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キイロスズメバチ駆除の後:蜂の子

令和4年9月20日(火)曇り

 

 

 先のコラムで紹介した、駆除したキイロスズメバチですが、巣中の幼虫・蛹は、美味しくいただくこととなりました。

ここ、飯南町では、わりと抵抗なく蜂の子を食される年配の方が少なくありません。

 

 島根県にスズメバチと名の付くハチは複数おり、オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、キイロスズメバチ(ケブカスズメバチ)、

モンスズメバチ、チャイロスズメバチ、クロスズメバチ、シダクロスズメバチ。これらはいずれも食されます。県内はもちろん、全国でも蜂の子を

食する文化は広く記録されており、上記のスズメバチの他、アシナガバチ類やニホンミツバチも食べられています。

 県西部の中山間地域で幼少期を過ごした後輩の一人から、アシナガバチの巣を取って幼虫を食べた経験を聞いたことがあります。今から40年くらい

前の様子になりますが、生でたべたそれはクリーミーで甘みのある、なかなかおいしいものだったとのこと。

 

 私のハチ採りの師匠である、県有林にお勤めの林さんを始め、蜂の子を食される方々は一様に「たぶみ」が一番おいしいと評されます。

 味において一段上に置かれる「たぶみ」と称されるのはクロスズメバチ、シダクロスズメバチで、分類学上ではスズメバチ属とは別の、クロスズメバチ属

というグループです。スズメバチ属よりずっと小型で15mm程度。黒色を基調とした体に、淡い黄色のラインが細く幾筋か引かれたハチで、土中に営巣します。

 

 長野県や、岐阜県では、食用としてクロスズメバチの巣を見つけるため、ハチに目印をつけて追跡して巣の場所を見つける「へぼ追い」「スガレ追い」と

呼ばれる方法が今でも行われています。

 「黒い雨」「山椒魚」などの作品で知られる井伏鱒二は、釣り好きの作家として知られていますが、魚以外の生物についての随筆も多く残しています。

作者がつづる文章は、生き物へ向ける優しさが伺い知れ、読んでいて気分が穏やかになります。作品の一つ「スガレ追い」は、かなりのページを割いており、

なかなかの関心事であったようです。

 

 『虫をつかまえて食べる。』というと、現代の日本では奇異の目を向けられますが、比較的近年まで行われていましたし、長い人類史上では日常のことであったと

思われます。

 世界から主食、山海の珍味まで輸入して食せる、今日の日本の状況には、有難いと思う一方で、これで良いのか、このような状況がいつまで続くのかと思うことが

あります。自ら動いた苦楽の後に得た食べ物を味わいながら、自然の恵みに感謝する中山間地域の文化と生活の有りようは、この先も変わらず続いて欲しいと願います。

 

写真画像1

上段左よりオオスズメバチ、コガタスズメバチ、キイロスズメバチ

下段左よりモンスズメバチ、シダクロスズメバチ女王と働きバチ

 

写真画像2

 

蜂の子調理例。砂糖・しょうゆ、みりん使用の和風テイスト。

幼虫と蛹を、巣板から一つ一つ取り出して調理。手間がかかります。

 

 

農林技術福井

 

 

 

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