• 背景色 
  • 文字サイズ 

夏はヘイケボタル

平成29年7月13日(木)天気晴れ

 

 

 夏は夜。月のころはさらなり。やみもなお、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど

ほのかにうち光り行くもをかし。雨など降るもをかし。

 

 5月10日、当コラムで資源環境科の田植えを紹介しました水田の稲は、すっかり株間が見えなく

なるまでに成長しています。

 

写真1「お手植えの稲」の成長ぶり。

 

 

 この水田界隈では今時期の夜間、数多くはありませんが、ヘイケボタルが見られます。遅い日没

後、辺りが闇に包まれると稲葉の陰に小さくぽっと点った光がふわりと宙に浮き上がります。

 

 

写真2日中、草陰で休むヘイケボタル。

 

 本種は、主に生活の場としている水田に、農薬が多用されたことによって激減しました。流水に

生息するゲンジボタルよりも、この影響は大きく、姿を消した生息地も多いようです。しかし、

近年の減・無農薬による稲作の広がりによって少しずつ増えてきている地域もあるようです(耕

作放棄水田の増加も一因?)。

 

 ゲンジ・ヘイケ、両ホタルの幼虫が水中で生活するということは、あまねく知られているようです。

このため蛍というと水の生きものというイメージが強いのですが、50種余りいる日本産ホタルに

あって、水棲の種は国内に広く分布するゲンジ・ヘイケボタルの他、沖縄諸島のクメジマボタルの

3種と少数派。他の種は陸棲種で、幼虫は下草や落葉のある地表を徘徊して、カタツムリなどの陸性

貝類や小動物を捕食しています(半水棲種も1種あり)。詳細は不明ですが、世界2000種余りの

ホタルも水棲種は少数派と思われます。

 珍しい生活をする水棲二種が同時に見られるのは「水の国」日本の中山間地域ならではでしょう。

 

写真3ヘイケボタル(右下)とゲンジボタル(左上)。

大きさと背面赤色部の黒色紋の違いも区別点。

 

 千年ほど前、清少納言が趣ある夏のイチオシ情景として、かの書の冒頭部分に記述したのは、

ゲンジ、ヘイケどちらの種だったでしょうか。

 

写真4

腹端の淡黄色部が発光。国内に棲息する陸上の発光生物としてはゲンジボタルの光は最強。

趣あるホタルの光の舞は、画像などではなくて実際にご覧になることをお勧めいたします。

 

 

***森林保護育成福井***

 

 

前回のコラム

 


お問い合わせ先

中山間地域研究センター

島根県中山間地域研究センター
〒690-3405 島根県飯石郡飯南町上来島1207
TEL:0854-76-2025 FAX:0854-76-3758
Mail:chusankan@pref.shimane.lg.jp