カキ‘西条’の発芽不良の発生原因について
早生系‘西条’カキでは、新梢の発生が少なくなる発芽不良症状が多発しています。発生樹では症状が年々ひどくなり、最終的には太枝や樹全体が枯死する場合もあるため早急な原因究明と対策が求められています。
そこで、発芽不良樹の芽を1か月毎に顕微鏡で観察し、その発生原因について検討しました。その結果、発芽不良には腋芽の内部や木部に黒変箇所が多数観察されました。この黒変はタンニンであることが分かり、タンニンが維管束(水分や養分を通す管)に沈着することで芽への養分供給が阻害されることが発芽不良を引き起こすと推察されました。採取芽の形態的な異常は年間を通じて、発芽不良程度にかかわらず実体顕微鏡下では観察されませんでした。しかし、発芽不良程度が強くなるにしたがって含まれるタンニン量の増加が認められ、特に7月及び3月の芽で顕著でした。このことから、発芽不良樹の芽内におけるタンニン生合成量には2つのピークがあると考えられます。また、11月採取芽における組織切片の生物顕微鏡観察では、重度の発芽不良樹において芽の基部の細胞内に多量のタンニンの集積が確認されました。
通導組織をタンニンが詰まらせる原因として,樹体内の糖含量の低下が考えられます。したがって、着果過多にすると貯蔵養分として枝に蓄えられるはずの糖分が果実に行くため枝内の糖含量が低下します。このことから、着果過多が発芽不良の主要因の一つと推察されます。したがって、適正着果量を維持することが発芽不良の予防法と考えられます。
今後は発芽不良の発生機構を明らかにし、発芽不良の有効な防止対策を確立したいと考えています。
園芸部果樹科松本敏一
[島根県農業試験場だより第101号2002年11月]
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