令和4年2月定例県議会知事施政方針並びに提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、当面の県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
(1.新型コロナウイルス感染症対策の状況)
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策の状況について申し上げます。
(1)県民の皆様には、感染症対策の徹底にご理解とご協力をいただいていることに、心から感謝を申し上げます。
また、治療に当たっておられる医療従事者の皆様にも、重ねて敬意と感謝を表する次第であります。
(2)国内では、第5波を大きく超えて感染が拡大し、県内でも、先月には、1か月間の新規感染者が2,500人を超えるなど、これまでにない速度で感染が急拡大しました。
このペースで療養者の増加が続くと、医療提供体制に大きな支障が生じかねない状況となったため、浜田市など4市1町内の小・中・高校について、受験・就職活動を控える生徒の進路保障や小学校低学年の過ごし方に配慮した上で、部分的な出校停止を県教育委員会と関係市町に要請し、実施していただきました。
さらに、先月24日には、政府にまん延防止等重点措置の適用を求める要請を行い、政府においては、先月27日から今月20日までを期間に、実施すべき区域として公示されました。
これを受け、措置の区域を県内全域とし、県民の皆様には、感染リスクの高い場所への外出・移動の自粛や、飲食店利用の際の感染予防の徹底等についてお願いさせていただいたほか、県外からの集客が見込まれる県立施設を休館としたところです。
(3)また、飲食店等に対して、営業時間の短縮等をお願いしており、応じていただいた飲食店等には、国の交付金を活用して協力金を支給することとし、必要な予算を今議会に提案しております。今月21日から来月22日まで申請を受け付け、速やかな支給に努めてまいります。
(4)感染の急拡大に伴い、一時、保健所の業務がひっ迫しましたが、庁内の体制を整えるとともに、市町村や医療機関等のご協力をいただきながら、保健所の体制を強化し、引き続き、積極的疫学調査の実施やPCR検査体制の確保を図り、感染拡大防止に全力で取り組んでまいります。
(5)感染者の受入体制につきましては、感染者が発生した場合には、保健所と県広域入院調整本部によるメディカルチェックを行い、中等症以上や重症化リスクがある軽症者等は優先して入院、軽症で重症化リスクのない方等は宿泊療養または自宅療養とするなど、症状や家庭環境等を基に判断し、療養先の調整を行っております。
宿泊療養施設においては、入院ベッドがひっ迫した場合には、施設内で重症化を防ぐ中和抗体薬の投与ができるよう、医療機能の強化を図ってまいります。
自宅療養につきましては、医療機関、訪問看護ステーション等の協力により、健康観察や相談対応を確実に行い、病状の変化にも対応できる体制を整えるとともに、市町村と連携して生活面の支援を行うなど、安心して療養いただける体制を整備しております。
引き続き、一般医療とコロナ対応の両立を図り、全ての感染者が、健康観察や診療、治療等の適切な対応を受けられるよう、医療提供体制の確保に取り組んでまいります。
(6)ワクチン接種につきましては、感染拡大防止及び重症化予防の観点から、市町村において、3回目の接種が進められているところです。
併せて、5歳以上11歳以下の小児に対する接種開始に向けた準備も進められております。
引き続き、市町村や関係機関等と連携し、1・2回目の接種が未完了の方も含め、希望する県民全てが早期に接種できるよう取り組んでまいります。
(7)県としましては、引き続き、県民の皆様の命と生活を守るため、国や他の都道府県、市町村、医療機関等と緊密に連携しながら、感染拡大防止と医療提供体制の確保、ワクチンの追加接種の円滑な推進とともに、県内事業者を守るため、地域経済の回復に必要な対策等に全力で取り組んでまいります。
(2.予算の概要)
それでは、提出いたしました来年度当初予算と今年度補正予算について、概要をご説明申し上げます。
(1)来年度当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策と島根創生の推進の両立を進めるとともに、健全な財政運営を図る予算として編成しており、総額は4,821億円で、今年度に対し、3.2%、151億円の増となっております。
また、11月、2月補正予算においても、新型コロナ対策や国土強靱化対策を進め、全体として切れ目ない予算としており、当初予算と11月補正予算の国土強靱化対策等の公共事業、2月補正予算をあわせますと5,206億円で、前年度比で5.3%、261億円の増となっております。
(2)新型コロナ対策につきましては、今年度実施した対策を基本に、医療提供体制の強化や感染症対策、県内経済や県民生活の回復に向けた施策、県民生活の支援に、引き続き取り組んでまいります。
(3)島根創生を推進する施策につきましては、この2年間の取組を踏まえ、島根創生を加速するために、子育てや暮らし、新しい人の流れづくりに関連する事業等を強化するとともに、脱炭素化やデジタル化など新たな課題にも対応しながら、アフターコロナを見据え、県内経済を回復させる施策を推進してまいります。
(4)なお、昨年10月の財政見通しでお示しした、来年度当初予算における財源不足につきましては、事業のスクラップ・アンド・ビルドや事業費の精査に加え、市町村振興資金特別会計の余剰金や国制度の拡充による県債の活用など、その効果が一時的な手法も用いて対応し、予算を編成したところです。
こうしたことから、将来にわたって財源不足が解消した状況ではなく、県財政は依然として厳しい状況にあると考えております。
それでは、予算に盛り込みました主要な施策について、順次、ご説明申し上げます。
(3.新型コロナウイルス感染症対策)
まず、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
(1)医療提供体制の強化につきましては、先ほども述べましたが、患者を受け入れる病床及び軽症者等の療養体制やPCR検査体制の確保、ワクチン接種の推進等に、引き続き、全力で取り組んでまいります。
(2)学校等における感染防止・学習環境の確保につきましては、引き続き、設備整備や感染症対策をサポートする人材の配置等に取り組んでまいります。
(3)県内経済や県民生活の回復に向けた施策につきましては、感染症の影響が長期に及んでいる状況を踏まえ、落ち込んでいる県内の消費喚起や、中小企業等の事業継続を図ってまいります。
(4)国の「GoToEat」につきましては、国の飲食券に県独自の特典を上乗せし、消費喚起に努めているところです。
先月21日には、農林水産省や内閣府に要望を行うなど、事業の継続を訴えてまいりましたが、来月25日をもって終了することとなったため、今後は、特典内容を見直して、県単独で特典付き食事券を発行し、引き続き、飲食店や関連事業者を支援する考えであります。
(5)宿泊事業者への支援につきましては、まん延防止等重点措置により一時停止中の、本県と隣県の県民を対象とした「再発見!あなたのしまねキャンペーン」の実施期間を、来月10日まで延長して実施することといたしました。
また、国の「新たなGoToトラベル事業」につきましては、実施が見通せない状況にありますが、今年のゴールデンウィーク以降は、都道府県による実施が予定されているため、最大限活用して、積極的な誘客策を展開してまいります。
このほか、事業者が、集客力を高めるための観光拠点等を整備する場合に、経費の支援を行うなど、コロナ収束後に観光需要を取り込めるよう、受入環境の整備を促進してまいります。
(6)加えて、県内旅行等の需要の落込みが続いていることから、来年度も、貸切バス等の運賃助成を10月末まで実施し、引き続き、需要喚起に取り組んでまいります。
(7)中小企業・小規模企業の資金繰り支援につきましては、感染症の長期化を踏まえ、県制度融資において、保証料率を大幅に引き下げた「新型コロナウイルス感染症対応枠」による新規借入の支援と、「令和2年度新型コロナウイルス感染症対応資金」の据置期間や償還期間の延長に伴う経費の支援を、継続して実施してまいります。
(8)県民生活の支援につきましては、感染症の影響により、生活等に困難や不安を抱える女性やひとり親家庭に寄り添った相談支援を実施するとともに、市町村が行う子どもの居場所づくりを支援してまいります。
(9)このほか、新型コロナ対策の調整費につきましては、ウイルスの変異により感染力が高まり、感染拡大期の感染者数が増加する傾向が続いているため、10億円から15億円に増額し、感染状況に応じた財政需要に機動的に対応してまいります。
(4.魅力ある農林水産業づくり)
次に、魅力ある農林水産業づくりについて申し上げます。
(1)農業につきましては、就業に向けた多様なニーズに対応するため、来年度、市町村との連携により、就農を予定している地域でオンラインでの授業や現地実習を可能とする、新たな研修制度を農林大学校に新設し、水田園芸や有機農業の担い手確保・育成の取組を強化することとしております。
また、米の価格低迷が続く中、安定的な農業経営に向け、収益性の高い水田園芸への転換については、国の交付金の活用に加え、県単独で作付拡大への支援を行い、生産者への支援を強化する考えであります。
(2)林業につきましては、円滑な木材流通体制の構築に向け、ICTを活用した需給情報を効率的に共有する仕組みづくりや、木材市場における仕分け機械の導入等に、関係業界と連携して取り組んでまいります。
(3)水産業につきましては、沿岸自営漁業の担い手確保・育成に向け、漁業技術の習得を目指す研修生の受入拡大や、自営漁業者の水揚げの増加につながる取組の支援など、安心して就業できる環境を整備してまいります。
(5.力強い地域産業づくり)
次に、力強い地域産業づくりについて申し上げます。
(1)ものづくり産業につきましては、感染症の長期化に加え、半導体不足や原油・原材料の高騰等により経営環境が厳しくなっているため、省力化や効率化につながる生産プロセスの変革や、専門商社等を活用した販路拡大の取組を支援するなど、企業経営の変革を促進してまいります。
石州瓦産業につきましては、ターゲットを絞った戦略的な営業活動や、新商品開発・新分野進出に向けた取組を支援してまいります。
(2)先端金属素材グローバル拠点創出事業につきましては、島根大学に設置された「次世代たたら協創センター」を拠点に、人材育成や研究の体制が整いました。来年度は国の交付金による支援期間の最終年度となることから、産学官連携の取組を一層推進し、産業の活性化や若者の県内定着につながるよう支援してまいります。
(3)また、脱炭素化に向け、自動車の電動化への対応や工場のCO2排出削減等が求められることから、市場や技術動向に関する情報提供、専門家による事業計画の策定支援、設備投資への支援等により、企業の取組を促進してまいります。
(4)IT産業につきましては、IT人材の育成・確保や収益性の高い業態への転換を支援することにより、県外市場から多くの売上げを獲得し、若年層の雇用を創出する産業となるよう、引き続き、取組を進めてまいります。
(5)産業のデジタル化につきましては、今月、「しまねソフト研究開発センター」を、しまね産業振興財団や産業技術センターが入居するテクノアークしまねに移転し、関係機関が連携して支援する体制を整えました。
さらに、今月9日には、NTTドコモと「ICTを活用した地域産業の活性化に関する協定」を締結し、県内中小企業のデジタル技術を活用した生産性向上を促進してまいります。
(6)美肌観光の推進につきましては、アフターコロナを見据え、引き続き、県内事業者の美肌コンテンツづくりを支援するとともに、感染状況を見極めながら、首都圏を中心にプロモーションを積極的に展開し、「美肌県しまね」の認知度向上と誘客促進に取り組んでまいります。
このほか、県内各地の温泉や食材、体験メニューなど、観光素材の更なる磨き上げや旅行商品づくりなどを進め、多様化する観光ニーズに対応した魅力ある観光地づくりを進めてまいります。
(7)外国人観光客の誘致につきましては、積極的な誘客プロモーションの展開が困難な状況にありますが、受入再開や回復期に備え、ターゲットとする国の情報収集や受入環境の整備等に取り組んでまいります。
(8)JR木次線につきましては、令和5年でのトロッコ列車運行終了の発表を受け、沿線市町やJRとともに設置した「木次線観光列車運行検討会」において、運行継続や新たな観光列車の導入等について、議論を進めてまいりました。
今月9日に開催された検討会において、JR西日本から代替案として提案のあった、観光列車「天地(あめつち)」の木次線への乗入れと、ラッピングなど装飾を行った普通列車の観光への活用を受け入れることとなりました。具体的な内容については、今後、地元協議会において、観光振興の方向性と併せて検討してまいります。
県としましても、引き続き、地元協議会に主体的に参画し、利用促進に向けた支援を強化してまいります。
(9)隠岐ユネスコ世界ジオパークにつきましては、感染症の影響により再認定審査が延期されておりますが、引き続き、地元4町村等と連携し、再認定に向け、ジオパークを活用した誘客促進や受入体制の整備に取り組んでまいります。
(10)中小企業・小規模企業への支援につきましては、地域の生活を支える事業の維持・発展を図るため、関係団体や市町村と連携し、経営力の強化や円滑な事業承継、県外での事業展開等を支援してまいります。
また、感染症の影響により、売上げが回復していない飲食・商業・サービス業の県内事業者を対象に、売上げの増加に向けた新たな設備投資を支援してまいります。
(11)企業立地の推進につきましては、昨年12月に、企業立地セミナーを初めてオンラインにより開催し、県内の立地環境や本県の強みをPRいたしました。今後は、参加企業に対し、県内視察の提案など、誘致の働きかけを行ってまいります。
また、首都圏を中心に成長が著しい「インターネット広告業」を、新たに立地認定の対象業種に加え、特に中山間地域で不足している事務系職場の誘致に積極的に取り組んでまいります。
(6.人材の確保・育成)
次に、人材の確保・育成について申し上げます。
県内企業等が求める人材の確保につきましては、かねてより、県内の経済界から、工学系分野の人材育成を求める声がありましたが、島根大学では金属及び材料科学分野からなる新学部を検討中であり、早ければ令和5年4月に開設予定とのことであります。
県としましても、新学部の設置に向け、県内における人材ニーズの把握や分析、経済界との協力関係の構築に向けた支援のほか、県内高校生への情報提供に協力してまいります。
(7.結婚・出産・子育てへの支援)
次に、結婚・出産・子育てへの支援について申し上げます。
(1)結婚支援につきましては、今年度実施した「結婚に関する意識調査」の結果を踏まえ、幅広い層の出会いの場の創出や民間のイベントと連携した取組など、市町村におけるマッチング体制の強化を支援してまいります。
(2)さらに、コンピューターマッチングシステム「しまコ」につきましては、来年度から、オンラインによる相談やお見合い等ができるよう機能を拡充するとともに、登録料の引下げを継続してまいります。
このほか、コーディネーターを増員するなど、しまね縁結びサポートセンターの体制を強化し、引き続き、結婚を望む独身男女の希望がかなうよう、ニーズに応じたきめ細かな支援に取り組んでまいります。
(3)妊娠・出産支援につきましては、不妊治療にかかる治療費が、来年度から、基本的には保険適用の対象となるため、県としては、保険が適用されない治療の一部について、新たに、県独自の助成制度を開始する考えであります。
加えて、「不妊専門相談センター」の相談内容や対応時間を拡充し、子どもを望む方への一層の支援に取り組んでまいります。
(4)放課後児童クラブにつきましては、待機児童の解消に向けた利用定員の拡大や、利用時間延長の対策等を進めた結果、放課後児童クラブの利用定員は、この2年間で752人増加し、利用時間を延長するクラブも増えております。
一方で、こうした受入環境の整備に伴い、これまで申請をためらっていた潜在的なニーズが顕在化し、利用希望が拡大後の利用定員を上回るため、待機児童は解消されていない状況です。
県としましては、既存の保育所等の人員や施設等を活用した受入を促進するため、新たな支援制度を創設し、更なる定員拡大など、放課後児童クラブの充実を図ってまいります。
(5)人工呼吸器による呼吸管理や、たん吸引等が日常的に必要な医療的ケア児への支援につきましては、本人や家族からの相談対応を行い、各圏域の相談体制を専門的にサポートする「医療的ケア児支援センター」を開設し、支援体制を強化してまいります。
(6)子どもの医療費助成につきましては、今年度から県の「しまね結婚・子育て市町村交付金」制度を拡充した結果、県内全ての小学6年生までの子どもが、医療費負担の軽減を受けられるようになりました。
市町村においても、それぞれの状況に応じて、10市町が制度を拡充され、今年4月には、中学生についても、松江市及び出雲市では入院を対象に、その他の市町村においては入院・通院ともに、医療費助成が行われる予定です。
今後も市町村と連携し、子育て世代の経済的負担の軽減に取り組んでまいります。
(8.中山間地域・離島の暮らしの確保)
次に、中山間地域・離島の暮らしの確保について申し上げます。
(1)中山間地域・離島における「小さな拠点づくり」につきましては、重点的に支援を行う4つの「モデル地区」において、移動販売や活動拠点の整備など、新たな取組が進められており、こうした「モデル地区」の取組のプロセスや成果を県民の皆様にお示しし、地域における課題解決に向けた取組が進むよう支援してまいります。
(2)また、特に中山間地域では、空き家の増加が課題となっていることから、新たに、民間の不動産事業者が展開していないエリアにおいて、市町村が地域の建築事業者や住民の活動組織等と連携して、空き家の流通や活用を促進する経費を支援し、地域資源としての有効活用を進めてまいります。
(3)地域の担い手を確保する「特定地域づくり事業」につきましては、新たに、知夫村の事業協同組合の事業を認定し、現在、7つの組合で職員派遣等の取組が進められています。
今後は、制度や各組合の情報など、事業を広く周知し、組合が円滑に運営されるよう支援してまいります。
(4)離島振興法につきましては、来年度末に期限を迎えることから、引き続き、隠岐4町村や関係する全国の自治体等と連携して、法の延長や制度の拡充等を、国に要望してまいります。
(9.地域の経済的自立の促進)
次に、地域の経済的自立の促進について申し上げます。
豊かな自然環境や特徴ある資源を活用し、商品化につなげる「スモール・ビジネス」につきましては、新たに、産直市がインターネットを活用して、地域産品を販売する取組等を支援することにより、中山間地域・離島における雇用創出や所得向上を図ってまいります。
(10.地域振興を支えるインフラの整備)
次に、地域振興を支えるインフラの整備について申し上げます。
(1)山陰道につきましては、ミッシングリンクを解消するため、現在事業中の区間を一日も早く開通させるとともに、未着手区間も含めた早期の全線開通に向け、国に働きかけてまいります。
(2)国道9号出雲バイパスにつきましては、慢性的な渋滞が発生し、通勤や物流、緊急車両の通行に支障が生じていることから、特に渋滞の著しい「からさで大橋」を含む区間の4車線化について、先月21日に、出雲市とともに、国土交通省及び財務省に対し、新規事業化の要望を行いました。
この他の区間も含めた早期事業化を、引き続き、国に求めてまいります。
(3)出雲縁結び空港につきましては、利便性向上のため、空港の運用時間の延長と発着便数の拡大に関し、空港周辺の住民の皆様のご理解が得られるよう、引き続き、誠意をもって取り組むとともに、国内外の路線充実に積極的に取り組んでまいります。
(4)萩・石見空港につきましては、東京線2便運航の継続に向け、地元協議会や山口県等と連携し、首都圏等からの新規需要の拡大に向けた取組の強化など、一層の利用促進に取り組んでまいります。
(11.新しい人の流れづくり)
次に、新しい人の流れづくりについて申し上げます。
(1)東京都の昨年1年間の転入超過数は、コロナ以前の令和元年と比べて9割以上減少するなど、新型コロナを契機とした地方回帰の流れは、持続していると考えられます。
こうした流れを、県内へのUターン・Iターンの増加につなげるためには、まずは島根を移住先の選択肢としていただき、そして、実際の移住につなげていくという、これまでの段階的な取組を継続する必要があります。
(2)そこで、より多くの方に島根への移住に関心を持っていただくため、首都圏など都会の若者に向けた交通広告やSNS広告で、島根の「人間らしい、温もりのある暮らし」を発信する「いいけん、島根県」プロモーションに加え、移住に際して重要となる仕事や住まいの情報発信を充実してまいります。
(3)また、島根への移住に関心を持っていただいた方に対しては、若者や女性のニーズに応じた求人の掘り起こしや、就職イベントの開催、島根県建築住宅センターと連携した住まいに関する専門的な相談支援の強化等に取り組んでまいります。
(4)さらに、県外へ進学した学生のUターン就職や、関係人口の増加に向けて、地元情報の発信やイベントの開催など、島根とのつながりを創出する市町村の取組を支援してまいります。
(5)県外へ進学した若者のUターンにつきましては、本県からの進学が多い中国地方を最重点地域として、就職アドバイザーを更に増員するなど相談体制を強化し、県内就職を促進してまいります。
また、女子学生の就職先の選択肢を広げるため、女子学生の視点に立った企業情報の提供や、文系の女子学生が活躍している職種のPR等を引き続き行ってまいります。
さらに、業務提携している株式会社マイナビとの連携により、アドバイザーを派遣するなどして、各企業に応じた採用活動の改善と魅力向上の取組を支援してまいります。
(12.女性活躍の推進)
次に、女性活躍の推進について申し上げます。
(1)女性の就労支援につきましては、新たに、正規職員を目指す方への就労体験付き講習会を実施するなど、所得向上につながる取組を強化してまいります。
(2)家庭と仕事の両立支援につきましては、家事や育児など、家庭の中で女性に偏っている負担を男性にシフトしていく必要があるため、男性や企業に向けたセミナーの開催等を通じて、男性が、家事・育児・介護を積極的に行い、家庭の中で役割を果たすことを、当然として捉える社会的気運の醸成に取り組んでまいります。
(3)また、企業や事業所における女性登用や職域拡大、子育てに優しい職場づくりの取組を支援するとともに、人材確保への効果も期待される優良事例を積極的に発信し、こうした取組が県内の企業・事業所に広がるよう取り組んでまいります。
(13.保健・医療・福祉の充実)
次に、保健・医療・福祉の充実について申し上げます。
(1)地域医療の確保につきましては、特に診療科が限られる中山間地域や離島において、患者を幅広く診察する総合診療医が必要とされております。また、在宅医療等で重要な役割を果たす専門性の高い看護師が、県内全域で求められております。
総合診療医については、島根大学医学部附属病院に設置された総合診療医センターや関係医療機関と連携し、引き続き、養成を進めてまいります。
また、看護師については、医師の判断を待たずに特定行為ができる看護師の養成に引き続き取り組むとともに、新型コロナ対策の強化や今後の新しい感染症等への対応を見据え、県内において、感染管理分野の認定看護師を養成するための準備を進めてまいります。
こうした取組により、今後も、地域医療を支えるために必要な人材を養成してまいります。
(2)「しまね健康寿命延伸プロジェクト」につきましては、各圏域のモデル地区での健康実態調査等の結果を踏まえ、「全世代の減塩」、「子育て世代・壮年期の野菜摂取」、「壮年期の運動」を3本の柱として、県が推進する「プラスワン活動」など、健康づくりの取組が県民運動として定着するよう、一層取り組んでまいります。
(3)障がい者の支援につきましては、発達障がいのある方の病院の初診における待機期間を短縮するため、事前問診等を行う臨床心理士を東部発達障害者支援センターに配置しております。来年度は、この増員を行うとともに、新たに西部のセンターにも配置し、支援体制を強化してまいります。
また、就労支援につきましては、障がい福祉事業所において一人ひとりの障がい特性にあった活動が提供されております。中でも、農業は、障がいのある方々の生活リズムを安定させたり、コロナ禍の影響を受けにくく工賃向上が見込めるため、新たに、農福連携の地域コーディネーターを配置するなどして、事業所の積極的な取組を促進してまいります。
(14.教育の充実)
次に、教育の充実について申し上げます。
(1)県立高校の生徒が、自分の進路を決めるにあたって、多様な選択肢があることを知り、関心を持って考えることができるよう、県内大学とも連携し、多様な選択肢の提示を充実してまいります。
その上で、普通高校で進めていた教員の加配に加えて、専門高校へも教員を加配し、進学や就職など、それぞれの生徒の希望がかなうよう学力の育成に努めるとともに、就職後にも生かせる知識・技術や思考力を育成するため、授業の専門性や質の向上を図ってまいります。
(2)特別支援教育につきましては、子どもたちの「働く力」を育むため、特別支援学校の生徒及び卒業生の職場見学や現場実習等にご協力いただける企業・団体を昨年9月から募集したところ、現在、60を超える企業等に登録いただいております。
今後も、新たな分野の企業等を開拓し、生徒の希望や適正に応じた就業支援を推進してまいります。
(15.スポーツ・文化芸術の振興)
次に、スポーツ・文化芸術の振興について申し上げます。
(1)令和12年度に開催予定の国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会につきましては、愛称・スローガンを募集し、県内外から4,000件を超える応募をいただきました。今後は、有識者を交えた選定作業を経て、次の準備委員会総会で決定することとしております。
引き続き、開催に向けて、競技会場の選定とともに、更なる気運醸成や競技力の向上に取り組んでまいります。
(2)県立美術館につきましては、耐震改修工事の完了後、6月1日に再オープンを予定しております。
年間を通じて、企画展の開催など優れた芸術に触れる機会を提供するとともに、故永田生慈氏及び故新庄二郎氏から寄贈いただいた、世界有数の葛飾北斎コレクションの魅力を広く情報発信し、県内外から一層の誘客を図り、県民が誇れる美術館となるよう取り組んでまいります。
(16.自然、文化・歴史の保全と活用)
次に、自然、文化・歴史の保全と活用について申し上げます。
平成27年度に日本遺産に認定された「津和野今昔~百景図を歩く~」は、今年度の審査において、認定継続となりました。
今後も、津和野今昔を含む県内7つの日本遺産を活用した観光振興や地域の活性化が進むよう支援してまいります。
(17.生活基盤の確保)
次に、生活基盤の確保について申し上げます。
(1)JR西日本は、昨年10月に続き、山陰線等を対象とした、来月12日からの運行本数の大幅な削減を発表しました。
これを受けて、JR西日本に対し、昨年12月19日に、鳥取県及び両県の市長会、町村会とともに、発表されたダイヤ改正の見直しやコロナ収束後の復便等について要望を行いました。また、先月25日には、中国地方知事会として、ローカル線の維持・存続に関する要望を行っております。
引き続き、地方における鉄道のネットワークが維持されるよう、JRや国に対して強く働きかけるとともに、県内市町村とも連携し、JRの利用促進に積極的に取り組んでまいります。
(2)デジタル化の推進につきましては、今後の県の方針等を定めた「島根県ICT総合戦略」を今年度内に策定することとしております。
各分野におけるデジタル化施策を着実に推進していくため、来年度、庁内に「デジタル戦略室」を新たに設置し、利便性の向上や情報格差の縮小など、デジタル化の恩恵が県民に広く行き渡るよう取り組んでまいります。
(18.防災対策の推進)
次に、防災対策の推進について申し上げます。
昨夏の大雨等により、県内各地で被災した公共土木施設や農地、農業用施設、林道等につきましては、災害査定を全て終え、順次、災害復旧工事を進めております。
引き続き、災害復旧に全力で取り組むとともに、国の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」予算を活用して、河川整備や土砂災害対策、道路やため池の防災対策等を推進し、安全安心な県土づくりを進めてまいります。
(19.交通安全対策)
次に、交通安全対策について申し上げます。
県内における昨年の交通事故死者数は、前年に比べ大幅に減少しました。しかしながら、発生件数と負傷者数は増加し、高齢者が関係する事故の割合は高い状況が続いていることから、引き続き、高齢者の事故防止を最重点として、関係機関・団体等と連携し、交通安全対策を推進してまいります。
(20.若者の活躍)
次に、若者の活躍について申し上げます。
平田高校3年生の福田大和選手は、昨年12月に開催された全日本ジュニア柔道体重別選手権大会男子66キロ級で優勝され、さらに、先月、ポルトガルで行われた柔道グランプリ大会へ出場し、5位入賞されました。
こうした島根の若者の活躍は、私ども県民に感動と勇気を与えてくれるものであります。今後も、大いに活躍されることを期待しています。
(21.竹島問題)
次に、竹島の問題について申し上げます。
(1)今月22日は、「竹島の日」です。
今年は、今月20日まで、まん延防止等重点措置が適用されている状況を踏まえ、昨年よりも、開催行事・参加人数を更に縮小して、17回目の記念式典を開催いたします。
今後も、竹島問題についての国民の理解と関心が高まるよう、「竹島の日」の式典や、様々な啓発活動、調査研究等を更に進めてまいります。
(2)また、国においては、竹島に関する我が国の立場・主張を、国内外に、更に積極的に情報発信されることを期待するとともに、県としても、国との連携を深め、竹島問題の広報啓発に取り組んでまいります。
(22.原発の安全・防災対策)
最後に、原発の安全・防災対策について申し上げます。
(1)島根原発2号機につきましては、昨年9月15日に原子炉設置変更が許可されて以降、県議会や安全対策協議会等の様々な機会において、政府等から安全性、再稼働の必要性、住民の避難対策について説明を受け、出席者から、再稼働の可否に関する事柄など、多くのご意見をいただきました。
11月議会では、それまでにいただいたご意見や、それらに対する県の認識を、特別委員会に報告しておりますが、今後、関係自治体や県議会のご意見を伺い、再稼働の可否について総合的に判断していく考えであります。
(2)原子力防災対策につきましては、まん延防止等重点措置が適用されている状況を踏まえ、内容を見直した上で、今月2日に原子力防災訓練を実施し、防災関係機関相互の連携確認等を行いました。
これらの結果を踏まえ、避難計画の実効性向上に向けて、引き続き取り組んでまいります。
(23.「島根創生」の実現を目指して)
おわりに、「島根創生」の実現を目指して、一言申し上げます。
来年度は、「島根創生計画」の3年目、中間年にあたります。この2年間は感染症への対応に最優先で取り組み、並行して「島根創生」を進める事業についても、実施時期や手法を工夫しながら着実に進めてきたところです。
この先、ワクチン接種や治療薬確保の進展を背景に、社会経済活動が徐々に正常化していけば、これまで事業展開に制約があった、人の往来を伴う取組等も含めて、計画の進捗を加速させてまいります。
また、新型コロナを契機として、人々の価値観は変化しつつあり、県としては、こうした状況の変化に柔軟に対応しながら、島根の暮らしの良さ、魅力を県内外の若者に伝え、Uターン・Iターン対策や島根を創る人づくりの取組等をはじめとする人口減少対策に取り組んでまいります。
今後も、県議会や県民の皆様からご意見を伺いながら、「島根創生」を総力をあげて推進してまいります。
引き続き、県政運営へのご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。
この後、提出いたしました予算案を含め諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることといたします。
何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
お問い合わせ先
政策企画監室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 島根県 政策企画監室 電話:0852-22-6063 FAX:0852-22-6034 Eメール:seisaku-kikaku@pref.shimane.lg.jp