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2018(H30)年 <  2019(R1)年 年報  > 2020(R2)年
目次 I.概要 II-1.発生状況の解析と評価 II-2.定点把握疾患発生状況 III.検査情報
全数把握 週報(インフルエンザ・小児科・眼科・基幹定点) 月報(STD・基幹定点) 精度評価
印刷用ページ 1.発生状況の解析と評価 発生状況 表5.指数(県) 表6.指数(地区) 表7.地区 表8.月(県) 表9-1.月(東) 表9-2.月(中) 表9-3.月(西) 表9-4.月(隠) 表10.年齢
インフルエンザ報告者の年齢区分割合
3)インフルエンザ定点感染症の流行状況:表5〜10、図1〜4
 過去10年間ではパンデミックがあった2009年の19,040件が突出して多かったが、2019年のインフルエンザ報告数は10,224件(流行指数1.14)と、パンデミックの年以外では昨年の10,391件についで多い年であった。 しかしインフルエンザの流行は晩秋から春と暦年をまたぐので、2017-18、2018-19というようにインフルエンザの流行シーズンで見ると、大きな流行であった2018-19シーズンの下降脚と、 早く流行が始まった2019-20シーズンの立ち上がりの、2シーズンを見ていることになるので数値としては大きくなっているが、大流行ではなく通常規模の流行シーズンだったといえる。
 2018/2019年シーズンのウイルスは、A香港(H3)型が主流であったが、A2009(H1)型もシーズンを通して検出された。B型はビクトリア系が第22週が1件検出されたのみであった。

4)小児科定点感染症の発生状況
RSウイルス感染症
流行指数(2019年報告数/(2009から2018年の平均報告数))
流行指数(2019年報告数/(2009から2018年の平均報告数))
 2018年は904件と1,000件に届かない報告数であったが、2019年は1,020件と1,000件をわずかに超え、1,000件を超えた2015年から2017年には及ばないものの4番目に多い年であった。 2019年の流行の特徴は、前年からの流行が4月末で収束したが、8月には次のシーズンの流行が始まったこと、その流行も12月にはほぼ収束したこと、である。 流行の始まりは前年の2018年は7月と早かったので、それよりも遅かったがそれでも一般的とされている9月よりも早い立ち上がりであった。 流行のパターンは年によって様々で、ここ数年の傾向から、予測は困難であると言わざるを得ない状況となっている。 ハイリスク乳幼児に対するシナジス投与の時期にも関係するので、毎年注意深く動向をチェックする必要性を痛感している。
咽頭結膜熱
 2019年は大きな流行がみられず2018(H30)年よりやや多い報告数だったが、流行期の2014(H26)年や2016(H28)年に比べ少なく、流行指数0.72の落ち着いた年であった
A群溶連菌咽頭炎
 5年連続で年2,400件以上の報告が続いていたが、2019年は1,823件と久しぶりに2,000件に届かない落ち着いた年であった(流行指数0.89)。 2017年から3年連続で年を追うごとに減少し、過去最多であった2015年の3,678件のおよそ半数であった。 歓迎すべき傾向であるが、抗生物質の適正使用が徹底され外来で早期に抗生物質が処方されることが減ってきているので、このことが本感染症の増加につながらないか今後の動向には注意を要する。
感染性胃腸炎
 過去10年間で最も少なかった2017年に比べ2018年は少し多かったが、2019年はそれよりも少し多い7,102件であり、流行指数0.77の落ち着いた年であった。 ロタウイルスワクチンの普及で、ロタウイルス胃腸炎の減少効果が続いていると考えられる。今後ワクチンの定期化が始まるので、さらなる減少が期待される。 しかしワクチンが普及すると、ワクチンに含まれない亜型にロタウイルス胃腸炎の起炎ウイルスが変化する可能性もあるし、原因ウイルスはロタウイルス以外にもたくさんあるので、今後も注意深く推移を見守る必要がある。
水痘
 3年連続流行指数0.25前後で推移している。罹患例も軽症が多いと報告されており、水痘ワクチン定期化の効果が続いていると考えられる。 水痘の軽症化は将来の帯状疱疹の予防や軽症化につながると言われているので、漸減傾向・軽症化に安心することなくワクチン接種の継続的な啓発活動が必要と思われる。

月別の報告患者数
月別の報告患者数
月別の報告患者数
手足口病
 全県で2,665件(流行指数1.80)と過去10年間で4番目に大きな流行の年であった。流行は4月に始まり、7月がピークで9月までに収束と、典型的な夏季の感染症パターンであった。 2018年と異なり流行の山は1つだけであったので、ウイルスが1つか同系統のものだけであったと考えられる。
伝染性紅斑
 総数322流行指数1.25と過去10年間で3番目に多い年であった。流行の中心は東部地域であった。妊娠初期の妊婦が罹患すると胎児死亡の可能性がある注意すべき感染症である。 ほとんどは発疹出現で初めて診断されるが、その時期には感染力は消失しているので、妊娠初期の妊婦への感染を防ぐには、不要不急の外出を避け、 どうしても不特定多数の人々が集まる場所に出かける時はマスクを装着し、不特定多数の人々が触る可能性があるものに触れた場合は手洗いを励行する、などを啓発していくしかないと思われる。
突発性発疹
 過去10年間で最低を記録した2018年よりもさらに減少の総数568であったが、流行指数は0.80→0.76と減少幅は少なく、 季節や年による変動が少くサーベーランスの適性をモニターできる唯一の疾患であるという位置づけは変わらない。 突発性発疹だけで本サーベーランスの精度をモニターするのは限界があるが、他に適当な疾患がない以上やむを得ないことである。
ヘルパンギーナ
 総数208(流行指数0.37)と、過去10年間で最少の落ち着いた年であった。
流行性耳下腺炎
 総数は73(流行指数0.10)と、これも過去10年間で最少であった。過去のデータから見ると5年前後の周期で流行しているので、2019年は非流行期であったと考えられる。 本感染症は合併症が問題視されるが、中でも難聴は大きな問題である。片側性で300分の1、両側性で1,000分の1と、無視できない率で難聴が存在すると言われている。 ワクチン定期化や助成化の動きがみられるのは喜ばしいことであるが、この動きにかかわらずワクチン接種を勧めるべきであろう。

5)眼科定点感染症の流行状況:表5から10、図7,8
眼科定点の報告患者数
流行性角結膜炎の年齢分布
基幹病院定点の報告患者数
(1) 急性出血性結膜炎
 非常に伝染力の強い結膜炎であるが、2019(R1)年は島根県での発生の報告はなかった。
(2) 流行性角結膜炎
 2019(R1)年は、全県で27件の報告があった。東部7件、中部10件、西部10件であった。アデノウイルス感染による重症結膜炎発生時の、感染拡大に対しての対策が各医療機関でなされており、大きな流行が見られなかったと推察される。 全県での月別報告では、8月から12月の発症が多くみられた。年齢区分では、20歳から59歳までの報告が20件と多かった。児童の報告は5件と少なく、学校などでの流行はなかったと思われる。
 流行性角結膜炎は感染力が強く、家庭内発症や職場、学校での集団感染を起こしうるので、早期の発見と診断が重要である。 感冒症状を伴う結膜充血や眼脂が見られる場合、アデノウイルス感染症を念頭に置いて、対象患者の発症状況や周辺環境を含め詳細な問診が重要であり、さらなる流行の予防のための丁寧な生活指導、治療が重要であると思われる。
6)基幹定点把握疾患の発生状況:表5から10、図9
(1) 細菌性髄膜炎 :10件(1.33)
 年齢は0歳代と50歳以上の年齢層で報告があった。Hibや肺炎球菌ワクチンの普及で2012年から2017年は減少していたが、2018年から少し多くなってきている。 ワクチンでカバーされていない遺伝子型の菌が増加してきている可能性が考えられ、動向を注意深く見守る必要がある。
(2) 無菌性髄膜炎 : 30件(0.84)
 過去10年間で中程度の報告数であった。時期は7月以降であるので、例年と同じくエンテロ系のウイルスが起炎ウイルスであったと考えられる。
(3) マイコプラズマ肺炎 :36件(0.33)
 入院例が、2018年9月以降に散発的に報告されている。マイコプラスマ感染症は、肺炎を起こしても外来治療できる疾患となっているため、入院例があるということは、入院例の数倍から10倍の外来患者がいると推定される。 本サーベーランスのように入院例でマイコプラスマ感染症の動向をとらえることは困難で、外来患者を把握する方法を検討する時期にきていることは昨年の報告書でも申し上げたことである。
(4) クラミジア肺炎 :2件(0.69)
 2009年以降、年間0〜6件の報告がある。2019年は松江圏域と出雲圏域からそれぞれ1件報告があった。
(5) 感染性胃腸炎(ロタ):26件
 4月をピークに、2月から7月にかけて報告があった。
島根県感染症情報センター