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気象災害対策(落葉果樹)

凍霜害

事前の対策

(1)凍霜害の防止にあたっては、発生しやすい場所への栽植や霜に弱い種類・品種の導入を避けることが大切である。
(2)防除、施肥、勢定や枝管理、着果管理、葉の保護などを徹底して耐凍性の高い充実した樹づくりにつとめる。
(3)霜害発生危険地に植えられている場合には、防霜林、防霜堤を設けて冷気の侵入を防いだり、土手の改造や森林の伐採などによって冷気が停滞しないようにする。
(4)凍霜害の緊急対策としては、気象予報に注意して次のような措置を行なう。
○被覆法:こもなどを棚上の枝梢に覆って樹体からの輻射放熱を遮るとともに、霜が直接樹体に着かないようにする。この方法では設置や除去に手間取り、新梢を損傷することもあるので、ハウスとして簡易な加温が出来るようにしておくと被害を防ぎやすい。
○散水法:水は氷になるとき1gにつき約80calの潜熱を出すことを利用したもので、樹体の表面に氷と水が共存する場合は0℃近くに保たれるので、霜害危険温度以下にある間は絶えずスプリンクラー(専用ヘッド使用)などによって散水を続ける。散水量は1時間当たり4〜5mm以上とし、霜害危険温度よりやや高い気温の時から早目に散水を始める。散水は日の出後1時間以上続け、氷が解け姶めるころやめる。この方法では水利(水源)とともに、過湿による根群への悪影響にも注意し排水につとめる(8時間散水した場合の散水量は、10a当たり30~40t程度になる)。
○送風法:霜が降るような気象状態の場合には、平坦地における放射冷却による空気の逆転層ができ上空が暖かいので、人工的に地表近くの冷たい空気と混ぜて樹体近くの気温を上げて霜害を防ぐ方法である。この方法ではフアン設置の費用が高くつくとともに、大きな気温の逆転層がないと効果が少ないことを考慮する。近年では、露地の果樹園で使用できる屋外仕様の温風送風機も発売されている。

霜害後の措置

(1)被害は生育の段階によって異なり、早い時期では主芽が枯死するが、少し遅い時期になると新梢基部に近い葉を残して先の柔らかい部分が枯死する。
(2)被害を受けた場合、副芽は陰芽の伸長を図って樹勢の維持につとめる。
(3)被害の甚だしい場合には枝の枯れ込みもあるので発芽を見てから思い切った切り戻しを行って樹勢の回復を図る。
(4)被害が軽い場合、なし、りんごなど霜害無被害花に人工受粉を行って結実の確保を図る。また、副芽に着果したものでもある程度残して収穫する。
(5)着果量が少ない場合、以後の施肥量を減じ、病害虫防除などの管理を十分に行って樹勢の回復につとめる。

雪害

降雪前の対策

(1)吹き溜りや多雪地の開園を避ける。
(2)混み合った園では、間・縮伐を済ませておく。
(3)粗剪定して樹冠への積雪を軽減する。
(4)支柱を立て、幹の倒伏や枝の裂開を防ぐ。とくに、幼木では支柱をしっかりして結束する。
(5)棚は、中支柱の数を増し、周囲柱、棚線、控え線も点検して補強しておく。
(6)積雪の多い地域では棚や主枝の分岐高を高くする。また、主枝には分岐角度の広い枝を用いる。
(7)豊富な地下水があるところでは融雪に利用することも一方法である。
(8)圃場周囲の排水溝を整備しておく。

積雪中の対策

(1)枝梢や棚上の積雪は払い落とし着雪荷重を軽減する。
(2)沈降圧による被害は被害が発生するまでに時間的余裕があるので、踏圧によって積雪を少なくして沈下による被害を少なくする。さらに、降雪が続く時は除雪して樹冠を掘り出す。
(3)棚、棚線、支柱など雪中に埋まった部分は掘り出し、表層のしまった雪の部分の負担が棚や枝にかからないように雪溝を作っておく。
(4)根もとの雪踏みまたは除雪を行い、殺鼠剤や忌避剤を利用して鼠の食害を防ぐ。

融雪対策

(1)消雪が遅れると、初期生育や発芽前の管理作業などに支障をきたすので、雪の表面に太陽熱を吸収しやすいものを撒いて消雪を促進する。撒くものとしては、黒土、焼き籾穀、砂、草木灰、カーボン粉など入手しやすいものを用い、10a当たり20〜25kg散布する。
(2)地下水の豊富なところでは散水による消雪が効果的である。しまり雪1m2を溶かすには、水温16℃の水が25リットル必要だと言われ、2mの積雪があって10aの雪を1回で溶かすには50t必要であるが、棚仕立てでは棚面まで溶かせばよいので12t位で足りる。立木仕立ての果樹では樹冠周辺を重点的に溶かす。

被害後の対策

(1)樹の裂開、折損の程度に応じて、被害の甚だしいところは切り去って、傷面を平らに削り直し癒合促進剤などを塗布しておく。
(2)被害の軽いもので復元できるものでは、裂開部に癒合促進剤を塗り、縄などで風などによって動かぬように縛り、患部をビニールで覆って乾燥と雨水の侵入を防ぐ。また、完全な癒合まで支柱などで補強しておく。
(3)被害樹は、病害防除などの肥培管理を徹底して樹勢の回復を図る。過湿害の対策は水害の項に準じて対処する。

風害

事前の対策

(1)風害の防止対策としては、まず、風速を弱める防風施設(防風林、防風垣など)を設置する。防風は生育はもとより、結実もよくなって生産が安定する。
(2)速効的には防風ネットを設置する。ネットの減風効果は認められるものの、ネット強度は年々低下するので更新が必要となる。永久的には防風林を設置するのがよいが、樹高が高く成りすぎ隣接する場所が日照不良となったりするので、刈り込み等の管理は必要である。
(3)防風施設は、園地の地形や風向を検討してから効果的に設置する。本県における強風は殆どが西から北の間に集中している。
(4)台風はその中心が園地のどちら側を通るかによって風向が変わる。さらに進路の東側が西側半分より風南が強いことから、西〜北の方向を進むものを警戒したい。
(5)防風樹選定の注意点としては、根が深く分布し、倒伏しにくいこと、樹の生長が旺盛で、枝梢が強く折損または裂開しにくいこと、枝梢の再生が旺盛で密生すること、干害などに強いこと、病害虫の寄生が果樹と共通しないことなどを考慮して選択する。
(6)防風林の設置に当たっての注意点としては、地形と季節による風向や風速を考慮して効果的に設置する。防風林の密閉程度は70%前後、最低50%を確保する。果樹園を造成する場合、幅4〜5mの余裕を取って防風林帯をつくることが望ましい。
(7)防風樹の栽植間隔は樹種により若干異なるが、おおむね60〜100cmとし、3〜5列植付ける。樹勢や樹形に応じて適当な刈り込みなどを行って果樹への影響を少なくしながら防風効果を発揮するようにする。
(8)防風施設による減風効果は、密閉度にもよるが防風施設の高さの10倍程度で、地形にもよるが垣の後方で高さの10倍、前方では3倍の距離までそれぞれ70%程度の減風効果がある。ネットによる防風垣は防風林が役立つまでの応急的な対策としても利用できる。ネットの目は細かいほど防風効果は高いが防風施設そのものの被害を受ける率も高くなるので、支柱等をより強固にする必要がある。2〜4mmのものを使用する。
(9)ビニールハウスは最も確実な防風施設であるが、ビニールの破損やハウスの倒壊等の危険性がないではない。また、ネットハウスも減風効果は高く、ビニールハウスに近い生産安定が期待できる。
(10)樹高は低く仕立て、栽植密度を高くする。

台風などの直前対策

(1)台風などの発生時期に先駆けて棚や防風施設の修理・補強をしておく。
(2)幼木は倒れ易いのでしっかりした支柱を立てて誘引、結束しておく。また、収穫できる果実は採取しておく。
(3)排水路は点検整備しておく。

風害後の対策

(1)倒伏した樹は立て直し、土寄せ鎮圧して支柱を立てる。また、根の力に見合った葉面積にまで勇除する。
(2)折れた枝は切除し、切り口に癒合促進剤を塗って保護する。
(3)落葉が甚だしい場合には幹や太枝が日焼けしないように白塗剤を塗る。
(4)被災樹に対しては、速やかに薬剤防除を行うなど肥培管理を徹底する。
(5)落下した果実は傷害を受けており、腐敗の発生や日持ち性の低下で商品とならないものは加工に利用するか土中に埋没処理する。

水害

事前の対策

(1)予め明渠および暗渠を設置して速やかに排水できるようにしておく。
(2)集水路、排水路を整備しておく。
(3)地下水位の高いところでは客土や盛り土をして植付ける。また、湛水しやすい地帯や地下水位の高いところでは地域全体の排水対策を行っておく。
(4)耐水性の強い樹種や台木を用いる。
(5)傾斜園では傾斜に沿って侵触防止の草生や横溝の設置を行う。

被害後の対策

(1)湛水した場合には、表面水は速やかに園外へ排除する。
(2)傾斜地の園では土壌管理に注意しながら排水につとめるとともに、土砂が流入した場合は取り除く。
(3)風水害を受けた樹は、結果量や施肥量に注意するとともに、防除などの管理を徹底して被害の回復に努ある。

干害

事前の対策

(1)土壌の深耕、有機物の施用につとめ、根群分布範囲を広く深くして、土中の広い範囲から水分を吸収できるようにして乾燥の影響を軽減する。
(2)有機物の施用を多く行って腐植の増加を図ることによって、保水性を高める。
(3)草刈り、敷草(敷ワラ)を励行することによって、土壌水分の蒸散を少なくするとともに、土中の腐植含量を増加する。
(4)耐干性の強い台木を利用する。
(5)施肥管理、特に窒素肥料の施用には注意して軟弱徒長的な生育をさせないようにする。
(6)晴天、乾燥が続く時には適宜灌水する。

灌水の実施

(1)土壌乾燥の兆候が樹体に見られたら速やかに灌水を行う。灌水量は、土壌条件、乾燥の程度、気象条件、果樹の生育時期などによって異なる。
(2)生育に好適な土壌湿度は土壌容水量の60%で、PF値2.7(水分当量)〜PF3.0(正常生育阻害水分)を維持すると生育を旺盛にさせる。この好適土壌湿度は枝梢の栄養生長期と果実の発育期で異なり、新梢の生長期にはやや控えめとして徒長的な生長を抑えるが、果実発育期には土壌水分が大きく変動しないように適宜灌水する。
(3)灌水開始時期は、干害の初期兆候である果実の肥大停止を見つけるか、土壌含水量や葉の水ポテンシャルなどを測定して決める。
(4)葉からの蒸散量は、発芽後生育の進行とともに、気温の上昇とも相まって増加し、吸水量も多くなるが、灌水の最も必要な時期は梅雨明けからで、この時期は地表面からの蒸発散が最も多く、枝葉も繁茂して葉からの蒸散量も増すため果樹の吸水量が最も多くなる。そこで、樹種や土質にもよるが晴天の続く場合には5〜10日おきくらいに灌水する。
(5)一回の灌水量は土壌水分が圃場容水量(PF1.7、降雨後重力水の除かれた状態)から正常な生育が阻害される時点(PF3.0)までの消費水量(易効性有効水分)を補給する(下記計算式)が、土壌条件、気象条件、生育時期によって異なるが、20〜30mm程度灌水し、状況をみて加減する。
1回の灌水量(mm)={(圃場容水量一0.6圃場容水量)×土壌容積比重×根深(mm)}/100
降雨があった場合、雨量5mm以上でその80%を有効雨量とし、乾き過ぎないうちに砂質地では5〜7日おき、壌土では7〜10日おきに灌水する。
(6)灌水方法については、水量が豊富な時は全面(根の分布範囲)にスプリンクラー等で灌水し、水量の少ない場合は樹冠下に灌水孔を作り部分灌水するか、有孔ホースによるドリップ灌水やマイクロスプリンクラーなどを用いて灌水を行う。
(7)ハウス栽培では、降雨が遮断されていることに加えて室内が高温乾燥になりやすいので露地栽培よりも乾燥の害が出やすい。そこで灌水施設を整備して定期的に灌水を実施する。

雹害

事前の対策

過去に雹害が発生している地帯では防鳥、防虫など多目的な利用も兼ねた防雹ネット(ポリエチレン制ラッセルネット(6〜9mm、白色)等)の施設を整備する。

被害後の対策

(1)開花期や摘果前の降雹で果実の生育が小さい(生育初期)場合には被害程度を見ながらゆっくり行う。摘果程度は被害状況や樹勢によるが、まず回復の見込みのないものを適除し、以後2〜3回に分けて樹勢や果実の傷の回復状況を見ながら行う。
(2)被災後の管理の善し悪しは花芽の着生に影響するので、病害虫の防除を励行するなど葉の保護につとめる。
(3)折れた新梢は健全な部分まで切りもどす。さらに、徒長枝が多発する場合には新梢の誘引や芽かきを行い、新梢の早期充実化や樹勢の回復をはかる。

潮風害

事前対策

(1)防風施設を整備する。
防風垣などで葉、枝梢、果実の風傷を防止し、塩分の葉、果実等への侵入軽減をはかる。幼木では応急的に寒冷紗や網をかけて結束して枝葉の傷を少なくして被害の軽減をはかる。
(2)防風施設は風害の項と同様であるが、防風樹にはマキ、クロマツ、マサキ、サンゴジュ、ウバメガシなど耐塩性の強い樹種を用いる。
(3)台風シーズンの前に防風施設を点検整備し、いつでも散水できるよに水源を確保しておくとともに停電に備えて発電機等も用意しておく。

事後対策

(1)速やかに清水を散布して塩分を洗い流す。
潮風がふいた場合にはできるだけ早く水で塩分を洗い流す。潮風を受けてから水洗までの時間はカンキツでは5〜6時間以内に実施すればよいが、かきなどでは5時問を経過すると効果がないので速やかに行なう。散水にあたっては10a当たり2〜3t程度を消防ホースなど水圧のあるもので大量に散水してよく洗い流す。散水後は樹をふるって水滴を落としてやるとよい。
(2)落葉に伴う対策は風害後の対策と同様であるが、被害樹の樹勢衰弱程度は被災時期によって異なる。早い場合には日焼け防止のため石灰乳等を塗布し、薬剤防除などの管理を徹底して樹勢の回復につとめる。秋遅くなってからの被害は樹体への影響は少ないものの、剪定の強度はは枯れ込みの程度に応じてやや強めとする。また、施肥は根の活力が低下していると推定されるので、多量の化学肥料の施用は避け、窒素成分の一部を有機質肥料に替えて肥効を穏やかにする。

地震

事後対策

(1)生育が最も盛んな時期で細根の断裂が予想される場合は、かん水や葉面散布行って樹勢の低下を防ぐ。休眠期や生育末期の場合は翌年の新梢の成長を観察しながら追肥等で対応する。
(2)アンカーの浮き上がりや棚線の緩みは早急に修復する。
(3)落下した果実の処理や倒木後の対策等は強風等の事後対策に準じる。
(4)かん水施設や暖房施設の配管の断裂等により水漏れ、油漏れ等が予想される場合は元栓を閉め点検をする。


お問い合わせ先

農業技術センター

島根県農業技術センター
〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380
 nougi@pref.shimane.lg.jp
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