イチゴ病害虫の総合防除=天敵を利用した防除事例=
技術普及部農業環境グループ板垣紀夫
イチゴのアブラムシ、ハダニ類を天敵を用いて防除する個々の技術はほぼ確立され、アブラムシでは寄生株率5%以下で10月下旬までの天敵放飼、ハダニでは寄生株率3%程度で天敵放飼することで、実害を出さない防除が出来ることが明らかにされています。そこで、高設栽培イチゴにおいて天敵を導入した病害虫の総合防除体系の実証試験を行いましたので紹介します。
○アフィパール(コレマンアブラバチ剤)を用いたアブラムシ防除
アブラムシの寄生株率約20%で、花梗にアブラムシが寄生する多発条件下での放飼(10月15日)となりました。放飼10日後にはマミー(寄生蛹)が出現し始め、約1か月後にはアブラムシ寄生株のほとんどでマミーが確認され、アブラムシの増殖を抑えました。その後、オンシツコナジラミ防除に用いた化学農薬の散布による影響で、発生は低く抑えられました(図2)。
図1アブラムシとマミー(寄生蛹(図は略AcrobatDataを参照)
○スパイデックス(チリカブリダニ剤)を用いたハダニ防除
ハダニの寄生株率2.3%の少発生条件下の放飼(10月15日)で、放飼10日後にはハダニは捕食され、春までハダニの寄生は見られず、極めて有効でした。
図2アブラムシ・コナジラミの発生消長(図は略AcrobatDataを参照)
○その他病害虫の発生状況と防除対策
ハスモンヨトウは9〜11月に散発的に発生しました。産卵はハウスサイドの巻き上げビニールなどに行われ、ふ化幼虫がハウス内に侵入してイチゴに寄生します(図3)。卵塊・幼虫の捕殺と天敵に影響が少ないIGR剤散布で防除が可能でした。
オンシツコナジラミはハウスへの侵入防止と初期防除に失敗し多発生しました。化学農薬、微生物農薬による防除を行いましたが、発生を抑制することは出来ませんでした。
うどんこ病は薬剤散布に発病葉の切除と強めの下葉かきを併せることにより発病を抑制しました。
炭疽病は章姫で多発生し、11月下旬には約30%の株が萎凋枯死しました。苗の保菌が主原因ですが、9月上旬の台風によるビニール破損が二次感染を助長したと考えられます。萎凋株を除去し付近の健全株のランナーを補植したところ、再発病は比較的少なく、花梗も着生していることから、収量を補完する手法として有効と思われます(表1)。
図3ビニール上に生み付けられたハスモンヨトウの卵(図は略AcrobatDataを参照)
表1炭疽病発病跡地での補植株の再発病数(表は略AcrobatDataを参照)
○天敵を導入した防除体系の留意点
1)天敵導入に当たっては、事前に天敵に配慮した各病害虫の防除対策を準備しておくことが大切です。
2)天敵を持続的に利用するためには害虫と天敵密度のバランスが大切であり、経済的許容水準を意識した防除が肝要です。
3)オンシツコナジラミについては、付近の寄主作物や雑草から成虫が侵入するので、地域として対策を構築する必要があります。
[島根県農業技術センターだより創刊号2005年7月]
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