ボタン栽培におけるイチゴセンチュウ対策
農業技術センターでは、ボタンの芽や葉に被害を与え、苗木生産量を減少させるイチゴセンチュウの防除体系づくりに向け、「ほ場へ持込まない、増やさない、持出さない」を目標に、取り組んでいます。
ボタン栽培におけるイチゴセンチュウ被害は昭和40年代前半まで遡り、米国での輸出した苗木の受取り拒否から始まります。現在では、48℃の温湯で1時間処理することで輸出苗木での問題はなくなりました。
しかし、生産ほ場では芽を壊死させたり(写真1)、葉の内部へ潜り込んで(写真2)落葉させるなど、生産量の減少につながっています。
写真1正常芽(左)と被害芽(右)
写真2被害葉(丸印内)
本年度は、脱脂綿を利用した簡易なトラップを設置(写真3)し、どの時期に捕まえられるかを調査しました。
※イチゴセンチュウは、生活サイクルのほか、いつ、どのようようにしてボタンに寄生するのかなど不明な点が多く、防除が難しい害虫です。
写真3上:脱脂綿トラップ設置状況
下:ビニルで覆った雨よけ区
脱脂綿トラップでの調査結果は、春季(萌芽から展葉期)及び秋季(結実期)の降雨後にイチゴセンチュウが捕まりましたが、雨よけ区からは全く捕まりませんでした。このことから、寄生拡大には降雨が大きく影響していると考えられました。
一方で、夏季高温期には捕獲されず、高温・乾燥下では活動が鈍ることも分かりました。
以上から、農薬による防除は、冷涼多湿な時期の降雨直後で苗木が濡れた状態(多くのセンチュウ類は水の中を泳いで分散することから)での散布が効果的と考えられます。
今後は、降雨後の農薬散布を徹底し、その効果を検証するとともに、輸出時の温湯処理を栽培面にも応用して、防除の体系化を目指します。
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