1-MCP処理によるあんぽ柿の脱渋阻害
加工研究部 加工グループ 松本 敏一
1-MCP(1-methylcyclopropene)は、果実の日持ち性が向上する薬剤として農薬登録申請中で、本県でも渋柿‘西条’での使用が検討されています。しかし、1-MCP処理した果実では香りが弱くなる等の悪影響も報告されています。
そこで、1-MCP処理した西条柿を用いてあんぽ柿を製造し、その問題点について検討しました。
○結果の概要
1-MCP処理した材料柿では、あんぽ柿製造過程で渋味物質である可溶性ポリフェノール含量の減少速度が遅くなることが分かりました(図1)。あんぽ柿完成時でも、渋を感じる目安である100 mg/100gを上回っていました。さらに、乾燥中のカビ発生と加工品の変色を防ぐ目的で行う硫黄燻蒸処理をすると、渋みをさらに強く感じる結果となりました。
また、1-MCP処理によってあんぽ柿内部の軟化が阻害され(図2)、食感にも悪影響が出ました。この原因は、生食用柿とは異なるあんぽ柿の脱渋機構に起因していると考えられます。
また、1-MCP処理によるあんぽ柿の脱渋阻害程度には大きな品種間差が認められました(表1)。
○今後に向けて
1-MCP処理した材料柿を用いてあんぽ柿を製造すると、品種によっては脱渋阻害や食感の悪化等の問題が発生することがあることが明らかとなりました。本県で多く栽培されている‘西条’ではそれらの問題が確認されたため、あんぽ柿や干し柿の材料への1-MCP処理はしない方が良いと判断されます。
なお、生食用柿では1-MCP処理しても脱渋阻害や渋戻り等の問題は発生しないことが確認されました。したがって、農薬登録予定の来年度には、ドライアイス脱渋柿について1-MCPを使用されても問題はありません。
[島根県農業技術センターだより第5号 2006年11月]
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