脱気・密封保存中における切り花ボタンの呼吸とエチレン発生量
栽培研究部 花きグループ 小早川 洋美
当センターでは切り花ボタンをポリエチレン(PE)製の袋に入れ、脱気・密封することで開花を調整し、保存日数を延長する新たな鮮度保持技術を開発しました。しかし、保存中の植物体の生理的変化や内容成分の変化等については明らかにされていません。そこで、脱気・密封保存中の呼吸および切り花ボタンの老化に関与していると思われる、エチレンの発生量について検討しました。
○試験概要
露地圃場で栽培した破らい直前のボタン‘連鶴’を用いました。
【試験1】保存中のCO2、O2濃度の変化
ガス透過性の低いポリ塩化ビニリデン(PVDC)製の袋を用い脱気・密封した後、2℃暗黒下で保存し、1、7、13日経過後に袋内の気体を採取し、ガスクロマトグラフを用いて測定しました。
【試験2】脱気の有無によるエチレン発生量の違い
PE袋で密封し、脱気区と無脱気区を設け、保存1、13日後に気体を採取しエチレン濃度を測定しました。
○結果の概要
【試験1】袋内のCO2濃度は保存期間に比例しましたが、O2濃度はその逆となりました(図2)。このことから、脱気・密
封し、2℃で保存した切り花ボタンは呼吸を行っていることが明らかとなりました。
【試験2】袋内のエチレン濃度をみると、保存1日後では処理による差がなく、13日後は無脱気区で高くなりました(図3)。また、無脱気区では保存日数の経過に伴い袋内で花弁の展開が進みました。自然条件下の切り花ボタンのエチレン発生量は開花に伴い増加します。このことから、脱気・密封することにより、花弁の展開を抑え、エチレンの生成を抑制させたのではないかと考えられます。
○今後に向けて
今後は、ボタンの貯蔵に適した気体組成を明らかにし、より長期間の保存を可能にしたいと考えています。また、脱気・密封保存の他の花きへの適応性についても検討する予定です。
[島根県農業技術センターだより第5号 2006年11月]
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