掲載企業インタビュー VOL.8
石州瓦、壁瓦・敷瓦、瓦食器
凍結や塩害などに強い高品質を武器に輸出の増大に活路
石州瓦工業組合
島根県西部の6事業所でつくる石州瓦工業組合(木村博紀理事長)は高温焼成によって生み出された耐久性に優れた「石州瓦」を全国に届けています。国内のみならずヨーロッパの極寒地や自然災害が多発する東南アジアなどでも採用され、人々の安全で快適な暮らしを守っています。
石州瓦が使われているフィリピンの住宅(石州瓦工業組合提供)
▼高温焼成により、丈夫で長持ちな「100年瓦」を実現
石州瓦は島根県西部で約400年前の江戸時代初めから生産され、三州・淡路とともに日本の屋根瓦の一大産地を形成しています。日本の屋根瓦市場に占める石州瓦のシェアは第2位を誇っています。
その特徴は「100年瓦」と称されるほど非常に優れた耐久性。他の産地よりも100~200度ほど高い1200度以上の高温で焼き締められていることから、ひびが入りにくく、耐寒性、耐熱性、遮音性、耐塩害性に秀でています。このため、古くから寒さの厳しい北海道のほか、強風による塩害が多い九州や東北の日本海側などで葺(ふ)かれてきました。
佐々木啓隆(あきたか)専務理事は「石州瓦は経年劣化に強く、メンテナンスフリー。鉄板やスレートのように塗り替えの必要がなく、長い目で見れば割安です」と話します。
石州瓦の街並みが広がる島根県西部
▼くらしを守り、くらしと共にある瓦を目指して
近年では被災地の仮設住宅への採用や瓦食器の開発など、より人々の生活に即した新たな活用の道も模索しています。
2020年に豪雨被害に見舞われた熊本県は、応急仮設住宅800戸中600戸に石州瓦を採用しています。もともと同県が石州瓦の出荷先であった縁で実現。金属、スレート瓦に比べて3割も遮音性が高いことから、豪雨被害を経験した入居者が、雨音で不安を感じず暮らせる環境を提供しています。
また軽量瓦の推進、壁瓦や床に使用する敷瓦、焼き損じの規格外瓦を細かく粉砕したセラミックサンドなど新たな道も探っています。
石州瓦の食器(石州瓦工業組合提供)
▼台風多発国、厳寒の国へ輸出
石州瓦工業組合ではブランド力の向上や成長市場の開拓を目標に、近年は欧米諸国やアジア圏などへの輸出拡大、新規輸出国の開拓に力を入れています。2000年代初頭は台湾向けに年間30万枚を、さらにその後、フィリピンとシンガポールで市場調査を実施し、台風の発生が多い同地域に向けて、強風や塩害に強い「防災瓦」を輸出しました。また、極寒のロシアでは、マイナス50℃でも割れないという実証実験を行い、輸出を実現。そして2019年には木村理事長がオーストラリア・カウラ市の日本庭園に50年ほど前の瓦を持参し、強度や色あせない点をPRしたことで、石州瓦の品質の高さが認められて採用が決まりました。
石州瓦を使用したオーストラリア・カウラ市の「日本庭園」。
採用の決め手は半世紀を経ても衰えない確かな品質でした。(石州瓦工業組合提供)
屋根瓦は、国によって色や形、サイズなどで特徴が異なるため、今後も海外でのニーズを汲み取りながら東南アジアやオセアニアを中心に輸出増を図っていく方針です。
耐久性などに優れた石州瓦を手に持つ佐々木啓隆専務理事。
被災地や極寒の地で多くの人々の命を守ってきた自負を胸に、今後も輸出に取り組みます。
■組合概要
石州瓦工業組合
理事長 木村 博紀
https://www.sekisyu-kawara.jp/(外部サイト)
所在地:島根県江津市嘉久志町イ405番地
TEL:0855-52-5605
FAX:0855-52-0766
お問い合わせ先
しまねブランド推進課
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 TEL:0852-22-5128 FAX:0852-22-6859 brand@pref.shimane.lg.jp