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夏は来ぬシロスジカミキリ

令和4年6月20日(月)曇り

 

 

「あ、シロスジカミキリ」

 

「こんなのがいました」と総務課の比下さんから差し出された容器の中にいたのは、日本最大種のカミキリムシ、シロスジカミキリ。

 

 口には頑丈な牙(大顎:おおあご)があり、これにかみつかれると相当痛いです。背中には不連続の白い筋があり、名前の由来になっています。

 材から脱出した新鮮な成虫は、この「シロスジ」は鮮やかな黄色を帯びていて、「黄筋カミキリ」状態です。

 名前を漢字で充てるとすると、白筋髪切、白筋紙切、白筋天牛など色々な記述候補があります。平安時代の和名抄には「加美木里無之」、「囓切虫」とあるそうで、

後者は、かじって切り裂く虫という、生態が良く表された表現と思います。

 日本に800種あまりいるカミキリムシの仲間は、長い触角(ヒゲ)を持つ種類が多く、美麗種も多いことから昆虫愛好者の中でも人気の高いグループです。

 

写真画像1

(写真)シロスジカミキリ。国内では、北海道と沖縄を除く全国に分布し、大きな個体は体長5cmを超える国内最大のカミキリムシ。

写真は小ぶりのオス個体ですが、長い触角を動かすので占有空間が広く、個体の大きさ以上の存在感を与えます。

 

 

 幼虫は主にシイ・カシ類、コナラ、クヌギ、クリといったブナ科やヤナギ類の、生きた樹木の幹内(材部)を3年くらいかけて食べて育ち、夏に成虫が出てきます。

 ブナ科の樹木は、中山間地域の里山での主要な構成樹です。多数生息しているはずですが、成虫は夜行性であるために、日中、人の目に触れることは余りないと思われます。

 光に集まる習性があるため夜間、家に灯された明かりに誘引された個体に出会う機会があり、今回も明かりに来た個体が見つけられたのでしょう。

 

 

 暖房や調理の熱源を、生活地域周辺の森林から採取していた時代には、薪や炭を作る際の薪割り作業中に、材から出てくるので、なじみのある昆虫であったと思われます。

 さて、その薪割りの際に材から出てきた幼虫は「ごちそう」となりました。なかなかに美味しいのです。昨今、「昆虫食」が注目されておりますが、人間はこれまでに様々な昆虫を食用にしてきました。日本でも様々な昆虫が食べられてきており、わけてもカミキリムシの幼虫は非常に美味しいという評価をされています。

 昆虫生態学の泰斗、ファーブルも昆虫記の中でカミキリムシ幼虫の味について、虫好きでない人にも食べてもらって、非常に美味しいと評されたことが記されています(当然、当人は絶賛)。

 

写真画像2

(写真)昆虫食に関する書籍類。近年はレシピ本も出版されており、敷居が低くなってきたと感じています。

 

 

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