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有識者インタビュー6

遺伝子組み換え作物研究や消費者の反応の現状

・現在の科学は、人が必要性に基づいて推進方向が決められる傾向がある。生物の多様性は、人が必要としてから重視された。GMも同様。農薬の不使用による作物生産などは、生産者も消費者も必要としており、食糧不足の解消には有効なので、対応しないといけない。ただし、推進一辺倒ではなく、生物多様性、生物体、生命系、といった大きな視点でみることが必要。農薬は、化学物質であり、人によりコントロールすることができる(これで良いとは思ってないが)。遺伝子組み換え作物は生き物である。生命系に拡散した遺伝子をコントロール可能かどうかは懸念される。

・遺伝子が外部に拡散した時にどうなるかは不明。GM生物の、多様性に対する影響評価の研究は始まったばかり。評価法についてはこれからの課題。このような評価ができていないところで、人の必要性により、GM生物の作出を進めていくと、後戻りできなくなる可能性がある。すなわち、一旦遺伝子が流出すると、後から収拾がつかなくなる恐れがある。

・植物の場合、生態系の中では、それぞれの種は十数種乃至数十種以上の生物と相互に関係を持っている。GM植物の生殖時に花粉が飛んだり、種子が散布されたり、遺伝子が広がったとすると、近縁の種類に及ぼす影響(最低限これは調査する必要あり)、花粉を媒介する昆虫に対する影響、昆虫を餌にする生物に対する影響が懸念されるが、現状ではそれらを総合的に調査する研究例がまだ知られていない。

・現在、いろいろな野生種が持っている特性は、何らかの理由があって持っている特性であり、その特性が人にとって都合が悪くても、その種にとっては必要である(生死を左右する)かもしれない。

・GM植物が外に出て、近縁種と交配し、組み替えされた遺伝子が自然の集団・遺伝子プールに入っていくと、その影響は未知である。しかし、流出した遺伝子を追跡、評価する研究が、日本では数カ所の大学・研究所で始まったばかりで、不足している。すべてを調べてから、ということではなく、最低限のところを調べて、評価の指標とするものができたら評価がしやすくなる。
例えば、建築物は、地盤に断層や遺跡の有無を調査してからでないと建築に取りかかれない。GM作物も、上述の評価指標ができてから、その評価で適当とされないと推進できない、という仕組みができると良いと考える(推進派には、それでは何もできないと反論されるが、消す)。人の必要性だけではなく、生物多様性への影響も配慮しながら、自然生命系とGM作物との共存が図れれば良い。

GM作物を食用とすることについて

・科学的検証と厳しいチェックがあれば、それほど抵抗はない。消費者の不安は、今まで食べてきたものと違う(=未知のもの)という不安があると考えるが、正確な知識と確かなデータを与えると、不安は解消されるのではないか。

GM第2,3世代について、例えばGMで花粉のない植物を作出すればどうか

・植物は完全に制御するのが難しい。例えば、繁殖形態は、有性生殖(花粉で受粉・受精)のみではなく、無性生殖(無融合生殖、栄養繁殖)などいろいろある。人間が予期しない形で外部に拡散したときに、他の種に及ぼす影響は未知である。

花について

・動物と異なり、植物の生殖様式が多様かつ複雑で、自家受精と他家受精で可塑性があり、環境によって使い分けている場合もあり、無性(配)生殖種と思われる植物は時に花粉や精子を作り出して有性生殖種と交配することもある。人間の影響を受けた生態系では生物もそれに適応、進化している。場合によって、現在の知見と異なる、予想もできない現象が起きても不思議ではない。

改変された遺伝子の将来について

・改変された遺伝子は、不利にも有利にも働く。不利に働いた場合、生態系に当該生物の欠如による穴が開く。自然界は、生命の連続性と生物多様性がバランスをとって存在する。GMで導入された遺伝子が拡散すると、そのバランスが崩れる恐れがある。

・GM推進の一方で、それらの影響を調べることが遅れている。細菌由来の遺伝子の追跡や、GM植物の花粉由来の遺伝子の追跡法を通じて評価の方法を探そうとしている。現在、模擬自然で、どのように広がるか検討中と聞いている。

県の方針について

・評価して、影響がないことが判れば再開しても良いと考えるので、「禁止」ではなく、「凍結」は適当。
文案からは、前向きに努力している印象を受ける。基本データを取ることが重要なので、GM研究をすべて否定するのではなく、今後、GM作物を栽培することのデメリットの範囲と、その克服可能性の有無(生殖様式など)、昆虫や土壌微生物など、多角的な視点からの基礎データを調査検討して , 影響について考えていくと良い。

・自生状態で、GMによる属性の変更が、その種にとって有利か不利かも検討する。
*ただちに多様性やGM作物の遺伝子を追跡する手法を組み立てるのは困難。時間と人と金がかかる。しかし、それを開発して、バックグラウンドをきちんと整備してからGM作物の研究を進める必要があると考える。


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