥量の50%,追肥に残りの50%を施用する。窒素とカリウムは元肥に年間施肥量の40%,追肥に30%,礼肥に30%施用する。
秋肥時に2次伸長などの発生が甚だしい場合には,着色不良や成熟遅延を招きやすいので,施用量を少な目にする。また,近年,樹上軟化の多発による収量低下が問題となっているが,これには石灰質肥料の過剰施用による土壌のアルカリ化の関与が指摘されている。そのため,今回の施肥基準に石灰質肥料は示さなかったが,土壌診断を行い,pHが低い場合には石灰質肥料を施用する必要がある。
未成木園の1樹当たりの施肥例は表3-9に示したが,生育が悪い場合にはこれらとは別に1カ月に1回,速効性肥料を1樹当たり100g程度施用し,新梢伸長を促進させる必要がある。有機質肥料は年内の地温の高いうちにある程度分解させる必要があるので,遅くとも12月上旬までに施用を行い,施用量は10a当たり1.5〜2トン程度とする。また,地表面が踏み固められ堅くなると,新根の発生が妨げられるので,同時に中耕を行うと施用効果が高い。
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