令和5年2月定例県議会知事所信表明並びに提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し述べたいと思います。
(1.大雪による災害)
はじめに、大雪による災害についてであります。
先月24日からの大雪により、県内でも、農業用ビニールハウスの倒壊等の被害が発生しております。
被災された方々に、心からお見舞いを申し上げます。
県としましては、市町村とも連携して、被災した農業施設の復旧等に向けた支援を速やかに行ってまいります。
(2.新型コロナウイルス感染症対策)
次に、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
(1)基本的な感染防止の徹底にご理解とご協力をいただいております県民の皆様、治療・介護に当たっておられる医療・福祉従事者の皆様に、心から感謝を表する次第であります。
(2)県内では、年末から年始にかけて、第8波の大きな感染拡大が起こり、先月初旬には、1日あたりの新規感染者数が過去最多となりました。
(3)県としましては、入院病床や宿泊療養施設を確保した上で、「島根県フォローアップセンター」や訪問看護ステーションによる健康観察や、生活支援物資の提供により、自宅で安心して療養できる環境整備に努めてまいりました。
(4)さらに、外来診療の体制につきまして、季節性インフルエンザとの同時流行に備え、医師会のご協力をいただき、発熱外来の拡充等に取り組んでまいりました。
加えて、新型コロナの重症化リスクが低く、かつ症状の軽い方が、自己検査で陽性になった場合、医療機関を受診することなく、「しまね陽性者登録センター」への登録を可能とする取扱いにしております。
(5)重症化リスクの高い方が入所されている高齢者施設等においては、国が配布する検査キットを活用した、従事者の定期的な検査実施により、感染者を早期に発見し、感染拡大防止やクラスターの発生防止に努めております。
(6)このほか、県内の医療ひっ迫の状況をご理解いただけるよう、実態をより反映した「即応病床使用率」を用いることとしました。
(7)現在は、国内・県内ともに感染状況は落ち着き、新型コロナの感染症法上の位置付けが「5類」に見直されることとなったため、県としましては、県民の皆様や保健・医療の現場に混乱が生じないよう、全国知事会と連携して、円滑な移行に向けた万全の対策を、国に求めてまいります。
(8)なお、「5類」への移行が、具体的にどのような取扱いになるかが確定していないことから、これまでと同様の感染症対策の実施に要する予算を、今議会に提案しております。
(9)引き続き、県民の皆様の命と生活を守るため、国や他の都道府県、市町村、医療機関等と緊密に連携しながら、感染拡大防止や医療提供体制の確保、ワクチンの接種の促進に取り組んでまいります。
(3.原油価格・物価高騰対策)
次に、原油価格・物価高騰対策についてであります。
(1)ウクライナ情勢や円安に伴う原油・原材料、物価の高騰が続き、昨年12月の消費者物価指数が、前年同月比で4%を超える大きな伸びとなり、国民生活や企業活動に大きな影響を及ぼしております。
県としましては、昨年12月に成立した国の令和4年度第2次補正予算を活用し、原油価格や物価等の高騰に対応するため、追加の対策に取り組むこととし、必要な予算を今議会に提案しております。
(2)また、LPガスの消費者の負担軽減策につきましては、11月議会で採択された意見書に基づき、利用するエネルギーの種類により支援の有無が分かれるという公平性の問題や、人口が少なく、LPガス利用の多い地域が抱える課題を改善するため、38都府県の賛同を得て、今月9日に、関係省庁や与党に対し、39都府県知事の連名により、緊急要望を行ってまいりました。
(3)引き続き、国内外の経済情勢や国の動向を注視し、事業者を支え、県民生活を守るため、全力で取り組んでまいります。
(4.予算の概要)
それでは、提出いたしました来年度当初予算と今年度補正予算について、概要をご説明申し上げます。
(1)来年度当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策及びエネルギー価格・物価高騰対策と島根創生の推進の両立を進めるとともに、こうした課題に切れ目なく対応するため、本格予算としております。また、健全な財政運営を図る予算として編成しており、総額は4,824億円で、今年度に対し、0.1%、3億円の増となっております。
11月、2月補正予算においても、感染症対策及びエネルギー価格・物価高騰対策や国土強靱化対策を進め、切れ目ない予算としており、全体としては5,134億円で、前年度比で1.4%、72億円の減となっておりますが、このうち、感染症対策及びエネルギー価格・物価高騰対策では、前年度比で4.5%、15億円の増となっております。
(2)感染症対策及びエネルギー価格・物価高騰対策に取り組みながら、島根創生を着実に推進してまいります。
(3)島根創生を推進する施策につきましては、この3年間の取組を踏まえ、島根創生を加速するために、産業、子育て、暮らしの支援や、新しい人の流れづくりに関連する事業等を強化してまいります。
(4)なお、昨年10月の財政見通しでお示しした、来年度当初予算における財源不足につきましては、事業のスクラップ・アンド・ビルドや事業費の精査に加え、特別会計の余剰金の活用などその効果が一時的な手法も用いながら、財政調整基金の取崩しを5億円追加して予算を編成したところです。
こうしたことから、将来にわたって財源不足が解消した状況ではなく、県財政は依然として厳しい状況にあると考えております。
それでは、予算に盛り込みました主要な施策について、順次、ご説明申し上げます。
(5.感染症対策及び原油価格・物価高騰対策)
まず、新型コロナウイルス感染症対策及び原油価格・物価高騰対策についてであります。
(1)医療提供体制の確保・学校等における感染症対策につきましては、新型コロナの感染症法上の位置付けが「5類」へ移行されるため、移行後の取扱いの内容を踏まえ、取り組んでまいります。
(2)農林漁業者への支援につきましては、経営の継続、安定を図るため、省エネ・省コスト機器等の導入や、高騰している配合飼料や粗飼料の購入経費の支援等を行ってまいります。
(3)「しまねプレミアム飲食券」につきましては、先月末を
もって終了したところですが、引き続き厳しい状況にある飲食業やその関連事業者、農林漁業者の経営を下支えするため、来月中旬に再開し、歓送迎会等の需要を取り込みながら、飲食消費喚起を図ってまいります。
(4)宿泊事業者等への支援につきましては、国の制度を活用した、全国旅行支援「ご縁も、美肌も、しまねから。」しまね旅キャンペーンを、先月10日から実施し、観光需要喚起を図っております。
(5)中小企業・小規模企業の資金繰りにつきましては、これから多くの事業者で「令和2年度新型コロナウイルス感染症対応資金」の償還が始まるため、据置期間や償還期間の延長に伴う経費や、保証料率を大幅に引き下げた特別資金による新規借入等に対し、支援を継続するほか、国の新たな保証制度を活用した、新資金制度を創設して支援してまいります。
また、引き続き、エネルギー価格高騰の影響を受けている事業者が取り組むコスト削減、生産性向上のための設備投資を支援してまいります。
(6)県民生活への支援につきましては、市町村と連携し、住宅用の太陽光発電や蓄電池、木質バイオマスなど、再生可能エネルギー設備の導入を促進して、電気料金の負担軽減とともに、地域の資源を活用したエネルギー自給率の向上を図ってまいります。
(7)また、生活に困窮された方に対する生活福祉資金の特例貸付の償還が、先月から始まったことを踏まえ、関係機関と連携し、就労や家計改善への生活相談など、きめ細かい支援に努めてまいります。
(8)このほか、感染症対策と物価高騰対策のための調整費につきましては、15億円を確保し、今後の状況の変化に機動的に対応してまいります。
(6.魅力ある農林水産業づくり)
次に、魅力ある農林水産業づくりについてであります。
(1)担い手の確保につきましては、農林大学校において、農業科では、令和2年度に実施した定員増や一年制の短期養成
コースの開設等により、昨年度・今年度ともに、定員を超える50名の入学者があり、来年度も、同水準の入学者が見込まれております。
また、林業科では、高校での林業教育等を通じた働きかけにより、今春は、定員を20名に倍増した令和2年度以降、初めて定員を超える入学者が見込まれております。
今後も、一人でも多くの意欲ある学生を確保し、次世代の担い手を育成してまいります。
(2)農業につきましては、昨年12月に、楽天農業株式会社、県西部の9市町、JAしまねと、有機野菜の産地づくりに係る連携協定を締結し、この協定に基づき、生産技術の普及や基盤整備への支援等の取組を、積極的に進めてまいります。
さらに、「しまね和牛」の肉質が、昨年10月の全国和牛能力共進会で全国トップクラスと認められた成果を活かすために、「農畜産課」を再編し「畜産課」を新設して体制を強化し、しまね和牛の認知度向上を図り、農業生産額100億円増の目標達成を目指してまいります。
(3)林業につきましては、木材の円滑な流通を促進するため、原木の需要・供給情報を効率的に共有する「木材需給情報伝達システム」が県内全ての原木市場に導入され、昨年12月から稼働しております。
また、原木生産の分野では、生産量増加のための林業機械の導入が、木材加工の分野では、高品質・高付加価値な製品づくりに向け、施設整備や商品開発が積極的に行われております。
引き続き、業界の積極的な取組を支援し、林業・木材産業の生産基盤の強化を進めてまいります。
(4)水産業につきましては、老朽化した漁業試験船「島根丸」に代わって、新たな試験船を導入し、水産資源や海洋環境に関する調査研究体制を強化しながら、引き続き、水産資源の持続的利用を促進し、漁業経営の発展を図ってまいります。
(7.力強い地域産業づくり)
次に、力強い地域産業づくりについてであります。
(1)ものづくり産業につきましては、今後、脱炭素化やデジタル化等の進展により、産業構造が大きく変化していくと見込まれるため、成長が期待される「グリーン」「次世代モビリティ」「ヘルスケア」の次世代産業分野に、県内企業の参入を促すことにより、県内経済を牽引し若者が魅力を感じる、高付加価値な企業の創出を進めてまいります。
また、石州瓦産業において、厳しい経営環境の中、新たな中期計画を策定されるため、業界の動向や取り巻く状況を注視しながら、新たな商品開発や新分野進出等を支援してまいります。
(2)先端金属素材グローバル拠点創出事業、いわゆる「次世代たたらプロジェクト」につきましては、今年度が国の交付金による支援の最終年度でしたが、これまでの取組と今後の事業計画が国に評価され、来年度以降、最大4年間の継続支援が受けられることとなりました。
引き続き、事業のテーマである航空宇宙産業・モーター産業等での事業化に向け、取り組んでまいります。
(3)IT産業につきましては、業界の集計によれば、県内のIT企業の従業者数は、令和2年4月時点の1,608人から昨年4月には、1,717人に増加し、売上高も、令和元年度の約289億円から、昨年度の約322億円へと、堅調に伸びております。
若者の就職の有力な受け皿として、魅力的な産業となるよう、引き続き取組を進めてまいります。
(4)産業のデジタル化につきましては、企業の導入経費の支援を拡充するなどして、デジタル導入の加速化を図り、県内企業の競争力強化を支援してまいります。
(5)また、昨年度策定した「島根県ICT総合戦略」に基づき、各分野におけるデジタル化施策を着実に推進するほか、行政手続のオンライン化による利便性の向上や、デジタル技術を活用した市町村の取組への支援を行い、デジタル化の恩恵が県民に広く行き渡るよう取り組んでまいります。
(6)美肌観光の推進につきましては、県内事業者の美肌コンテンツづくりを支援し、島根ならではの旅の魅力を高めてまいりました。
今後は、需要拡大が見込まれるウェルネス市場に向けたプロモーションの強化等を通じ、「美肌県しまね」の認知度の向上と誘客促進に取り組んでまいります。
(7)外国人観光客の誘客につきましては、近隣空港での受入再開や回復期に備え、台湾などターゲットとする国や地域へのプロモーションや、受入環境の整備を進めてまいります。
(8)中小企業・小規模企業への支援につきましては、地域を支える事業の維持・発展を図るため、関係団体や市町村と連携し、経営力の強化や円滑な事業承継、県外での事業展開等を支援してまいります。
また、厳しい経営環境の中、果敢に起業・創業にチャレンジする事業者を引き続き支援し、地域経済の活性化につなげてまいります。
(9)企業立地の推進につきましては、令和元年度以降の立地認定件数は51件、総投資額は403億円、増加雇用計画数は902人となり、コロナ禍においても一定の成果をあげております。
引き続き、誘致に向けた働きかけを行うほか、次世代産業分野に対する支援の上乗せや、成長が見込まれるスタートアップ企業に対する支援制度の創設など、更なる企業立地の推進に向け積極的に取り組んでまいります。
(10)江津地域拠点工業団地につきましては、山陰道福光・浅利道路の工事が進捗しており、インターチェンジに直結する工業団地として、更なる利便性の向上が期待されるため、当初計画のうち、残る第三期造成区画の約12.9haの整備に着手し、一層の企業集積を図ってまいります。
(8.人材の確保・育成)
次に、人材の確保・育成についてであります。
(1)島根大学における県内初の工学系学部の創設に伴い、かねてより県内産業界から要望をいただいていた、工学系分野の高度な専門人材を県内で育成できる環境整備が、大きく進展しました。
県としましては、新学部棟・研究機器等の整備や、県内企業との共同研究等を支援するとともに、引き続き、島根大学や県内産業界等と議論を重ねながら、産業の振興や若者の県内定着を図ってまいります。
(2)こうした高等教育機関の充実を契機として、県内の高校生に県内大学を進路として考えてもらえるよう、高大連携の取組を強化してまいります。
高校と県内大学が連携して行う様々なイベントを通じて、県内大学の魅力を発信するとともに、県内大学を希望する子どもたちの進路が実現できるよう、学力の底上げに取り組んでまいります。
(9.結婚・出産・子育てへの支援)
次に、結婚・出産・子育てへの支援についてであります。
(1)結婚支援につきましては、高校生・大学生等としていた「ライフプラン設計講座」の対象に社会人を加え、より多くの方に、自らの結婚、子育てをより身近なものとして考えていただく機会を提供してまいります。
加えて、市町村と連携し、広域的なイベントなど、独身の方が参加しやすい出会いの場の創出を一層充実させ、結婚を望む男女の希望がかなうよう取り組んでまいります。
(2)妊娠・出産・子育てへの支援につきましては、国の制度を活用して、妊娠期から出産・子育てまで、切れ目のない伴走型の相談支援と経済的支援の一体的な実施や、母子保健と児童福祉の双方の相談に対応できる「こども家庭センター」の設置など、市町村の取組を支援し、安心して出産・子育てができる環境づくりを進めてまいります。
(3)保育環境の充実につきましては、送迎バスでの置き去り事案等を受け、安全装置の設置など、児童の安全確保のための基準条例の改正を提案しております。
また、保育士の負担軽減や子どもの安全・安心な保育環境整備のため、大規模保育所の保育士配置を支援するなど、引き続き、保育環境の充実を図ってまいります。
(4)放課後児童クラブにつきましては、待機児童解消の取組を進めた結果、平成30年度に比べ、1,500人を上回る定員の増加となった一方、潜在的な需要が掘り起こされ、依然として130人程度の待機児童が発生している状況です。
このため、引き続き、定員増に取り組むほか、既存の保育所等の人材や施設等を活用した学童の受入支援を拡充し、更なる受入環境の整備を進めてまいります。
さらに、支援員の研修の充実や、大学やシルバー人材センター等と連携した人材確保の取組を強化するなど、引き続き、放課後児童クラブの一層の充実を図ってまいります。
(5)子どもの医療費助成につきましては、市町村の取組も含めて、県内全域で、助成対象が小学6年生まで拡大し、今年度からは中学生に対しても、全市町村で、実情に応じた支援が行われております。さらに、高校生に対しては、これまで行われていた市町村を含めて、4月には9市町村で、医療費助成が実施される予定です。
今後も市町村と連携し、子育て世代の経済的負担の軽減に取り組んでまいります。
(10.中山間地域・離島の暮らしの確保)
次に、中山間地域・離島の暮らしの確保についてであります。
(1)中山間地域・離島における「小さな拠点づくり」につきましては、重点的に支援を行うモデル地区において、邑南町羽須美地区での、利用者の予約により運行されるデマンド交通や、安来市比田地区での、路線バスへの乗継、農産物直売所等の機能が集約された拠点施設の整備など、住民主体の取組が着実に進められております。
こうした取組を広く周知するなどして、地域の課題解決に向けた取組が進むよう、引き続き支援してまいります。
また、今年度実施した実態調査の結果や、市町村の意見等も踏まえ、地域住民が安心して住み続けることができるよう、これまでの住民主体の取組に加え、中山間地域のガソリンスタンド維持に取り組む市町村への支援制度の創設など、行政がより関与しながら、中山間地域の生活機能の維持・確保に向けた取組を進めてまいります。
(2)今年度末に期限を迎える離島振興計画につきましては、本土との格差是正や地域振興策を盛り込んだ次期計画の策定に向け、パブリックコメントを終え、現在、国への提出手続きを進めております。
計画策定後も、隠岐4町村と連携し、離島地域の実情に沿った総合的な支援に取り組んでまいります。
(11.世界に誇る地域資源の活用)
次に、世界に誇る地域資源の活用についてであります。
隠岐ユネスコ世界ジオパークにつきましては、昨年12月に世界ジオパークとして再認定されました。これまでの地元の熱心な取組が、改めて世界に評価されたものと考えております。
引き続き、隠岐4町村等と連携し、豊かな自然環境を活用した誘客促進や、受入体制の整備等に取り組んでまいります。
(12.地域の経済的自立の促進)
次に、地域の経済的自立の促進についてであります。
豊かな自然環境や特徴ある資源を活用し、商品化につなげる「スモール・ビジネス」につきましては、専門家派遣や研修機会の提供、助成制度等の支援により、引き続き、中山間地域・離島における雇用創出や所得向上を促進してまいります。
(13.地域振興を支えるインフラの整備)
次に、地域振興を支えるインフラの整備についてであります。
(1)山陰道につきましては、来年度、「大田中央・三瓶山IC~仁摩・石見銀山IC間」の開通が予定されるなど、令和7年度にかけて37Kmが順次開通する見込みであります。
一日も早い全線開通に向け、事業中区間の早期開通や益田道路「久城~高津間」の早期着手等を、引き続き、国に働きかけてまいります。
(2)高速道路の4車線化につきましては、昨年度、安来道路の「米子西IC~安来IC間」約6.6kmが、今年度には、浜田自動車道の「大朝IC~旭IC間」26.2kmのうち約11.2kmが、それぞれ事業化されました。
関係機関と連携し、円滑な事業実施を図るとともに、引き続き、残る優先整備区間の4車線化について、早期事業化を国に求めてまいります。
(3)出雲縁結び空港につきましては、昨年5月に合意された運用時間の延長と発着便数の拡大について、令和8年度の運用開始を目途に、引き続き、空港周辺の住民の皆様に、誠意を持って対応してまいります。
また、空港の利便性の向上や誘客促進のため、「出雲~成田線」や「出雲~台湾線」等の新規路線開設に向けて、チャーター便の誘致等を進めてまいります。
(4)萩・石見空港の東京線につきましては、今春、国土交通省の外部有識者による懇談会で、これまで地元協議会等で連携して取り組んできた利用促進活動の評価を受けることとなっております。10月末以降も、2便運航の継続が認められるよう、関係機関と連携して利用促進を進め、安定した東京線2便運航に取り組んでまいります。
(5)隠岐世界ジオパーク空港につきましては、引き続き、国の有人国境離島に係る交付金を活用しながら、全国各地からのチャーター便の誘致に取り組んでまいります。
(14.新しい人の流れづくり)
次に、新しい人の流れづくりについてであります。
(1)若者の県内就職につきましては、令和元年度と比較して、昨年度は、高校生の就職率が3.5ポイント増の78.5%、県内大学生等は、8.5ポイント増の37.9%、県出身の県外大学生は、4.3ポイント増の30.9%となるなど、これまでの取組の成果が現れてきております。
今後も、若者とのつながりづくりを進めながら、企業との交流や女性が活躍している職種のPRのほか、魅力ある企業づくりへの支援を強化し、県内就職を促進してまいります。
(2)社会人のUターン・Iターンにつきましては、希望する仕事とのマッチングが重要であるため、若者や女性のニーズに応じた求人開拓に加え、西近畿や中国地方での転職フェアに出展し、20代・30代の移住を促進してまいります。
また、大阪事務所に移住企画プランナーを配置し、関西地域の移住関心層の掘り起こしを進めてまいります。
(3)関係人口の創出・拡大につきましては、都市部の方々に、島根の地域に関心を持ち、さらに深めていただくため、セミナーや地域活動体験ツアーを開催するなどして、地域活性化への貢献や将来の移住につなげてまいります。
(4)引き続き、「島根を創る人づくりプロジェクト」を推進し、県内の産業界、高等教育機関、市町村等と連携を図りながら、島根を愛し、支える若者を育て、そして、島根への定着につなげるといった、新しい人の流れづくりに向けて、全力で取り組んでまいります。
(15.女性活躍の推進)
次に、女性活躍の推進についてであります。
(1)女性の就労支援につきましては、就職相談窓口の体制を強化し、就職者数は、令和元年度は156人でしたが、今年度は先月末までで282人と、約1.8倍に増加しました。
今後も、正規職員を目指す女性のスキルアップを図るとともに、一人ひとりの希望に添った就労となるよう支援してまいります。
(2)家庭と仕事の両立支援につきましては、男性の主体的な家事・育児参加を働きかけてまいりました。
令和3年の社会生活基本調査では、県内の男性の家事・育児時間は、5年前の約2倍に増加しているものの、依然として女性に負担が偏っている状況にあるため、その解消を目指し、今後は、職場での研修の充実に向けた支援など、企業の取組を促進してまいります。
また、多様で柔軟な働き方のため、新たな休暇制度等を導入した企業を支援するなど、引き続き、女性が個性や能力を十分発揮し、職場や地域で、安心して活躍できる環境づくりを進めてまいります。
(16.保健・医療・福祉の充実)
次に、保健・医療・福祉の充実についてであります。
(1)医療と介護の連携につきましては、訪問看護の人材確保・育成、経営の安定化等を支援する拠点として、来年度、「訪問看護支援センター」を開設し、在宅医療の推進体制を強化してまいります。
さらに、介護人材の確保に向けて、人材育成や就労環境の改善に取り組む事業所を公表する制度を導入するほか、介護の専門職員が利用者のケアに特化できるよう、介護助手制度の普及に取り組んでまいります。
病気や高齢になっても、それぞれの地域で安心して生活していただけるよう、市町村や関係機関と連携し、医療と介護の体制整備に取り組んでまいります。
(2)「しまね健康寿命延伸プロジェクト」につきましては、県民自らが健康づくりに取り組めるよう環境整備を進めてまいりました。
県内7つのモデル地区では、健康実態調査の結果を踏まえ、住民が主体的に食生活の改善や運動習慣の定着に取り組まれております。PTAが呼びかけて、自発的な親子の健康づくり「生活チャレンジ」が行われるなど、学校での子どもの取組から家庭での取組に広がっております。
こうした取組を県内各地域へ広げ、引き続き、健康寿命の延伸を図ってまいります。
(3)障がい者の自立支援につきましては、障がいのある全ての方の社会参加を目指し、ICTを活用するなどして、必要な情報取得や円滑な意思疎通を実現するための環境整備や人材育成を、引き続き進めてまいります。
(17.教育の充実)
次に、教育の充実についてであります。
(1)幼稚園・保育所等の幼児教育施設と小学校の連携の推進につきましては、幼児期からの学びを小学校に円滑につなぐため、研修等の更なる充実や優良事例の全県的な展開を図ってまいります。
校種を超えて一人ひとりの子どもの学びがつながるよう、引き続き、接続期の教育の充実に取り組んでまいります。
(2)特別支援学校の通学支援につきましては、昨年度行った実態調査の結果等を踏まえ、保護者の長距離の送迎による負担を軽減するため、スクールバスを増便するとともに、保護者の朝の就業時間を確保するため、始業時間前に子どもを預かることのできる体制の整備に取り組んでまいります。
(18.スポーツ・文化芸術の振興)
次に、スポーツ・文化芸術の振興についてであります。
令和12年に開催予定の「国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会」につきましては、昨年12月に開催した準備委員会総会において、国民スポーツ大会の全競技の開催地が選定され、この結果、県内全ての市町村に、大会の開催に関わっていただくこととなりました。
今回新たに決定した大会のロゴデザイン等を活用し、大会開催の気運醸成を図るとともに、各開催地の市町村と連携し、準備を進めてまいります。
また、ジュニアの発掘・育成や指導者の確保など、競技力向上の取組を強化してまいります。
併せて、国民スポーツ大会に引き続いて行われる、全国障害者スポーツ大会についても、今後、競技会場地の選定や、大会に参加する選手の育成等を図ってまいります。
(19.生活基盤の確保)
次に、生活基盤の確保についてであります。
(1)道路整備につきましては、骨格幹線道路の改良を優先的・重点的に進めるとともに、落石対策、耐震補強、老朽化対策等を進め、県民の安全・安心や、快適な生活、産業・経済活動の基盤を整えてまいります。
(2)JRの地方路線につきましては、協議を行う場として、現在、国が関与して、沿線自治体や鉄道事業者で構成される協議会を設置する、新たな制度の創設が進められております。
この協議会が、地域の実情に配慮して運用されるよう、引き続き、国に求めるとともに、路線維持に向けた利用客増加を目指し、沿線自治体や関係団体と連携して、利用促進に積極的に取り組んでまいります。
(3)隠岐航路につきましては、隠岐地域の住民生活や産業振興にとって、必要不可欠なものであります。
こうした中、現在運航されているフェリー「しらしま」の後継船について、隠岐広域連合が建造し、運航を隠岐汽船に委託することが地元関係者で合意されたため、隠岐4町村とともに、導入に対する支援を行ってまいります。
(20.防災対策の推進)
次に、防災対策の推進についてであります。
江の川下流域の治水対策につきましては、昨年11月に、国が重点的に対策を進めるとしている15地区すべてにおいて地元合意が得られたことから、その一日も早い完成を国に働きかけるとともに、その他の地元合意が得られた地区の事業推進についても求めてまいります。
加えて、県東部地域についても、浸水対策等の加速化を図ってまいります。
(21.原発の安全・防災対策)
次に、原発の安全・防災対策についてであります。
(1)島根原発2号機につきましては、原子力規制委員会において、設計及び工事計画認可の審査、保安規定変更認可の審査が継続中であり、県としても、引き続き審査状況を注視してまいります。
(2)原子力防災対策につきましては、県内関係4市とともに作成を進めてきた、地区毎の避難先や避難ルートを地図上に示したパンフレットの各戸配布を、年度内に順次開始する予定としております。
今後も、避難計画の実効性の向上に取り組んでまいります。
(22.安全な日常生活の確保)
次に、安全な日常生活の確保についてであります。
安全で安心な消費生活の確保につきましては、いわゆる霊感商法や、法人等からの不当な寄附の勧誘等による被害の防止及び救済に係る法整備を踏まえ、国や法テラス等の関係機関と連携し、被害の防止や救済に向け、取り組んでまいります。
(23.交通安全対策)
次に、交通安全対策についてであります。
昨年の県内における交通事故の発生件数と負傷者数は、一昨年とほぼ同じ水準でしたが、死者数は増加し、死者に占める高齢者の割合は、7割を超えている状況にあります。
本年も引き続き、高齢者の交通事故防止を最重点とし、関係機関・団体等と連携し、交通安全対策を推進してまいります。
(24.県の組織体制)
次に、県の組織体制についてであります。
現在、本庁ではグループ制による組織としておりますが、来年度からグループを再編または分割して編成した、係制による組織に見直します。
係制導入により、人材育成や職員のサポート体制など組織力の強化を図り、県民の皆様からの期待に、より応えられる組織となるよう努めてまいります。
(25.若者の活躍)
次に、若者の活躍についてであります。
昨年末に、岐阜県で開催された第54回全国高等学校選抜
ホッケー大会におきまして、横田高校男子が優勝し、インターハイ、国体の優勝とあわせて、全国大会3冠を、平成20年以来14年ぶりに達成されました。
こうした島根の若者の活躍は、私ども県民に大きな感動と喜びを与えてくれるものであります。今後も、島根の若者が大いに活躍することを期待しております。
(26.竹島問題)
次に、竹島の問題についてであります。
今月22日は、「竹島の日」です。
今年も、感染症対策を講じながら、開催行事・参加人数を縮小して、18回目の記念式典を開催いたします。
県としましては、今後も、竹島問題についての国民の理解と関心が高まるよう、「竹島の日」の式典や、様々な啓発活動、調査研究等をさらに進め、国と連携しながら、竹島問題の広報啓発に取り組んでまいります。
(27.「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」の実現に向けて)
最後に、「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」の実現に向けて、総括的に申し上げます。
(1)島根県の最大の課題である人口減少に歯止めをかけるため、知事就任1年目に、多くの県民の方や市町村、団体、地域から幅広くご意見を伺い、県議会においても様々なご議論をいただきながら、「島根創生計画」を策定いたしました。
しかしながら、本格的に取り組む直前の段階で、新型コロナの感染が拡大したことから、新型コロナの対応や、また、昨今の物価高騰対策など、喫緊の課題にも対応しながら、並行して、庁内をあげて「島根創生」に取り組んでまいりました。
(2)「島根創生計画」を策定した時点で、実行を予定していたことを十分に実施できている状況にはありませんが、水田園芸の推進、原木生産の拡大、若者の県内就職、次世代たたらプロジェクト、島根大学における県内初の工学系学部の新設、子どもの医療費助成や放課後児童クラブの充実等の子育て支援、山陰道の整備や高速道路の4車線化等の社会インフラの整備など、一定の成果が着実に現れていると考えております。
(3)引き続き、新型コロナや物価高騰の状況を注視しながら、県内産業の活性化により、所得の引上げや魅力的な仕事の増加を促進して、若者の定着を促し、結婚や子育ての希望がかなえられるような環境整備を強力に進めるとともに、社会情勢やデジタル化の進展等も踏まえ、生産性の向上や将来を見据えた取組を進めてまいります。
そして、これらを実現するため、社会インフラの整備、医療・介護・福祉や教育の充実を図り、誰もが住み慣れた地域で住み続けられるような環境を整備してまいります。
(4)人口減少対策は、県民の皆様一人ひとりに、島根で暮らし、子育てをしていこうと思っていただく、こうした、人生の選択をしていただくということの積み重ねであり、地道で継続的な取組が必要であります。
(5)私は、島根の良さは、「人の顔が見え、人と人が直接ふれあう、人間らしい暮らしがあること」、「深い継続的な人のつながりを大切にし、地域の助け合いや絆があること」、「誰もが誰かに必要とされ、誰にも居場所や出番があること」、「一人ひとりの魅力や個性を伸ばし、情操豊かな子ども・若者が育つ環境があること」、「未来への希望を抱き、一生懸命チャレンジする人を応援する温かさがあること」であると考えております。
島根に残る若者、戻る若者、移ってくる若者を増やすためにも、こうした島根の良さを県内外に広くアピールし、多くの方に知っていただくことが重要であります。
(6)「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」を目指し、県議会、市町村、関係団体、県民の皆様とともに、オール島根で、その実現に向けて、全力で取り組んでまいります。
以上、県政に対する私の基本的な考えを申し述べました。
この後、提出いたしました予算案を含め諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることといたします。
何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
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