赤色光の付加照射によるイネいもち病(苗いもち)の防除
最近、植物に赤色光を照射すると病害に対して抵抗性が誘導されることが島根大学の研究により明らかにされました。その研究の中でイネにおいても赤色光照射下で病害抵抗性が誘導され、このイネの葉にいもち病菌を接種しても抵抗性品種と同様の反応を起こすことが報告されています。そこで実際の栽培場面において赤色光を付加照射することによりいもち病が防除できるかどうかを島根大学と共同で検討しました。
図1苗いもち(図は略AcrobatDataを参照)
いもち病は種子伝染性の病害で、いもち病菌を保菌した種籾が最初の主要な伝染源になり、育苗箱や本田で発生します。このことから種籾消毒や苗の防除で本田での発生量を抑制したり発生時期を遅らすことが可能です。また、イネに赤色光を照射する場合、本田での照射は極めて困難ですので、環境制御の比較的容易な育苗段階での苗いもちを対象に調査しました。なお、いもち病はイネの部位や生育ステージなどにより様々な名称があり、苗いもちは苗の葉鞘などにいもち病が発生する場合の呼称です(図1)。
図2試験期間中連続付加照射の試験状況(上:昼間下:夜間)(図は略AcrobatDataを参照)
試験には赤色蛍光灯による付加照射区、白色蛍光灯による付加照射区、無処理区(自然光のみ)を設け、試験期間中連続して照射しました(図2)。いもち病に自然感染したコシヒカリの種籾を用いて、播種量及び光源から播種面までの距離による苗いもちの発病の違いを播種後14日に調査しました。その結果、赤色光の付加照射区では苗いもちの発生を抑制し、播種量は育苗箱1箱当たりに換算して75gが150gに比べて効果が高く、光源から播種面の距離は30cmが60cmに比べて高い効果がありました(図3、図4)。
図3播種量と苗いもちの発生(光源からの距離30cm)(図は略AcrobatDataを参照)
図4光源からの距離と苗いもちの発病(播種量150g/育苗箱)(図は略AcrobatDataを参照)
赤色光を照射することによって苗いもちの発生が抑制され、苗に赤色光が当たりやすい条件ほど効果が高いことが分かりました。今回の試験では、苗いもちの発生を促すために試験区全体を黒寒冷紗で覆ったこともあり、赤色光を付加照射した苗は徒長しました。今後この技術を実用化していくためには、発熱量の少ないLED(発光ダイオード)の利用や抵抗性誘導に必要な照射期間、抵抗性の持続期間等についても検討が必要と考えています。
環境部病虫グループ磯田淳
[島根県農業試験場だより第107号2004年11月]
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