島根型養液栽培システムによるトマト栽培
島根型養液栽培システムでは、培地にヤシガラを主体とした有機質資材を用いており、使用後のリサイクルが可能で環境に優しい素材となっています。給液装置は4系統あり、系統別に給液時間、濃度が設定できるため、異なる品目を同時に栽培することも可能です。
システムの開発に当たって、本県の主要品目であるメロン、イチゴについて検討してきました。さらに、収益性の向上を図るため、メロンとの輪作体系が可能であるトマトについて試験を行いました。
土耕栽培との比較
‘ハウス桃太郎’を用いて、半促成作型で、土耕栽培と比較した結果、養液栽培では、根圏環境が均一で、養分を適正に供給できることから、生育期間を通じて草勢が強く安定しました。このため、中高段(4〜9段)での養液栽培の上物収量は、土耕栽培に比べて約1.3倍多くなりました(図1)(図は省略)。低段(1〜3段)では、乱形果、窓明き果などの障害果が、養液栽培で多く発生しました。これは、培地内温度の設定が高かったためと考えられ、今後検討する必要があります。
給液管理
養液栽培において、最適な根圏環境を維持し、生育を安定させるためには、培地の特性に適応した給液管理を行う必要があります。培養液に大塚A処方を用い、‘ハウス桃太郎’を供試して、給液濃度について検討した結果、給液EC濃度(dS/m)は比較的低濃度の1.0がよく、1.5まで高めると草勢は強くなりますが、増収効果は認められませんでした(図2)(図は省略)。給液量の調整は排液率15〜20%を目標に、給液回数と1回当たりの給液時間で行いました。高温期には生育が早いため、給液量が不足しないよう注意します。
作付け体系
メロン・トマトの輪作体系としては、半促成メロンと抑制トマトとの組み合わせが、栽培が容易で粗収益も350万円/10a確保でき、最も有望と考えられます。このほか、より収益性の高いトマトの年2作体系、さらに省力化を目的としたトマト年1作の長期どり栽培についても検討する予定です。
園芸部野菜花き科石津文人
[島根県農業試験場だより第104号2003年11月]
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