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平成19年8月3日(金)一日対話の日(益田圏域)

 

 「一日対話の日」は、知事が終日県民の方々のご意見をお聴きする日です。

 今回は、益田地域で県民の方々にお会いし意見交換をしました。

 

海岸防風保安林の保全に取り組む方々と懇談しました

 

保全の対象となっているのは、益田市北部の日本海側に面し、高津川と益田川の河口にはさまれた、長さ1.4km、幅200mの防風保安林です。かつては、海岸線が見事な松に覆われ、白砂青松の美しい情景が広がっていました。

しかし、昭和50年代に松くい虫被害で松林が壊滅的な被害を受け、多くの松(2万本)が次々に枯れて原野化し、季節風による塩害が広範囲に及ぶようになりました。

 かつての美しい松林を取り戻そうと、平成9年頃から地域住民を始め、多くのボランティア団体、学校との協働による植林活動が始まり、荒廃した防風保安林を見事によみがえらせました。

 この実績が評価され、平成16年に全国森林病虫獣害防止協会が主催する「森林病害虫等防除活動優良事例コンクール」で全国最高賞と林野庁長官賞を受賞しました。

 本日は、この活動の中心となった、中須地区自治会長増野力さん、ボランティア団体として活動をサポートするネイチャーキッズ寺子屋代表の大畑伸幸さん、大畑まどかさん(益田中学1年)、岩井梨佳子さん(益田東中1年)に活動のきっかけ、取り組み内容等についてお伺いしました。

 

 懇談会風景

増野さんは「いったん活動に取りかかると、途中でやめることができない。ボランティアが中心となり木を育てつつあるが、管理が大変です。行政の協力が必要。また、きれいな浜であれば、人が訪れる。みんなが自ずときれいにしようとし、活動の輪が地域に広がりました。」と保全活動を継続するうえでの課題などについて語られました。

 

 また、大畑さんは「小学校のPTAなど親子200人くらいで見に行き、荒れている状況を始めて知りました。子ども達が興味を持ったのが、保全活動をお手伝いするきっかけです。子どもが活動することで親が刺激を受け、一緒に活動する。親子の交流が進みますね。」と、活動に取り組んだ経緯と親子交流に与える効果について話されました。

 

 知事は、「子どもは、活動に参加することで、草花などの自然に関心を持つようになったりするだろうし、良いことですね。私も50代に入ってから草花に関心が出ました。現代の人は、会社勤めなどで忙しく、ゴルフ場のような人工的な場所に行くことはあっても、なかなか森林や自然に触れる機会はありません。子ども達が自然の大切さを知る良い機会になりましたね。皆さんの活動が広く知られ、県民の皆さんが関心を持ち、活動の和がさらに広がっていくよう、頑張ってください。」と期待込めて話しました。

 

 そして、最後に子ども達に「何か希望などがありますか」と訪ねました。

岩井さんは、「いろんな人に島根のことを知ってもらって、島根が有名になってもらいたいです。」大畑さんは「自由に山に入れたり、川で安全に遊べるようになって欲しいです。」とそれぞれの思いを知事に伝えました。

 

※ネイチャーキッズ寺子屋

 

平成17年設立。構成員30名(スタッフ含む)。子どもと親子の様々な体験活動を創るボランティアグループ。海岸林の保全・整備にも活動の一環として参加。

 

 懇談会出席者と

写真:左から増野さん、岩井さん、知事、大畑まどかさん、大畑伸幸さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイプル牧場を視察し経営者の方々と懇談しました(益田市黒周町)

 

益田市黒周町のメイプル牧場を訪問しました。メイプル牧場は、平成17年10月に地元の農外企業(製材・土木関係)の経営者と畜産事業者とが共同で出資し設立された会社です。乳牛300頭と和牛(繁殖)200頭を飼育しています。

 

この日、懇談させていただいたのは、メイプル牧場の経営に参画しておられる松永和平さん、加藤大介さん、安野伸路さんの3人の方々です。

 

懇談会風景

まず、松永さんが「メイプル牧場の搾乳システムは、世界初の乳質管理改善システムを導入しています。乳成分を毎日、各牛ごとに測定し、これらのデータをもとに、牛の健康管理、乳質の管理を行い、安全・安心でおいしい牛乳を提供することを目指しています。

 また、雨水等は、処理施設において浄化し、再利用します。排出される畜糞は、バイオマスエネルギーとして活用し、牧場内にあるハウスでアスパラガス栽培を行うなど無駄のない循環型農業に取り組んでいます。」と牧場の先駆的な取り組みについて熱く語られました。

 

 続いて、「メイプル牧場という名前の由来は」という知事の質問に、「楓(メイプル)は、カナダでは"赤ちゃんの手のひら"という意味があります。やさしいイメージで、子供の健やかな成長を願い、安全でおいしい牛乳を作ることを表しています。また、牧場の構成が異業種5人の出資者であることから、その5人の協調のシンボルとして、メイプル牧場と命名しました。」と当牧場の専属獣医師でもある加藤さんが答えました。

 

 また、加藤さんは、「畜産に関するマニュアルは、通常アメリカや欧州のものが中心だが、日本に合った畜産スタイルを確立することが必要。例えば、湿気の多い日本では、牧草を作ることが難しい。そこで、地域の稲わらや廃棄物を飼料化して、有効利用することを考える必要がある。飼料化がうまくいけば日本の畜産は有望です。」など畜産を発展させて行くための課題、戦略などについて思いを話されました。

 

牧場の概要説明 

 農外企業(製材、土木工事などの会社を別途経営)から、新たに畜産業に参入された安野さんは、「牛舎では、おがくずを敷き、糞尿を吸収させて堆肥にしている。臭いを防ぐ効果もある。おがくずは、製材からでるものだけではなく、廃材からも生産しており、月に千m3程度生産しています。今は、農業だけでは難しく、それぞれが得意分野を持ち寄り一体となって取り組まないとうまくいかない。」と農外企業との幅広い連携の必要性を主張されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

写真牧場の概要説明を受ける知事

 

最後に知事は、「他の業種でもそうですが、地方で大都市のマーケットで通用するものを作り、大市場で販売するシステムを確立できるといいですね。市場は得てして定期的かつ大量の製品供給を求めるものですが、多品種少量が評価される場合もあります。地域の特性を活かし、本県の酪農・肉用牛経営の中核的な存在となるよう頑張ってください。」と経営陣の取り組みを評価し激励しました。

 

出席者と記念撮影

 

写真:左から安野さん、加藤さん、知事、松永さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圏域別テーマ懇談会(津和野町日原山村開発センター)

 

圏域別テーマ懇談会では、益田圏域で農業の第一線で活躍する方々にお集まりいただき、「益田圏域における農業・農村の担い手確保」(於/日原山村開発センター)をテーマに意見交換を実施しました。

 

懇談会の風景

 

出席者の方々からは、「少子高齢化による担い手不足」、「農産物価格の低迷」、「米消費量の逓減」など、農業を取り巻く環境の厳しさが指摘されました。その一方で、「営農に取り組みやすい地域の環境を整えておけば、必ず担い手は育つ」、「農業者を経営形態などにより3種類程度に分類し、それぞれのステージにあった農政を行うことが必要」、「農業をブランド化するノウハウが重要。規模は小さくても全国へ情報発信が可能」といったこれからの農業のあり方、担い手確保につながる意見が多数出されました。

 

 これに対して知事は「各地域で様々な先進的な取り組みがされていることが分かり、大変参考になりました。皆さまの努力が実を結び、農業の発展が図られるよう県として努力します。」と締めくくりました。

 

 

 

 

◆◆◆懇談会出席者の主な発言◆◆◆

 

◇中野ヒサエさん(津和野町)

地元産品を素材にした農産加工品を道の駅等で販売するグループの代表。

 

[発言要旨]

  • もともとJAの婦人部が出発点。事業立ち上げのときは、知識、技術がなく大変苦労した。県の力を借り、お母さんの味として売り出した。今では一定の売上を確保できるようなった。
  • 県の組織改編等により農業部門が距離的に遠くなっており、情報の入手と相談がしにくくなった。

 

◇糸賀盛人さん(津和野町)

県特定農業法人ネットワーク会長で、地域で農事組合法人の代表理事を努め、地域を挙げて集落営農に取り組む。

 

[発言要旨]

  • 津和野町の奥ケ野村で米を中心とした集落営農に取り組んでいる。担い手育成、新規就農者受け入れのためには、地域が営農ができる集落であることが必要。田畑の手入れも行き届いており、営農がしやすい環境さえ整えておけば新しい人、担い手が自ずと育つ。現実に、自分たちの地域には、若い夫婦が3世帯Iターンで定住している。
  • 最近は、米の消費量が下がっている。休耕田を活用して菜種をつくったらどうか。菜種油を使って、天ぷらをあげるのもよし、バージンオイルをトラクターに使用するのもよし。バイオエタノールが注目を集めている。菜種油を活用するジーゼルプラントを県で取り組んでもらいたい。

 

◇田中幸一さん(津和野町)

日原タラの芽生産組合長。平成元年頃から里山を活かすことを考え、地区を上げて山菜生産に取り組む。

 

[発言要旨]

  • 少子高齢化等による担い手の減、農産物価格の低迷により、農業が疲弊している。
  • 農業の法人化によって、田畑を「預ける人」と「預かる人」の2種類の農家ができることになる。預ける側、預かる側に集落を分断することにならないか。

 

懇談会の出席者と記念撮影

◇松本哲夫さん(益田市)

JA西いわみトマト部会副部会長。

 

[発言要旨]

  • ・益田市飯田町の国営開発地で、20代〜40代が中心となってトマトの生産を行っており、主に広島県に出荷している。生産物の品質と生産量に重きを置いた、西石見型の施設園芸モデルの構築を目標にしている。

 

◇櫻井太さん(益田市)

  • 県内の若手農業者グループ(島根県アグリヤングクラブ)の会長。グランドカバープランツ(表土を覆う芝などの植物)を栽培。

 

 

写真:前列左から岩井さん、中野さん、知事、糸賀さん、田中さん

 後列左から茅原さん、櫻井さん、松本さん

 

[発言要旨]

  • 農業の発展のために言いたいことが3つある。一つは担い手の確保。担い手を確保するには、農業で儲かる仕組み作りが必要。担い手が不足する原因は儲からないことにある。二つめは、儲かるにはどうしたらいいかということ。儲けるためには行動力が必要。積極的に販売戦略を行うなどの行動力が不可欠。三つ目は、農業の担い手と一口で言っても、みんな一緒ではない。勝負する場所が違う。オリンピック選手は国、国体選手は県、地域で活躍するプレイヤーは市町村というふうに担い手を3ランク程度に分け、それぞれにあった農政を展開していただきたい。今の農政は全部の担い手を横一線に扱っている。それぞれ求めていることが違うと言うことを理解すべき。
  • また、農業者の生産意欲を喚起するためには、優良な取り組みに対して表彰状を出すことが有効。たかが紙一枚のように思われるかもしれないが、実績が評価されることは生産意欲に大きな影響を与える。

 

◇岩井賢朗さん(益田市)

平成12年に益田市真砂地区で、有志24名で地区の活性化を図るため「有限会社真砂」を結成し、豆腐づくりに取り組む。

 

[発言要旨]

  • 中山間地域を何とかしたいという思いで8年前からこの事業を始めた。現在は、7名程度で一日500丁の豆腐を生産している。市内における豆腐のシェアは10%程度。
  • 県内には、良い素材(農産物)がたくさんある。発想を変えればこれらの農産物から多くの商品を創り出すことができる。農業をブランド化するノウハウが必要。小規模でも全国に情報発信ができる。

 

◇茅原忠夫さん(吉賀町)

吉賀町農業委員。耕作者不在の農地を受託し、農作業を行うことにより農地の荒廃を防ぐ活動に取り組む。平成13年農業生産法人設立。

 

[発言要旨]

  • 平成5年頃から農作業の受託グループを結成し、休耕田の受託に取り組んでいる。農業の担い手が少なくなっていることは、大きな問題。吉賀町内で農家を対象に農業後継者に関するアンケート調査をしたことがある。後継者がほとんどいないのが実情。
  • 30年前転作を進められたときは、米の値段を下げないために減反をするのだと言われたが、結果として価格は低迷している。かつて国や県の指示に耳を傾けなかった人達が今は成功しているのではないか。

 


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