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6.新梢管理

2)新梢の生長予測と栽培管理

ブドウ栽培の目的は、毎年高品質の果実をできるだけ多く生産することである。そのためには、新梢の生育を予測し、芽かきや誘引、摘心によって生育を制御し高生産樹相に誘導することが大切である。

 

a.高生産樹相とは
個々の樹や園ごとの生育状況にはそれぞれ特徴がある。これを樹相という言葉で表す。たとえば、高品質な果実を毎年多収穫できる園の新梢の伸び方や葉の茂り程度、葉色などには、収量の低い園とは違い、次のような特徴がある。
発芽や展葉が早くて揃いが良く、新梢の生育は8枚展葉するころまでは旺盛で、節間が短い割には葉が大きく葉面積の拡大は早い。しかし、開花前には伸びがやや鈍り満開後1か月ころになると、ほとんどの新梢は1mくらいで伸長が自然に止まり、成熟期まで葉の緑が濃い状態である。ただし、いくら理想的な新梢でも数が少なければ収量を上げることは出来ない。10aあたりの新梢数は1,5000本程度は欲しい。
図6ー2は、施設栽培デラウェアの高生産園(2.0t以上)と低生産園(1.0t程度)における新梢長とLAIの季節変化を示したものである。いずれの生育時期とも、高生産園は低生産園より新梢長が短いにもかかわらず、LAIは高かった。高生産園は、早期に葉面積を確保するとともに、果粒軟果期以降における新梢の伸長量も少なかったことから、果実生産力の高い園であったことが伺える。

LAI


b.芽かき
図6ー3は、12年生の巨峰樹において芽かき程度と新梢の生長を示したものである。芽かきの目的は、新梢の伸び具合を調節して、結実しやすい樹相にするとともに、棚面の明るさを適正に保つために行う。好適な樹相の樹であれば、新梢をかぐことによって、花穂数を減らすことができるために、結果制限にもなる。貯蔵養分が豊富な樹において、適正な強さでせん定が行ってあれば、萌芽揃いや新梢の生育もよいはずであるが、必ずしも思い通りの生育を示さず、強く伸びたり、弱かったりする。また、萌芽率が低い場合には、新梢数が少なくなり、徒長的な遅伸び方の生育を示す。
したがって、芽かきを行う時には、萌芽率や萌芽揃い、その後の新梢の生育を観察しながら、その樹が今後どういう伸び方をするか的確につかむ事が大切である。その際における新梢観察のポイントは、新梢基部の太さ、葉色および絨毛に表れる赤紫色の濃ゆさ、葉の大きさ、真珠腺の密度、節間の伸び具合、さらに巻ひげの大きさ、新梢先端部の曲がり程度などである。新梢の伸び具合は、これらと密接な関係があり、生育を予測し芽かき程度を判断する目安になる。
芽かきの時期は、無核生産を目的にするデラウェアは、樹勢を強く保つようにするため早めに行うが、若木の場合には樹勢に合わせて行い,成木の場合には展葉3〜4枚頃に副芽をかきとり,その後,新梢の伸びを見ながら長さを揃えるように何回かに分けて行う.
新梢の成長

 

c.新梢の誘引
誘引はすべての葉を棚面にむらなく配置し、光を最大限に受けとめるようにするのが主な目的であるが、誘引の仕方によっては新梢の生長にも影響を及ぼす。図6ー4は、誘引角度と新梢の生長について示したものである。垂直方向に誘引した新梢が一番旺盛に伸びて、誘引角度が小さくなるにつれて伸びが弱くなり、30度を境にして、またよく伸びるような傾向を示している。
したがって、新梢の伸びをよくするには、出来るだけ垂直方向に誘引した方がよいと言える。棚面における新梢の誘引については、結果母枝の延長線上に向けるほどよく伸び、結果母枝に対して誘引角度を広くとるほど、新梢の伸びが抑えられることを経験している。大切なのはこの誘引の上手下手によって、果実品質や収量にまで大きく影響を及ぼすことである。
誘引と伸長

 写真に示すように樹冠拡大期の若木では、主枝や亜主枝の先端から出た新梢は、その延長線上に真っすぐに誘引し、その他の新梢は、結果母枝に対して直角になるように誘引する。樹勢の強い樹では冬季せん定の時に副梢を利用することを考えながら、新梢は樹冠の空いた所に伸ばしながら随時誘引する。
また、成木の場合には、長い新梢が20cm程度になった時に、棚面の混み具合を見ながら、棚面の明るさにむらがあれば結果母枝の誘引をし直す。誘引の時期は、開花期をはずしてその前後に行うが、開花前に一度十分な誘引をしておけば、開花後には少し手直しをすればよいような樹勢を作っておくことが大切である。開花前の誘引は、展葉10枚頃から行うが、あまり早く行うと新梢の基部が折れやすく、また、遅くなると巻きひげが絡み付き、誘引に何倍の手間がかかる。したがって、長い新梢からずいじ誘引を行うが、勢いの強い立った新梢をそのまま誘引しようとすると折れやすいので、基部をねん枝してから行う。そして、30cm以下の伸びの弱い短い新梢は、無理に誘引するよりそのままの状態でおけば、棚面を立体的に利用できる。


若木における新梢の誘因

 

d.摘心
摘心は、新梢の先端部を摘むことによって、花穂に向かう養分濃度を高めて結実を高めたり、一時的に新梢の伸びを抑えるために行う。
無核生産を目的にするデラウェアやマスカット・ベリーAなどの品種は、樹勢を強くした上で摘心を行うと、より結実が高まり、粒張りもよくなる。表6ー2は、デラウェアを用いて前期ジベレリン処理時期に摘心の程度を変えて、結実に及ぼす影響を示したものである。無摘心に比べて、摘心をした新梢はすべて結実が高まり、しかも摘心の程度が強くなるほど着粒数は多くなった。デラウェアの超早期加温栽培や早期加温栽培は、新梢の伸びを強くするようにせん定を行い、芽かきは伸びのよい新梢を揃えるようにして残す。このような作型では、摘心は必須作業であり、結実しにくい樹や作型ほど強く摘心する。
摘心の時期は、展葉10葉期頃から開花4〜5日前に行う。デラウェアでは、前期ジベレリン処理と同時に行う。この時期には、ある程度樹勢の強弱が判断できるので、樹勢の強さによって摘心の程度を変えるようにする。
樹勢の旺盛な樹では、新梢の先端部が鎌首状にわん曲し、この曲がり程度が強いほど新梢は旺盛に伸びる。このような樹は、花振るいしやすので、新梢先端部を2〜3葉摘心し、その上副梢も伸びているものがあれば先端部を軽く摘心する。また、生育中庸な樹では、強勢に伸びる新梢を中心にしながら新梢先端部を1〜2葉摘心する。なお、その際すでに伸びの停止している新梢は摘心をする必要はない。樹勢が弱く10葉期ころにほとんどすべての新梢の伸びが停止している樹では、新梢の伸びを強くすることを考えなければいけない。したがって、摘心を行ってはいけない。

着粒密度

 

e.夏季せん定
新梢は、冬季せん定や施肥管理を適正に行ったつもりでも、時として強く伸びることがよくある。新梢の勢力が強すぎる場合には摘心だけでは処置できず、夏季せん定が必要になる。開花後30日頃までに、すでに適正なLAI(葉面積指数)を確保した園は、それ以上LAIが高くなれば果実生産上かえってマイナスになる。そのため2.0m以上伸びている新梢は、成葉の位置まで切り戻して1.5〜2.0mにする。それでも棚面が適正な明るさにならない場合は、新梢を元から切り落とす。また、棚面が明るい場合でも、果粒軟化期以後も新梢が伸びていると果実への養分の分配が悪くなり果実品質が劣るようになるので、伸ばさないように摘心を行う。



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