大豆生育期における広葉雑草対象除草剤の除草効果
技術普及部農産技術普及グループ狩野直
県内の大豆栽培は、米の生産調整の主力作物として、斐川町を中心とした平坦部の認定農業者や各地域の集落営農組織で、団地化による取り組みが行われています。
近年、培土作業の省力化や出芽の安定を目指して、密条播無培土栽培が各地域で試みられています。しかし、条間が狭く培土を行わないことから、初期除草が不十分であったり、大豆の出芽が不良な場合や生育が遅れ気味になると雑草の発生が問題となり、手取り除草に大きな時間をかける結果となっています。当センターの経営事例調査においても、圃場内の雑草処理に労働時間の約50%を占めている例もあり(同じ経営体の培土を実施する慣行栽培に比べ3倍以上の時間)、省力化や経営安定に結びつかない状況となっています。
この傾向は全国共通であり、大豆主産地の県からは大豆の生育期に使用できる広葉雑草対象除草剤の開発が強く要望されていました。国でもメーカー等関係団体と共同して対応が検討され、今年4月、新規にベンタゾン液剤(商品名:大豆バサグラン液剤)が登録されたところです。
しかし、この剤は大豆自体に薬害が出る場合があり、また、大豆の品種によってその程度に差があるため、使用に当たっては十分な注意が必要となります。
そこで今年度、本薬剤の現地圃場での除草効果確認と、薬害の発生状況を見極めるため、県内5カ所の実証圃を活用して調査を実施しました。ここでは、木次管内で実施した結果について紹介します。
○調査圃場の耕種概要
実施場所:飯石郡飯南町
圃場面積:18a
品種名:サチユタカ
播種日:6月2日
播種方法:不耕起播種機使用
播種量:8kg/10a
出芽状況:良好
○薬剤処理と処理時の雑草の発生状況
播種後26日目の6月28日に10a当たり大豆バサグラン液剤110mlを100Lの水に希釈し、動噴で散布しました。調査は処理後7日目と15日目に実施し、除草効果と薬害の有無を確認しました。処理時の大豆の生育と主な雑草の発生状況は表1に示すとおりで、圃場中央部は大豆が見えないくらいに雑草が覆っていました(図1)。なお、イネ科雑草もかなり多かったため、イネ科対象除草剤も同日に散布しました。また、処理後の気象状況は翌日に9mm、3日後に53mmの降雨がありましたが、除草効果には大きな影響が無かったと考えられます。
図1薬剤散布時の雑草状況(図は略AcrobatDataを参照)
○大豆バサグラン液剤の除草効果
・処理後7日
イヌタデ、草丈の小さなものが枯れ始め、アカザは、やはり草丈の小さなものがしおれ始めました。また、ツユクサでは葉縁が巻き始めました。大豆への薬害は、葉縁の色抜けや斑点状の色抜けが極わずかに認められましたが、探さないと分からない程度でした。
・処理後15日(図2)
イヌタデは、極大きいものを除き枯死しました。アカザは10cm以上のものは生き残りましたが生育は停滞しました。ツユクサと、エノキグサでは除草効果が認められませんでした。薬害は、ほとんど分からない状態でした(表1)。
表1大豆バサグラン液剤の除草効果と薬害の発生状況(表は略AcrobatDataを参照)
図2薬剤散布後15日の状況(図は略AcrobatDataを参照)
図3薬剤散布後30日の状況(図は略AcrobatDataを参照)
○結果の考察と今後に向けて
・収穫時に汚損粒の原因となる大型雑草の内、タデについては除草効果が高く、アメリカセンダングサも別の調査圃場で一定の効果が得られました。しかし、アカザ、ツユクサ、エノキグサには効果が劣り、これらの優先圃場では播種時除草の徹底と、大豆の初期生育を良くすることが必要です。
・効果の高かった草種についても、大型になると効果が落ちるので、やや早めの処理が必要です。少なくとも草丈が大豆と同程度の時期で、大豆が本葉2葉以上になった時期に散布するのが良いと考えられます。
・他地区の調査結果等も考慮すると、10a当たりの薬剤処理量は上限の150mlが望ましいと考えられました。
・イネ科雑草が多いところでは、同日処理で大きな問題が無かったことから、イネ科対象除草剤との体系的な使用が可能です。
・サチユタカでは生育が不良の場合、薬害に対する注意が必要です。
以上、この除草剤の使用によって、タデ等の雑草を手取り除草する手間が軽減され、省力化と品質向上が期待されます。
[島根県農業技術センターだより第2号2005年11月]
お問い合わせ先
農業技術センター
島根県農業技術センター 〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380 nougi@pref.shimane.lg.jp <携帯・スマートフォンのアドレスをご利用の方> 迷惑メール対策等でドメイン指定受信等を設定されている場合に、返信メールが正しく届かない場合があります。 以下のドメインを受信できるように設定をお願いします。 @pref.shimane.lg.jp