環境にやさしい島根型イチゴ養液栽培システム
イチゴの高設栽培は、腰への負担が軽いなど作業の軽労化とともに、連作障害を防止し生産が安定化することから注目されています。しかし、排液中に含まれる肥料成分による環境汚染や、ロックウール栽培では使用済み培地の処理が問題となっています。
そこで、肥料の利用効率を高めることにより排液中の肥料成分を削減でき、使用後の処理が容易な有機質培地を使用するなど環境にやさしい島根型イチゴ養液栽培システムを開発し、産地への普及を図っています。
システムの概要
栽培ベッドは排水溝を内蔵した発砲スチロール製です。培地はピートモス、ヤシガラ、活性炭などを混合した通気・排水性の良い有機質培地で、充填量は株当たり約3Lです。培養液供給方式は掛け流し式ですが、水拡散シートと点滴チューブを組み合わせることにより培地内へ養液が均一に拡散するため、肥料の利用効率が高く、排液中の肥料濃度を低くできます。給液量は、排液率が20%前後になるよう、天候や生育に応じて調整します。
給液装置は2液混合式で、4系統を個別に給液管理することができ、最大28aの栽培面積にまで対応可能です。
本システムの10a当たり導入価格は、培地加温設備を含めて約480万円(施工費別)です。
図1栽培ベッドの構造(図は略AcrobatDataを参照)
イチゴの収量、品質
「とよのか」の促成栽培では、収穫期間が7月上旬まで約1か月延長されたことなどにより、10a当たり収量は約6tで、土耕慣行栽培(炭酸ガス無施用)より約5割増収しました。また、糖度や硬度などの果実品質もやや優りました。
排液中肥料成分の削減効果
排液中の硝酸態窒素濃度は平均8ppmで、栽培期間の約6割で環境基準10ppmを下回り、従来の掛け流しシステム(30〜80ppm)に比べ、硝酸態窒素の排出が大幅に減少しました(図2)。
図2排液中の硝酸態窒素濃度(2002)(図は略AcrobatDataを参照)
培地の連用
掛け流しシステムで問題となる培地中へのMgやCaなど肥料成分の蓄積がなく、分解による培地の減少分を補充すれば、5年以上の連用が可能と考えられます(表1)。
表1栽培前後の培地中肥料成分の変化(2001)(表は略AcrobatDataを参照)
園芸部野菜花きグループ高野浩
[島根県農業試験場だより第107号2004年11月]
お問い合わせ先
農業技術センター
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