防除薬剤の育苗箱施用によるイネ紋枯病の防除
環境部病虫グループ磯田淳
水稲の育苗箱施用は省力的で高い防除効果があるため、本田初期の病害虫防除に広く使用されています。紋枯病の育苗箱施用剤は1998年に初めて農薬登録されました。現在では3剤が登録になり、県内では作付け面積の約15%で使用されています。
農薬の登録には全国の公的機関での薬効・薬害試験が必要で、紋枯病の育苗箱施用剤についても当センターで効果試験を実施しています。ここでは、紋枯病の育苗箱施用剤の効果を的確に評価するために使用している人工培養菌核の接種方法と薬剤の効果試験について紹介します。
○紋枯病人工培養菌核の接種
紋枯病の菌核は、前年の発病茎率が10%であれば10a当たり7〜10万個あると報告されていますが、薬剤効果試験において紋枯病がほぼ均一に発生する人工培養菌核(図1)の接種量については不明でした。
そこで、その接種量を求めるため人工培養菌核の接種量を10a当たり10万個、30万個、50万個、100万個の区を設け、紋枯病の発生推移を調査しました。その結果、30万個で60%以上の発病株率となり、これ以上を接種すれば良いと考えられました(図2)。
図1シャーレ内で形成された人工培養菌核(図は略AcrobatDataを参照)
図2人工培養菌核数と発病株率との関係(収穫時調査)(図は略AcrobatDataを参照)
○育苗箱施用剤の効果
つぎに人工培養菌核を10a当たり30万個接種して育苗箱施用剤の効果を調査しました。試験にはリンバー剤(プリンスリンバー箱粒剤、50g/育苗箱、移植時)とグレータム剤(ウィンアドマイヤーグレータム箱粒剤、50g/育苗箱、移植時)の2剤を用いました。その結果、2薬剤とも防除効果は高く、本田での追加散布の必要はありませんでした(図3)。
図3育苗箱施用剤による紋枯病防除効果(図は略AcrobatDataを参照)
このように紋枯病は育苗箱施用剤により省力的に防除ができます。しかし、紋枯病は菌核によって越冬しますので、前年の発生状況によって初期の発生が異なります。このため前年の発生状況をよく確認して過剰防除とならないようにすることが大切です。
[島根県農業技術センターだより第2号2005年11月]
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