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7.結実管理

 

毎年、安定して結実を良くするためには、ジベレリン処理適期、樹体条件、ハウス内環境条件(温度、湿度など)、気象条件が揃わなければならない。基本的には、気象条件以外の条件が揃うように栽培管理を確実に行う必要がある。

1)ジベレリン処理の留意事項
a.ジベレリン処理適期
ジベレリンの前期処理は、開花14〜10日前でジベレリン100ppmを花穂に浸漬処理を行い、開花10日後に再び処理を行う。
確実に無核果にするためには、前期処理の適期を十分把握しなければならない。ジベレリン前期処理は、開花の14〜10日前を予測して処理を行うため、展葉数や花穂の状態を良く観察して行わなければならない。一般的な処理適期は、展葉10〜12枚の時期で、花穂の先端部分の蕾が離れた状態であるが、作型、樹体条件により適期の状態がやや違うため不安定な要素が多かった。しかし、フルメット液剤が使用できるようになってからは、処理適期が拡大され結実も大幅に安定してきた。
ジベレリン後期処理のジベレリン処理は、果粒肥大を促進するために行う。処理適期は開花10日後であるが、適期に行わないと果粒肥大が劣り、果粉の着生が悪くなる。新梢の生育が不揃いになると、それだけ後期処理の適期も幅ができる。超早期加温栽培や早期加温栽培のような早い作型では、新梢の生育が不揃いになりやすいので、後期処理は数回に分けて行う。普通加温栽培以降の作型は、新梢の揃いが比較的良いので一斉に処理を行うことができるが、生育が遅い果房に後期処理日を合わせると全体の適期が遅れるため、適期の果房が最も多い時期に行う必要がある。
また、処理した果房のジベレリン溶液がいつまでも乾かない状態にあると、通称ジベ焼けと言われる果面障害が発生しやすくなる。それを防止するためには、処理日は晴天日を選び、十分換気した状態で行う。
近年は、ゴマシオ型着色障害はほとんど見られなくなったが、心配される園では硫酸マンガン(0.4%)を後期処理時に混用する。

b.新梢管理
結実を良くするためには、葉や花穂に光を十分に当て、強い新梢の伸びを一時的に押さえる必要がある。そのため、誘引を行う必要がある。誘引は、棚面を有効に利用して適度な明るさを保ち、強い新梢の勢力を抑えるのに有効な手段である。
誘引の効果を上げるために、誘引する角度の違いが新梢伸長に及ぼす影響を調査したのが図7-1である。誘引は、5〜6葉期に結果母枝の延長方向に対して、0度、90度及び180度に行った。その結果、開花期(処理後30日)では、角度の大きいほど新梢の伸びが抑えられた。特に、若木では、強勢な新梢になりやすく結実が不安定になるので、主枝、亜主枝等の重要な候補でない限り思い切って誘引する必要がある。
図7巨峰における新梢の誘因角度が新梢伸長に及ぼす影響

 

c.温湿度管理
ジベレリン前期処理から開花期までの温度、湿度の管理は、結実を良くするために非常に重要である。
ジベレリン前期処理から開花期までの昼温は、30℃の高温で管理すると新梢の生育が旺盛になり、結実や無核果形成に悪影響を及ぼすので25〜28℃を目標に温度管理をする。表7-1はジベレリン前期処理から開花期までの夜温が結実に及ぼす影響を見たものである。結実は15℃以下で優れるものの、10℃以下でないと無核果率が低下する。高温で管理すれば生育は進むが、開花期に新梢が伸びるようだと結実や無核果率が著しく低下し、商品価値のない果房になる。この時期の夜温は、結実率と無核果率を高めるために10〜13℃の低温で管理する。
ジベレリン前期処理の湿度管理は、処理したジベレリン溶液を十分に果粒内へ浸透させるために80%程度と高めにする。ジベレリン溶液の果粒内への浸透は、処理後8〜10時間が大切であるので、処理直前から湿度には注意する。加温栽培では、比較的湿度管理はしやすく、逆に湿度が高すぎて灰色カビ病の発生を助長することもあるが、準加温栽培や無加温栽培では、前期処理時期がフェーン現象で高温乾燥になる場合が多い。そのため、ジベレリンの吸収が劣り、無核果率が悪くなるので、処理時にはかん水を行い土壌水分を高めるとともに、ハウス内湿度を高くする必要がある。
表7夜温が結実に及ぼす影響

 

d.摘心
結実を確実にするための必須作業である。ジベレリン前期処理時期は、貯蔵養分から新生養分へ切り変わる養分転換期直後で、同化養分がまだ不足しがちのため、新梢が伸びすぎると先端へ養分が多くとられ、花房へ養分を吸引する力が弱まる。そのため摘心を行い、花房への養分転流を促す必要がある。図7-2は無加温ハウスの‘デラウェア’で11葉期に基部6、8、10葉を残して摘心した時の着粒数を調査したものである。6及び8葉を残す摘心は、無摘心に比べはるかに着粒数が多くなった。
超早期加温栽培及び早期加温栽培のジベレリン前期処理時期は、日照条件が悪く、特に同化養分が不足しがちなので、7〜8葉を残す強摘心を行う必要があり、伸びの弱い新梢でも摘心を行う方が結実は良くなる。また、若木や無加温栽培など樹勢が強く新梢の伸びが旺盛な場合は、処理時に摘心した後、開花までに副梢が伸びる。したがって、光合成の効率からも葉を1枚残して摘心しなければ結実が悪くなる。
図7摘心の強弱が着粒数に及ぼす影響



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