○作物名:ブドウ
○虫害名:ブドウネアブラムシ
○概要
本種はアメリカ原産種で,1800年代後半にブドウ苗木に寄生して全世界に広がり,ブドウに壊滅的な被害を与えた。また,国際植物検疫の基礎をつくった害虫である。わが国には明治時代にアメリカから侵入し,大正時代にかけて全国的に発生したが,抵抗性台木への接ぎ木によって発生がほとんどなくなっていた。しかし,最近ヨーロッパ系醸造用品種の栽培や自根栽培が盛んになり,本種の被害が再び見られるようになった。
○被害と診断
成虫・幼虫が根または葉を吸汁加害するため,加害された部分の根,葉にこぶができ,開花不良,無核果,葉焼け,葉色減退などの被害が現れ,樹が次第に衰弱し枯死する。根では細根が紡錘形にふくれ,養水分の吸収ができなくなる。また,葉では未展開の若葉に幼虫が寄生し,葉表に口の開いたつぼ状の葉こぶをつくるため,葉は十分に展開せず,生育不良となる。
本種は季節によっていろいろな型の成虫が発生する。一般に見られるのは根に寄生する根こぶ型と葉に寄生する葉えい型でともに翅はない。成虫・幼虫とも体長0.9〜1.0mm,洋なし形で,黄褐色〜暗褐色である。根こぶ型成虫は背面に多くの突起があるが,葉えい型にはない。
本種の被害は甲州,デラウェア,巨峰,キャンベル・アーリーなどの自根栽培で多い。
○発生生態
根こぶ型は年10世代前後発生し,若齢幼虫で越冬する。春季,翅のない雌成虫になり,交尾することなく産卵する。その後の成虫も雌のみで単為生殖し爆発的に増殖する。卵,幼虫期間はともに11日である。雌成虫は28日間生存し,100〜120個の卵を細根のくぼみなどに産下する。
葉にこぶをつくる葉えい型は枝に産みつけられた卵で越冬する。4月中旬頃ふ化した幼虫が葉に寄生し,葉こぶをつくり,そのなかで成虫になり,根こぶ型成虫と同様単為生殖する。卵期間は8日,幼虫期間は約11日で,成虫は25日間生存し,約200個の卵を葉こぶ内に産下する。本種は根こぶ型,葉えい型の他に有翅型,有性型がある。有翅型は根こぶ型および葉えい型の幼虫から発生し,成虫には翅がある。有性型は有翅型成虫が産下した卵から発生したものであり,雌雄が存在する。なお,本種は根こぶ型から葉えい型へ,またその逆へと移行しながら有翅型がときに発生する。
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