掲載企業インタビュー VOL.10
「トランスミッション」(株式会社 浅野歯車製作所)
高度な加工技術で厚い信頼/高性能トランスミッションを武器に海外へ挑戦
株式会社 浅野歯車製作所
歯車専門メーカーの浅野歯車製作所(松江市矢田町)は1949年の創業で、単品のギア(歯車)とトランスミッション(変速機)など組み立て部品の製造で全国的にもその名を知られています。長年の職人の経験によって培われた技術で、顧客が求める部品を低価格、納期厳守で製造・供給し、取引先の信頼を得ています。2018年から始まったイタリアの有力農機メーカーへのトランスミッションの輸出を機に、欧州や東南アジアなど海外での販路拡大に目を向けています。
運搬車用のトランスミッション
▼自社製ギア搭載の変速機
創業当時はギア単品の製造販売でしたが、時代を経て農業機械、産業機械用のトランスミッションや減速機、増速機の製造が増え、現在は組み立てを伴う製品が半分を占めています。1970年代から製造を始めた主力商品の小型トランスミッションには、熟練の加工技術でミリ単位の超薄型に仕上げた数種類の自社製ギアが組み込まれています。現在は6種類を製造。他社製に比べ、軽量でコンパクトな設計、正確な操作性、強靱な耐久性、小型で低価格といった点が高く評価され、小型の農業機械用トランスミッションの分野で国内では80~90%のシェアを誇っています。
自社製ギアを手にする橋本社長
▼小口注文に対応し納期厳守
主な取引先は大手の農業機械や産業機械メーカーなどで、小口を含めると北海道から沖縄県まで全国に約200社あります。品質だけでなく短期納入、納期厳守と数年に1回の注文や数十個単位の小ロットにも対応するきめ細かな姿勢を貫いています。同社のトランスミッションは国内では主に農産物の小型運搬車や防除機などに搭載されています。「小口の注文も大事にし、注文主との約束を守る納期厳守は社業の鉄則です」と同社の橋本雅社長は言葉に力を込めます。
ただ、国内では農家の高齢化に伴う就農人口の減少、農村地帯の疲弊などで農業環境は大きく変貌。大型コンバインの普及によってこれまで主流だった小型農業機械の需要も減少傾向にあり、トランスミッション生産は伸び悩んでいました。
▼1通のメールから始まった海外取引
そんな中での光明が2016年にイタリアのCormidi(コルミディ)社から届いた1通のメールでした。同社は世界中から高性能部品を集めて農業機械などを製造し販売する会社で、浅野歯車製作所のトランスミッションの耐久性や高い操作性に注目し、自社開発の小型農業運搬車用に使いたいという打診でした。サンプルを送り、契約締結後の18年2月に50台を初めて輸出。橋本社長は当初、単発の取引で終わるだろうと予想していましたが、その後も取引は続き、これまでに計450台を輸出しています。部品はブドウ農園の収穫作業時に使われる運搬車などに搭載されて活躍しており、自社製品の海外への輸出は社員の士気向上にも寄与しています。
▼提案力をつけ更なる海外販路拡大を目指す
イタリアでの成功例を武器に、海外への販路拡大を目指す橋本社長
欧州やASEAN諸国など海外での販路拡大を見据える同社では、海外向けの情報発信を強化するため、英語版ホームページの作成に取り組むとともに、コロナ収束後には海外で開かれる各種展示会へ積極的に参加するなど PR に力を入れていくことにしています。橋本社長は「次世代に対応する自社製品の開発を進めることで提案力をつけるとともに、これまで関係を築いてきたタイやドイツの企業との取引の可能性を探っていきたい」と意気込みを語っています。
■会社概要
株式会社 浅野歯車製作所
代表取締役 橋本 雅
http://www.asano-g.co.jp/(外部サイト)
所在地:島根県松江市矢田町250-108
TEL:0852ー24ー3111
FAX:0852ー24ー3114
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