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クスサン三寸の虫には多数の智恵

平成27年6月23日(火)天気曇りのアイコン画像

 

 

 クリの木に緑色の毛虫がいっぱい付いて葉っぱを食べて、丸坊主になってしまったんですが、、、

(当科では樹木類の病害虫相談を承っております)。

 

 クリの木、緑色の大きな毛虫というとあれかな?、、、と思いながら、被害現場を見に行くと、まさしくそれ。

クスサンという蛾の幼虫です。

 8cmほどの毛虫が、彼方此方の枝先にぶら下がり、豪快に葉っぱを食べていらっしゃいます。

こんなサイズの幼虫が多数発生したら、幾日も経ずに葉っぱは食べつくされてしまうでしょう。

 

写真1

クスサンによって、ほとんどの葉が食べられてしまったクリの木。

 

 クリに良く発生するので「栗毛虫」と呼ばれているほか、幼虫の体の上面に生える白色の長毛から、

シラガタロウ(白髪太郎)、シラガタユウ(白髪太夫)などのニックネームがあるなど、地域によっては

色々な呼称があります。全国の昆虫方言を集めた昆虫方言名辞典には20以上もの呼称が採録されており、

かつてはなじみの昆虫だったのでしょう。

 

写真2

体長8cmにもなる終例幼虫は、ずしりとした質感。体側面に並んだブルーの小斑紋もチャーミング。

白髪毛は無毒。

 

 ちょうど今時期は蛹になる頃。枝先には葉っぱを数枚綴った中に繭が造られた様子もちらほら見られます。

繭といっても蚕のように、みっしりと糸で綴ったものでなく、透け透けの網籠の中に蛹があるという形態。

このため、スカシダワラ(透かし俵)、との呼称があります。

 

写真3

枝先の葉を2、3枚つづった中に繭(スカシダワラ)があり、その中に蛹が入っている。

 

 繭として幼虫が紡ぐ糸はテグス(天蚕糸)と称せられ、その昔、釣り糸やら縫合糸等にまで使用される

ことがあったそうで、本種をはじめとするヤママユ蛾の仲間は、テグスサンと呼ばれていたようです。

 本種から造るテグスの製法は、繭を処理して糸をほぐすのではなく、繭を作り出す前の幼虫を捕まえ、

頭を引き千切り、糸を出す絹糸腺という器官を出して、びゅーんと引っ張ると細く引き延ばされて糸になる。と

昭和一桁生まれの縁者から聞き及びました。このとき、良質な糸に仕上げるために、酢に漬ける等の処理を行う

と強度を増加できるなどなど、色々なノウハウがあるようで、一つの虫にも古の智恵が色々詰まっているようです。

 

 成虫は晩夏〜秋に発生して、夜間、明かりに集まる姿に出会えます。広げた羽は10cmを優に超える美丈夫。

何かの拍子に家の中に入って、一差し舞われると、繊細な神経をお持ちの方のアドレナリンを一気に上昇させます。

 

 

***森林保護育成福井***

 

 

 

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