ふくらすずめ
令和6年2月2日(金)曇り
暖冬です。1月下旬に降り積もった雪はだいぶん溶けました。センター本館からその様子を眺めていると、窓辺に何やら黒っぽいものがおります。
フクラスズメ。蛾の一種です。
成虫は夏・秋の年2回発生し、秋に発生したものは、成虫で冬を越します。
越冬する場所として人間が作った建築物が選ばれることがあり、ときに家屋の一角に複数個体が集まっている姿が見られます。
冬季、スズメ(雀)が、寒さに耐えるために羽毛を立てて空気の層をつくり、丸くふくらんだ姿を「ふくらすずめ」と呼びます。
この蛾の姿がそれを想起させることから この名がつけられたそうです。
なるほど、この蛾のぽってりした胴体とそれを覆う毛の様子は「ふくらすずめ」。
「ふくらすずめ」の丸くふくらんだ姿は、豊かさを連想させるのか「福来雀」「福良雀」などの字をあてて、日本では縁起物とした細工品などが
作られています。
さて、この蛾の幼虫はカラムシという草本植物を食べて育ちます。体長7cmくらいまでに大きく成長する幼虫は、体のそこかしこにオレンジ色を配置した
毒々しいカラーリングと グロテスクな容姿をしていて、ちょっと触る気になりません。勇気を出して?触ろうとしようものなら、頭部を持ち上げ激しく震わせて
威嚇をします。
口から緑色の液体を吐き散らすという パフォーマンスもあり(食べた葉っぱと思われます)、こちらを強く拒絶する、強い意志を感じます。
秋口に、この幼虫がカラムシに集団で発生していることがしばしばあり、毒々しい幼虫が一斉に首を振って威嚇する様子は、
なかなかにインパクトがあります(今回、幼虫の姿を 紹介できず残念です。インターネット等で検索ください)。
カラムシは1m以上に育つ多年生の草本植物です。今でこそ厄介な雑草としてしか認識されていませんが、古来、国内では茎から繊維をとって布を織るなど、
大切な有用植物として利用されてきました。日本書紀には栽培を奨励する記述もあるそうです。
一種類の蛾を紹介しましたが、鳥のスズメ、植物のカラムシ、人間の生活など、つくづく生き物は色々なつながりがあるものなのだと思い至ります。
窓辺に佇むフクラスズメ。
翅をたたんで止まる様子。翅を広げた大きさは7〜8cm。日本国内の他、大陸沿海州から
東南アジアまで広く分布。幼虫はカラムシの他、イラクサ科の植物を食べます。
後翅には美しい水色の斑紋があります。
体は、もこもこした長毛に覆われ愛らしい。
***農林技術部福井***
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