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流行性耳下腺炎
報告基準発生推移グラフ島根県データ表示全国データ表示この疾患に関する情報

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

発生状況
 患者は季節を問わず発生しますが、冬期から初春に多く発生します。流行状況の動きが緩慢な点が特徴的な疾患です。同一地区内でも流行拡大には長期間が必要で、約2年間の流行期と3年間の流行閑期がみられます。
 島根県では2014年後半に西部で流行した後、2016年には県内各地域から患者報告が出るようになり、 2017年に入ってからも、8月まで東部・中部及び西部で患者報告数の多い状態が続いていました。9月以降も東部および中部で患者の報告が続いていましたが、減少しました。


病原体
 パラミクソウイルス科パラミクソウイルス属ムンプスウイルス(mumps virus)

感染経路
 ムンプスウイルスはヒトからヒトに唾液を介して経気道的に感染し、上気道粘膜上皮や頚部リンパ節で増殖した後、ウイルス血症により親和性の高い臓器で急性病変を起こします。 耳下腺などの唾液腺のほか、睾丸、膵臓、腎臓、髄膜などが侵されます。

潜伏期
 顕性感染の典型例では2〜3週間(平均18日)の潜伏期を経て、発熱を伴う両側性の耳下腺腫脹で発症する全身感染症です。

臨床症状
 好発年齢は4〜5歳で15歳頃までに90%以上が感染します。1歳前後の幼児では耳下腺腫脹を欠くことがあり、不顕性感染(約30%程度)も多くあります。 年長児や成人が罹患すると臨床症状が著明で唾液腺以外が侵される例も多く、合併症の頻度も高くなります。 思春期以降の男子では、約4分の1の症例で睾丸炎をおこし、中枢神経系も高頻度にウイルスの侵襲を受けて脊髄に細胞増多がみられます。  臨床的には2%の症例に無菌性髄膜炎がみられますが、予後は良好で後遺症は残りません。
 また、無菌性髄膜炎よりもまれですが、後遺症が残る合併症として、片側(まれに両側)の難聴(ムンプス難聴)をおこす場合があります。お子さんがおたふくかぜにかかった後は、耳のきこえに異常がないか、注意が必要です。
 一度罹患すると、終生免疫が成立し、再罹患はしません。

検査室診断 
 非定型例や不顕性感染の診断には実験室診断が必要です。ウイルス分離には急性期の唾液、尿、髄膜炎発症初期の脊髄液を培養細胞に接種し行います。
 血清診断は、急性期・回復期のペア血清を用いて、HI、中和、ELISAによる抗体価の上昇を確認します。
 ただし、測定法によっては、パラインフルエンザ2型及び4型と共通抗原性があり注意が必要です。

治療と予防
 おたふくかぜのウイルスに対する特別な治療はありません。脱水等の症状に対処しながら、経過を見守ります。  気道へのウイルス排泄は、発症5〜6日前に既に始まっているばかりか、不顕性感染(感染してもおたふくかぜの症状が出ない状態)が3分の1みられることから、患者を隔離することによって流行を阻止することは困難です。
 ワクチンの任意接種:おたふくかぜのワクチンは、弱毒生ワクチンで、1歳以降で接種できます。ワクチン接種2〜3週間後に軽度の耳下腺腫脹が数%にみられ、ごくまれに無菌性髄膜炎を合併することがありますが、予後は良好です。1歳以降は定期の予防接種が立て込んでいますので、かかりつけの小児科医に相談して接種スケジュールをたてましょう。なお、γグロブリンによる予防効果はありません。

法律での取扱い
 5類定点報告疾患です。
 学校保健安全法では、第二種の感染症とされています。出席停止の期間は、「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」となっています。
流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎

リンク
島根県感染症情報センター