平成18年度 水稲新奨励品種「きぬむすめ」の普及展示ほ成績概要
技術普及部 農産技術普及グループ 高橋 眞二
本県の水稲生産において、「コシヒカリ」の作付が80%以上を占めており、規模拡大、低コスト化および高品質・多収生産などの妨げとなっています。また、平坦部を中心に、気象温暖化による品質低下も顕著となっています。さらに、「祭り晴」は、品質が不安定で、食味特性がやや劣りました。
このような情勢のもと、当センター栽培研究部および中山間センター農林技術部による奨励品種決定調査結果や、県の米プロジェクトにおける実績をふまえ、「きぬむすめ」が平成17年より水稲奨励品種に採用されました。そこで、「きぬむすめ」の普及および早期定着化を図るために、平成17年度より農林振興センター農業普及部および技術普及部の農産関係担当者による農業普及員調査研究活動として、普及実証を行っており、本年度の成績を紹介します。
1.移植栽培
○ 調査概要
実施地区:県内9か所(表1)
播種時期:4月2日〜5月3日
標高 :県央は250m、他地区は30m以下
成熟期 :9月20日〜10月4日
○ 調査結果
主要な成績は、表1に示しました。移植期は5月1日〜6月3日で、出穂期は8月11日〜8月22日となりました。総施肥窒素量は4.3〜8.5kg/10aで、最も多かった8.5kg施用では稈長が最も長くなりました。
倒伏の発生は全般に少なかったですが、稈長が比較的長く、また穂数が多かった県央ではなびき程度の倒伏が認められ、風の影響が大であった隠岐では倒伏が少程度発生しました。
収量は全般的に良好で、最多収は浜田の691kg/10aでした。品質は良好でしたが、一部に薄茶米、青未熟、心白、胴割の発生がありました。千粒重は21.0〜24.2gで、重いものは登熟がすぐれ、良質となりやすい場合が多くありました。
2.直播栽培
○ 調査概要
実施地区:出雲、益田
播種時期:5月18日、5月12日
○ 調査結果
「きぬむすめ」は、発芽特性が優れ、出芽揃いが早く、苗立ち率も80%以上と良好でした。出芽後の分げつ発生が早く、穂数確保も容易で、収量性および品質はほぼ良好な結果となりました。ただし、益田では台風により倒伏が発生し、播種量、施肥量等の再検討が必要でした。
3.結果の考察と今後に向けて
移植時期は5月中旬の場合、品質および収量ともに良好な結果となりました。ただし、山間部の場合はやや早植の5月上旬が適するものと思われます。収量の面で、つなぎ肥や穂肥を施用し、幼穂形成期から出穂期にかけての葉色を維持した場合に多収となる事例が多く認められました。粒大が大きくなると、品質が向上するものと考えられ、高品質確保には、登熟向上を図る肥培管理や水管理の徹底が必要と考えられました。なお、施肥窒素の適量は、合計で6〜8kg/10aですが、倒伏させないために、地力や生育状況により加減する必要があります。「きぬむすめ」は出芽が良く短稈で直播栽培に適すものと思われます。
最後に、平成19年度の栽培面積は約2,000haとなる見込みです。高品質な米が生産されるよう、地域に適した作期、施肥法、栽培法を、調査研究活動をとおして、さらに検討していきたいと思います。
[島根県農業技術センターだより第6号 2007年3月]
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