気象災害対策(施設切花)
風害対策
事前対策
(1)施設栽培では被覆材を点検し破損箇所は補修する。また、両妻面の補強、抑えひものしめ直し、アンカーの点検などを行う。
(2)被害後の修繕を行うために補修材料の準備や施設周辺の木片等飛散する物を片付けておくことも必要である。
(3)強風の吹き込みを防ぐため入り口、サイド等の開閉口の密閉を行う。また、換気が必要な場合は換気扇を運転状態にするか、強風が直接植物体に当たらないように風下側を開口するなど換気方法を工夫する。
(4)支柱、フラワーネット、誘引資材等の補強を行う。
(5)収穫期で被害が予測される場合は事前に切花する。
(6)季節風、乾熱風害などの対策では、圃場の周囲、あるいは恒常的風上側に防風ネット、防風垣を設置する。
応急対策
(1)暴風にハウスが耐えられないと判断される場合は、ビニール等を剥いでハウスの倒壊を防ぐことも考慮する。
(2)花きが倒伏した場合は、株の曲がりを防ぐため、速やかに株を起すとともに、支柱の立て直し、フラワーネット張りや誘引をやり直す。
(3)潮風害により植物体に塩分が付着した場合は速やかに清水で塩分を洗い流す。
事後対策
(1)被害を受けた花きでは、茎葉等の整理を行い、薬剤散布により病害の発生を防止する。また、草勢が弱い場合には液肥等、適切な肥培管理を行い回復を図る。
(2)生育初期の段階にあり、補植、改植が可能な場合は予備苗を植える。また、キク等の花きで側枝の仕立て直しが可能な場合は摘心、整枝により、新しい側枝を仕立てる。
水害対策
事前対策
(1)圃場は冠水、浸水の心配のない場所を選定する。また、低地の場合は客土等の対策を講じる。
(2)施設周辺に明きょ(排水溝)を設置するとともに定期的に溝を点検し堆積土を除去するなど排水対策を行う。
応急対策
(1)地表水を速やかに排除するため、流入部に土のう等でせき止めを行うとともに、ポンプ等により強制排水を行う。
(2)花きが冠水した場合は、早急に清水で洗い、病害予防に殺菌剤を散布する。
(3)キクの根の活力はたん水状態では生長期ではたん水3日処理で64.7%に低下し、開花期ではたん水0〜6日処理ではほとんど差がなく、9日処理で60.0%に低下した。この結果から生長期(9月)はたん水期間3日、開花期(11月)はたん水期間9日が株の回復可能限界と考えられるため、速やかに排水作業を実施する。
事後対策
(1)大雨後の強日射等により株が萎れる場合は、寒冷紗等を用いて遮光して株の萎れを防ぐ。
(2)草勢回復のため、液肥を2〜3回葉面散布し草勢の回復を図る。
(3)一方、曇雨天が続く場合は日照不足も加わって茎葉は徒長し軟弱になる。湿度も高く病害が発生しやすい環境のため殺菌剤による予防に努める。
(4)畦内が過湿状態の場合、畦の乾燥を促すためマルチをめくり、表土が乾きしだい断根しないように気を付けながら浅く中耕する。キクでは土寄せすることも有効である。
(5)水分を多量に含んで土壌が緩むと草丈の高いものは倒伏し易いので、支柱をしっかり立てなおす。その際、床を踏み固めないよう注意する。
雨・湿害対策
事前対策
(1)圃場は排水が良好で地下水位の低い圃場を選定する。また、客土等の圃場改良も有効である。
(2)施設周辺に明きょ(排水溝)を設置するとともに定期的に溝を点検し堆積土を除去するなど排水対策を行う。また、暗きょの設置は排水不良や地下水位が高い圃場での対策として有効である。
応急対策
(1)灌水、窒素施肥は控えめとし、茎葉の軟弱徒長を防ぐ。
(2)換気を十分に行って、施設内の通風を良くし湿度を下げる。
(3)病害防除は定期的に薬剤散布を行うとともに病株、病葉の除去を行う。また施設内湿度を下げる等の病害発生が起こりにくい環境を整える。
事後対策
(1)長雨後の強日射等により株が萎れる場合は、寒冷紗等を用いて遮光して株の萎れを防ぐ。
(2)草勢回復のため、液肥を2〜3回葉面散布するとともに殺菌剤の定期散布により病害防除に努める。
(3)畦内が過湿状態の場合、畦の乾燥を促すため施設の換気を図るとともにマルチはめくり、表土が乾きしだい断根しないように気を付けながら浅く中耕する。キクでは土寄せすることも有効である。
(4)水分を多量に含んで土壌が緩むと草丈の高いものは倒伏し易いので、支柱をしっかり立てなおす。その際、床を踏み固めないよう注意する。
低温害(低温障害)
事前対策
(1)栽培する花きの生育適温管理に努めるとともに、最低生育温度以下に遭遇しないようにする。
(2)このため、施設栽培では施設の保温を行うとともに、内張り等の被覆資材、加温施設を整備し低温に備える。
(3)また、低温期の栽培に当たっては、耐寒性が強く、低温栽培可能な品目、品種の選定を考慮するとともに、バラなど同一施設内で数品種を栽培する場合は温度要求度の近い品種を作付する。
対策
(1)キクは「秀芳の力」(花芽分化適温16〜17℃)のように花芽分化に高温を必要とする品種は消灯2週間前から消灯後3週間を16〜17℃、その後10℃、破蕾期後は13℃前後を目安に管理する。「神馬」は新品種のため技術確立されてない部分もあるが定植から消灯まで15℃、消灯から発蕾まで17℃、発蕾期以降15℃での管理がされている。また、「金丸富士」(花芽分化適温10〜12℃)「伊吹金峰」のように低温開花性の品種は消灯1週間前から消灯後3週問を10〜12℃、その後8〜10℃を目安とする。
(2)また、キクでは「秀芳の力」のように挿し穂や発根苗に低温処理(1〜3℃)を施すことで花芽分化可能温度域を2℃程度下げることが可能となり、開花率が向上する。しかし、品種によっては、開花率に影響が少ない品種や遅延する品種もある。
(3)バラは品種によって生育適温や最低生育温度が異なるので、栽培品種に合わせた温度設定を行う。また、冬期一時休眠作型では加温により耐寒性が弱くなっているので徐々に温度を下げ、急激な加温停止、ビニール除去は避ける。
(4)トルコギキョウは夜温15℃が適温のため、その温度を保つように保温、加温する。特に花芽分化から出蕾までは16〜18℃に管理し、その後、15℃で管理する。冬季無加温栽培の場合、0℃程度の低温に会っても生育障害はほとんど見られないが、ロゼット状となると生育が遅れるので二重カーテン、トンネル等により保温に努める。ロゼット株は低温だけでなく、短日、弱光など影響するので作型に応じた適切な管理が必要である。
(5)ユリの生育適温はテッポウユリが18〜20℃、スカシユリは夜温13〜17℃、昼温18〜23℃、カノコユリ(含オリエンタル系)は20〜25℃程度であり、適温に対し±5℃程度以内で管理する。特に花芽分化から蕾の大きさが1〜5cmになる時期までの温度管理は重要であり、この時期低温に会わせないように夜温はスカシユリが10℃以上、テッポウユリが13℃以上、カノコユリ(含オリエンタル系)が15℃以上が保てるようにする。生育中に低温が予想される作型では、加温機の導入や二重カーテン、トンネル等を準備し加温、保温に努める。また、昼夜の温度較差は10℃以内とし、急激な変温を避け、日中は25℃以下で管理する。その他、日照不足や水分不足などにも留意する。
(6)ストックの生育適夜温は10〜15℃であり、発蕾後、花穂伸長期の夜温は5〜8℃で花穂のしまった切り花が得られる。
そのため夜温が8℃以下に下がるようになれば保温を始める。低温期の作型では二重カーテン等を設置し、夜温5℃程度が保てるよう保温に努める。一方、日中は換気を図り、かん水は控え目として茎葉が徒長軟弱とならないよう配慮する。また、ホウ素欠が発生し易いが、低温を伴うとその障害が著しい。
(7)キンギョソウはニ重カーテン等を設置し、夜温5℃程度が保てるよう保温に努める。また、日中は換気を図り、かん水は控え目として茎葉が軟弱徒長とならないよう配慮する。
低温害(凍霜害)
事前対策
(1)低温期の栽培に当たっては、耐寒性が強く、低温栽培可能な品目、品種を選定する。
(2)栽培する花きの生育適温管理に努める。また、茎葉が軟弱であると障害を受け易いため適切な肥培管理を行う。
(3)施設栽培では施設の保温を行うとともに、内張り等の被覆資材、加温施設を整備し低温に備える。
(4)越冬栽培では、地温が確保できるよう早めに植え付け十分な根張りを確保する。また、無加温の場合、株元にわら、モミガラ等でマルチを行い地温を維持することも有効である。
事後対策
(1)強い寒波や加温機等の故障により凍霜害を受けた場合は、施設内の湿度を保ちながら徐々に霜を解かすことを心掛ける。特にストーブ等で急激に温度を上げ解凍しないようにし、朝日の当たる面には寒冷紗等の日除けを行う。
高温害対策
事前対策
(1)栽培する花きの生育適温管理に努めるとともに、生育適温以上の高温に極力遭遇しないよう努める。
(2)このため、施設栽培では施設の換気を十分に行う。特に、側窓の開口部を広くとるとともに、換気効果の高い天窓、妻窓等を設ける他、換気扇等による強制換気を検討する。
(3)夏季の栽培に当たっては、耐暑性があり、高温栽培に適した品目、品種を選定することが重要である。
(4)育苗施設の中には、クーラーを利用した冷房施設やミスト機を利用した細霧冷房施設などもあり、トルコギキョウ等の育苗で利用されている。
対策
(1)強日射を遮り、施設内温度や葉温他植物体温度を下げるために、カンレイシャ等による遮光を行う。この場合、遮光による光合成量を勘案し、遮光率、時間帯を検討する。バラでは30〜35%程度の遮光率の資材が用いられている。この他、遮光率が低くても降温効果の高い新資材が開発されている。
(2)高温により蒸散が激しいため、早朝または夕方に灌水を行い適正な土壌水分を維持する。
(3)キクの花色の退色は夜温を低下させることによりある程度は回復可能であり、夜間の換気等により降温に努める。
(4)病害虫の多発が懸念されるため定期防除等適切な防除を行う。また、高温は薬害が発生しやすくなるため、日中の薬散を避け、早朝または夕方に行う。
(5)高温期の収穫は適切な切り前を心掛け、収穫遅れにならないよう注意する。開花が進む場合には、早朝、夕方の2回収穫する。
(6)高温期の鮮度保持については、早朝または夕方の気温の低い時間帯に収穫するとともに清水での水揚げを行う。
また、カーネション、バラ、トルコギキョウ他花き品目によっては延命剤(品質保持剤)を使用する。さらに、予冷他低温での品質管理に努める。
寡日照害対策
事前対策
(1)冬季日照条件の悪い時期の栽培では耐陰性の高い品目を導入する他、株間、条間を広くとる、仕立て本数を少なくするなど栽植密度を下げ、日照条件を良くする。
(2)作型にもよるが、被覆資材の張り替えを光強度が低下する秋季に行うことを検討する。
(3)カーネション、バラ、HBスターチスなどでは反射マルチを導入し、光環境改善に取り組む生産者がある。
応急対策
(1)灌水、窒素施肥は控えめとし、茎葉が軟弱、徒長するのを防ぐ。また、換気を十分に行って、施設内の通風を良くし湿度を下げる。
(2)株元が繁茂している場合には株の整理や下葉かき、整枝等を行い光環境改善に取り組む。
(3)病害防除は定期的に薬剤散布を行うとともに病株、病葉の除去を行う。また、施設内湿度を下げる等の病害発生が起こりにくい環境を整える。
(4)秋ギクの季咲き栽培では花芽分化期に曇雨天が続く場合、電照を行うとともに到花日数から逆算して消灯し、栄養生長から生殖生長への移行をスムースに行う。
(5)キクの挿し穂は日照条件が回復(2〜3日以上の晴天)した後に採穂する他、冷蔵保存による計画的な採穂を推進する。
事後対策
(1)寡日照により軟弱徒長している株が急激な強日射等を受け、萎れや芽焼け、葉焼けが心配な場合は、寒冷紗等を用いて遮光を行い株の萎れを防ぐ。
お問い合わせ先
農業技術センター
島根県農業技術センター 〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380 nougi@pref.shimane.lg.jp <携帯・スマートフォンのアドレスをご利用の方> 迷惑メール対策等でドメイン指定受信等を設定されている場合に、返信メールが正しく届かない場合があります。 以下のドメインを受信できるように設定をお願いします。 @pref.shimane.lg.jp