令和3年2月定例県議会知事施政方針並びに提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、当面の県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
(1.新型コロナウイルス感染症対策の状況)
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策の状況について申し上げます。
(1)政府は、首都圏、関西圏を中心に再び感染が拡大し、医療提供体制がひっ迫する地域が生じたことから、先月、11都府県を対象に、今月7日までの緊急事態宣言を発出されました。
その後、宣言対象地域の感染者数は減少傾向となりましたが、医療提供体制が依然として厳しい状況などを踏まえ、今月2日に、栃木県を除く10都府県について、来月7日までの期間延長を決定されたところです。
(2)県内では、12月以降、断続的に新規感染者が発生しておりますが、積極的疫学調査を迅速かつ確実に実施するなど、感染拡大の防止に全力で取り組んでおり、医療提供体制は特段の支障がない状態を維持しております。
(3)感染者の受入体制につきましては、入院ベッドを県内の医療機関に約250床確保しているほか、患者の増加が見込まれる場合に備え、軽症や無症状者の宿泊療養施設を98室確保しております。さらに、8月を目途に、宿泊療養専用のプレハブ施設を80室整備することとしており、引き続き医療提供体制の維持と強化に取り組んでまいります。
(4)PCR検査体制につきましては、保健環境科学研究所での検査や島根大学医学部附属病院への委託による検査に加え、浜田保健所においても、PCR検査が実施できる準備を進めているところです。また、隠岐病院及び隠岐島前病院においても、今後PCR検査機器を導入される予定で、県では経費の支援を行うこととしており、県内全域で迅速に検査を実施できる体制整備を進めてまいります。
(5)また、政府は、ワクチン接種について、今月から医療従事者への接種を開始し、4月以降に一般県民への接種が開始できるよう目指しております。
県では、接種業務を行う市町村の支援や広域調整を行うとともに、県民からの医学的な相談に対応するコールセンターの開設や、接種後の副反応などに対する相談や診断にあたる専門的医療機関を設置することとしており、円滑なワクチン接種となるよう努めてまいります。
(6)引き続き、感染症対策に最優先で取り組み、医療提供体制や検査体制の強化、ワクチン接種の確実な実施などに万全を期してまいります。
(7)次に、経済情勢について申し上げます。
日本経済は、新型コロナの再拡大や緊急事態宣言の二度目の発令などにより、飲食業や旅館・ホテル等の宿泊業を中心に再び消費が落ち込み、大変厳しい状況にあります。
県内においても、12月以降、断続的に感染者が発生していることや、「GoToトラベル」の全国一斉停止、県民に対する感染拡大地域との往来や帰省の自粛の呼びかけなどの影響で、県民が飲食店の利用や旅行などを控えている状況であり、飲食業や宿泊業を中心に小売業や運輸業など幅広い業種で売上げの減少が生じております。
こうした影響が、長期に及んでいる状況を踏まえ、引き続き、内外の情勢や、これまで国、県、市町村等で実施した各種施策の効果をみながら、県内経済の回復に必要な対応を行ってまいります。
(2.予算の概要)
それでは、提出いたしました来年度当初予算と今年度補正予算について、概要をご説明申し上げます。
(1)来年度当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策と島根創生の推進の両立を進めるとともに、健全な財政運営を図る予算として編成しており、総額は、4,670億円で、本年度に対し、1.7%、80億円の減となっております。
また、補正予算においても、新型コロナ対策や国土強靱化対策を進め、全体として切れ目ない予算としており、当初予算と補正予算をあわせて4,944億円で、前年度比で1.3%、62億円の増となっております。
当初予算と補正予算をあわせて、次の4つを大きな柱としております。
第一は、新型コロナウイルス感染症対策
第二は、人口減少に打ち勝つための総合戦略の推進
第三は、生活を支えるサービスの充実
第四は、安全安心な県土づくり
です。
(2)このうち、今年度、最優先で取り組んでまいりました新型コロナ対策に関連する予算につきまして、引き続き必要な対策を措置するとともに、感染状況や県民のニーズ等に応じた円滑かつ柔軟な対応が可能となるよう、対策の一部を今年度の補正予算に前倒ししております。
(3)次に、人口減少に打ち勝つための総合戦略の推進に関する予算につきまして、新型コロナの影響が続く状況におきましても、人口減少という課題に対し、島根創生の施策を展開することで対応していく必要があることに変わりはありません。
このため、新型コロナの影響が続く場合においても、できるだけ着実に推進できるよう、ウェブを活用するなど、事業内容を見直しております。
また、島根創生を加速するため、子育て世帯への支援や、県内各産業の収益性の向上、島根を愛する人づくりと新しい人の流れづくりに関連する事業などを強化しております。
(4)なお、昨年9月の財政見通しでお示しした、来年度当初予算における財源不足につきましては、事業のスクラップ・アンド・ビルドや事業費の精査に加え、市町村振興資金特別会計の余剰資金や、国制度による臨時措置である県債の活用など、その効果が一時的な手法も用いて対応し、予算を編成したところです。
こうしたことから、将来にわたって財源不足が解消した状況ではなく、県財政は依然として厳しい状況にあると考えております。
それでは、予算に盛り込みました主要な施策について、順次、ご説明申し上げます。
(3.新型コロナウイルス感染症対策)
まず、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
(1)医療提供体制等の強化につきましては、先ほども述べましたが、感染症患者を受け入れる病床の確保、無症状者等の宿泊療養施設の確保、PCR検査体制の確保、ワクチン接種の相談窓口の整備などに、引き続き取り組んでまいります。
(2)学校における感染防止・学習環境の確保につきましては、設備整備や遠隔授業の環境整備などに、引き続き取り組んでまいります。
(3)県内経済や県民の生活の回復に向けた施策につきましては、落ち込んでいる消費を回復させるため、国の「GoToEat」の飲食券に、県独自で特典の上乗せを行い、需要喚起を強化してまいります。
また、「GoToトラベル」につきましては、国に対し、全国に比べ感染が落ち着いている地域限定での早期再開を求めてまいりましたが、再開の見通しは不透明な状況です。このため、昨日、鳥取県の平井知事とウェブ会談を行い、山陰両県の県民限定で「WeLove山陰キャンペーン」を実施し、山陰エリアの観光需要の喚起に、連携して取り組むことといたしました。
このほか、「美肌県しまね」キャンペーンにおいて、地酒と県産米を活用した特典付き宿泊プランを造成するなど、落ち込んだ観光需要を下支えしてまいります。
(4)中小企業・小規模企業の資金繰りにつきましては、昨年5月に「新型コロナウイルス感染症対応資金」を創設し、支援してまいりました。これまで非常に多くの利用があり、事業者の皆様には、当面の資金を確保していただきました。
この資金は、国庫補助制度を土台として、県単独制度で融資限度額を広げるものですが、国制度が年度末をもって終了するため、この資金も今年度末をもって廃止し、4月からは新たな資金を創設して、資金繰りを支援してまいります。
なお、全期間保証料不要、当初3年間無利子、保証付き既往債務の借換も可能とする現行の資金は、融資枠を拡充して3月末まで延長し、年度末の資金需要に対応してまいります。
(5)このほか、新型コロナ対策の調整費として10億円の枠予算を設定し、状況の変化に機動的かつ迅速に対応してまいります。
(4.魅力ある農林水産業づくり)
次に、魅力ある農林水産業づくりについて申し上げます。
(1)島根創生で掲げた農林水産業・農山漁村の振興につきましては、コロナ禍においても比較的堅調に進展しており、さらに力強さを増すよう新たな取組を開始いたします。
(2)農業につきましては、水田園芸や有機農業、GAP等の推進により、収益性の高い農業経営の実現を目指しております。
来年度は、コスト削減に効果のある多収穫米の導入を促進するとともに、担い手の確保・育成として、定年帰農者等の新たな担い手となる方々や、近隣の担い手による営農を支援してまいります。
(3)林業につきましては、高性能林業機械の導入や林道・林内路網の整備により、低コスト化を進めております。
この取組がさらに加速するよう、全国で試行されている様々なICT等を活用した技術について、県内での実証を本格化させ、効果的な技術の導入に取り組んでまいります。
(4)5月30日には、大田市三瓶山において、第71回全国植樹祭を開催いたします。
新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すために参加者数を抑えた上で、県の進める循環型林業を全国に発信する島根らしい大会となるよう、引き続き準備を進めてまいります。
(5)水産業につきましては、沿岸自営漁業者の確保・定着・経営発展に向けて、市町村や定置網漁業などの企業経営体との連携体制を強化するため、特に、新規就業者の育成等に意欲的に取り組む企業的な漁業経営体において、研修生の受入れが拡大するよう環境整備を進めてまいります。
(5.力強い地域産業づくり)
次に、力強い地域産業づくりについて申し上げます。
(1)ものづくり産業につきましては、新型コロナの影響が長期化し、企業の収益や営業活動にも支障が生じております。このため、サプライチェーンの再構築やデジタル技術を活用した生産性向上の取組のほか、専門商社や営業を代行する事業者などを活用した販路拡大の取組を支援し、企業経営の変革を促進してまいります。
石州瓦産業は市場の縮小傾向が続き、厳しい経営環境にあることから、ターゲットを絞った戦略的な販路拡大や、新商品開発・新分野進出に向けた取組を支援してまいります。
(2)先端金属素材グローバル拠点創出事業につきましては、島根大学において、4月に、研究開発拠点となる「次世代たたら協創センター」を、学内に開所する予定となっております。オックスフォード大学をはじめとする国内外の大学や、企業との連携による研究や人材育成の取組が加速するよう支援してまいります。
(3)IT産業につきましては、IT人材の育成・確保や付加価値の高い業態への転換を支援することにより、県外市場から多くの売上を獲得し、若年層の雇用を創出する産業となるよう、引き続き取組を進めてまいります。
また、「しまねソフト研究開発センター」の移転・機能拡充を行い、企業内の人材育成や専門家派遣による技術導入の支援を通じて、県内産業のデジタル化を進めてまいります。
(4)観光の振興につきましては、「ご縁も、美肌も、しまねから。」をキャッチフレーズに「美肌観光」の推進に取り組んでいるところです。首都圏を中心に、メディアを活用したプロモーションを積極的に展開し、「美肌県しまね」の認知度向上を図ってまいります。
また、新型コロナを契機として、需要の増加が見込まれるマイクロツーリズムや個人旅行にも対応出来るよう、県内各地の温泉や食材、体験メニューなど観光素材の更なる磨上げや、「ニッポン美肌県グランプリ」を主催している大手化粧品会社のポーラ・オルビスグループやANAグループと連携した旅行商品づくりなどを進め、魅力ある観光地づくりに取り組んでまいります。
(5)外国人観光客の誘致につきましては、新型コロナの拡大に伴う入国制限の影響等により、積極的な誘客プロモーションの展開が困難な状況にありますので、来年度の予算規模は現時点では縮小し、回復期に備えて受入環境の整備などに取り組んでまいります。
(6)隠岐ユネスコ世界ジオパークは、今年、ユネスコによる再認定審査を受ける予定です。
地元4町村などと連携し、再認定に向けて環境整備、受入体制の整備を進めながら、引き続きジオパークを活用した誘客対策を行ってまいります。
また、大山隠岐国立公園をはじめ、県内の自然公園への誘客を促進するため、新たな助成制度を設け、自然公園を活用した体験プログラムの拡充や、周遊促進などの取組を支援してまいります。
(7)「島根ふるさと館」につきましては、県産品の展示・即売と観光情報の提供を行う拠点施設として、多くの皆様にご利用いただいております。
現在は、県が所有する「島根県物産観光館」と協同組合松江名産センターが所有する「松江名産センター」の併設となっていますが、情報発信機能や販売力を強化するため、施設の管理・運営を一元化したいと考えております。
そこで、県が「松江名産センター」を買い取り、あわせて、拠点施設としての機能を強化し、施設の魅力を高めるための基本構想を策定してまいります。
(8)海外への販路拡大につきましては、4月に、ジェトロ松江及びしまね産業振興財団と共同で「しまね海外ビジネスサポートセンター」を開設いたします。センターを通じて、海外進出や貿易を指向する県内企業に対し、ワンストップサービスを提供することにより、県内企業の海外展開を支援してまいります。
(9)中小企業・小規模企業の振興につきましては、地域の生活を支える事業の維持・発展を図るため、関係団体や市町村と連携し、経営力の強化や円滑な事業承継、県外での事業展開などを支援してまいります。
(10)企業立地の推進につきましては、県内産業の高度化や魅力ある雇用機会の創出を目的として、県内企業の再投資や県外企業の新規立地を促進してまいります。
新型コロナを契機として、BCP(業務継続計画)の観点から、IT企業の開発拠点や製造業の生産拠点、本社機能の一部などを地方に移転する動きに対応するため、県内外の企業に、県内の立地環境や優遇制度を積極的にPRしてまいります。
また、全国的にテレワークを導入する企業の増加が見込まれるため、県内のレンタルオフィス等の活用を促進し、県内への誘致を強化してまいります。
(6.人材の確保・育成)
次に、人材の確保・育成について申し上げます。
(1)県内企業等が求める人材の確保につきましては、若者に県内就職を選択してもらうことが必要です。このため、高校生の県内就職を促進するためのコーディネーターを増員し、工業高校や私立高校、隠岐地域での取組を強化してまいります。
また、県内大学、高専に特化したコーディネーターを増員し、四年制拡大後最初の就職活動を迎える県立大学生等の県内就職に向けた支援を強化してまいります。
(2)さらに、大手就活サイト内への島根県ポータルページの開設、アプリを活用した学生への就職情報等の発信などにも取り組んでまいります。
(7.結婚・出産・子育てへの支援)
次に、結婚・出産・子育てへの支援について申し上げます。
(1)結婚支援につきましては、縁結びボランティア「はぴこ」の活動を支援するとともに、コンピューターによるマッチングシステム「しまコ」の登録者を増やすため、期間限定で、登録料を女性は無料、男性は現在の半額に引き下げ、結婚を望む男女の希望をかなえてまいります。
(2)妊娠・出産支援につきましては、今年度から、県独自で第2子以降の不妊治療に対する助成回数等を拡充するとともに、国に対しては、助成額の拡充や所得制限撤廃などを働きかけておりましたが、国の制度が改正され、1月以降に終了した治療を適用対象として、助成額の引上げや所得制限撤廃に加えて、回数や対象者についても拡充されることとなりました。
県としては、国の制度拡充を活用し、不妊に悩むご夫婦が安心して治療に臨めるよう支援してまいります。
(3)放課後児童クラブにつきましては、利用時間の延長や待機児童の解消対策などを進めております。今年度の利用定員数は、昨年度に比べ344人増加し、1万145人となり、また平日19時以降開所しているクラブ数も16クラブ増加し、75クラブとなっております。来年度当初予算では、新たに増設や定員の拡大を行うクラブが、あわせて利用時間の延長も行う場合には助成額を上乗せするなど、放課後児童クラブの更なる充実に取り組んでまいります。
(4)子どもの医療費助成の拡充につきましては、今年4月から県の助成対象を小学6年生までに引き上げます。これにより、県内全ての小学6年生までの子どもが、医療費負担の軽減を受けられる予定です。
(5)このほか、「こっころパスポート」のデジタル化による利便性向上、子育て環境の改善につながる住宅リフォームを行う子育て世帯への支援、産前・産後の一時的な育児・家事援助を初めて利用する場合の利用料の無料化など、安心して子どもを産み育てられる環境を整え、島根に生まれる子どもの数が増えるよう、引き続き取り組んでまいります。
(6)保育士の確保につきましては、保育士養成施設の学生に県内保育施設への就職を選択していただけるよう、修学資金の貸付枠を拡大します。今年度創設した石見・隠岐地域等の出身学生が県内の保育士養成施設に進学する場合に、家賃相当額を貸与する支援制度等とあわせ、保育士の人材確保を進めてまいります。
(8.中山間地域・離島の暮らしの確保)
次に、中山間地域・離島の暮らしの確保について申し上げます。
(1)中山間地域・離島における「小さな拠点づくり」につきましては、重点的に支援を行う「モデル地区」を4地区選定いたしました。現在、各地区では、準備段階を経て、自治会輸送の範囲拡大に向けた試験運行など、具体的な取組が始まりつつあります。
今後は、「モデル地区」の具体的な取組過程や成果を、分かりやすく県民の皆様にお示しし、課題解決に向けた取組が他の地域に広がるよう取り組んでまいります。
(2)地域の担い手を確保する「特定地域づくり事業」につきましては、昨年12月に、全国で初めて「海士町複業協同組合」の事業を県が認定し、先月から事業が開始されました。
また、浜田市の「Biz.Coop.(ビズ・コープ)はまだ」の事業についても、先月認定したところです。
このほか、安来市や津和野町等においても認定に向けた準備が進んでおり、県としても、事業が円滑に進むよう、引き続き支援してまいります。
(3)今年度末に期限を迎える「過疎地域自立促進特別措置法」につきましては、これまで、中村議長や県内の市町村長とともに、様々な機会を通じて、関係者などに地域の実態に即した新法の制定を訴えてまいりました。
現在、立法化に向けた調整が行われておりますが、本県の要望が概ね反映された法案が、今国会に提出される見込みです。
過疎対策事業債をはじめとする支援制度が十分に活用され、過疎対策が進むよう、市町村とともに取り組んでまいります。
(4)離島振興につきましては、有人国境離島法に基づく国の支援制度が拡充されたため、新たに、航空券・宿泊・観光体験をセットにした企画航空券を販売することとしております。引き続き隠岐4町村と連携し、滞在型観光の促進に取り組んでまいります。
また、隠岐諸島をはじめとする特定有人国境離島地域の課題解決のために、先月、8つの関係都道県による協議会を立ち上げました。今後、関係都道県が抱える課題の解決に向け、一体となって国等へ働きかけてまいります。
(9.地域の経済的自立の促進)
次に、地域の経済的自立の促進について申し上げます。
豊かな自然環境や特徴ある資源を活用し、商品化につなげる「スモール・ビジネス」につきましては、専門家の派遣や研修機会の提供、助成制度などの支援により、中山間地域・離島の雇用創出や所得向上を、引き続き進めてまいります。
(10.地域振興を支えるインフラの整備)
次に、地域振興を支えるインフラの整備について申し上げます。
(1)山陰道につきましては、企業誘致や市場の拡大、観光振興など「島根創生」の実現に向けた取組や、全国的な物流網を確保し国土強靭化を進める上で、早期全線開通が必要です。
昨年12月に続き、今月4日に山口県の村岡知事や中村議長と国土交通省に、8日には村岡知事と財務省に対し、県境部の「小浜~田万川間」等の来年度の新規事業化の要望を行いました。
今後も、山陰道の早期全線開通に向け、国に対し強く働きかけてまいります。
(2)また、県内の高速道路の8割が暫定2車線であるため、円滑な移動や大雪時の通行の確保など4車線化による機能強化が必要です。
今月4日には国土交通省に、8日には財務省に対し、関係の市長・町長、経済団体の代表の方々とともに、来年度の新規事業化の要望を行いました。今後も、優先整備5区間の早期事業化を国に求めてまいります。
(3)萩・石見空港につきましては、地元協議会において、ANAグループから社員を受け入れ、連携を強化することとしております。県としても、協議会などと一体となって、航空路線の維持に努めてまいります。
また、出雲縁結び空港につきましては、引き続き、利用促進に取り組むとともに、利便性の向上のため、空港の運用時間の延長と発着便数の拡大に、空港周辺の住民の皆様のご理解が得られるよう、誠意をもって取り組んでまいります。
(11.新しい人の流れづくり)
次に、新しい人の流れづくりについて申し上げます。
(1)新型コロナの感染拡大により、大都市への過度な人口集中に伴うリスクが改めて浮き彫りになり、今後、地方への回帰の流れが強まることが期待されます。
この機を捉え、県内へのUターン・Iターンの増加に繋げるためには、まずは島根を移住先の選択肢としていただき、そして、実際の移住に繋げていく段階的な取組が重要です。
(2)そこで、現在、県では「いいけん、島根県」をキャッチフレーズとして、首都圏など都会の若者をターゲットに、「人間らしい温もりのある暮らし」ができる「しまね」のイメージや、情報発信の強化に取り組んでおります。
また、県内におきましては、中学生や高校生とその親世代の方々に、島根ならではの暮らしやすさを、都会生活の厳しさと対比して分かりやすく伝えるなど、将来も島根で暮らす選択を思い描いてもらうための情報発信を強化してまいります。
(3)さらに、帰省時期にあわせたUターンのための県内イベントを新たに開催するほか、オンラインや対面を組み合わせた移住相談・イベントや、県外の方が島根でテレワークをするための支援を行ってまいります。
(4)県外へ進学・就職した若者のUターンにつきましては、昨年新型コロナを契機として、企業説明会をオンラインで開催したところ、参加者延べ数が2万5,000人を超え、対面で実施した前年に比べ30倍以上となるなど、県外の多くの若者に県内企業の情報などを届ける場として有効でありました。
そこで、今後も、このオンライン説明会について、参加企業数を増やすとともに、対面式の説明会により近づけるための機能を追加した上で継続してまいります。
また、女子学生に対しては、女性の視点に立った企業情報の提供などにより、Uターン就職を促進してまいります。
(5)こうした取組を通じて、地方への回帰の流れを、島根の人口増加に繋げていけるよう、Uターン・Iターンを推進してまいります。
(12.女性活躍の推進)
次に、女性活躍の推進について申し上げます。
(1)昨年3月に策定した「しまね女性活躍推進プラン」に基づき、女性がライフステージに応じて、職場・家庭・地域でいきいきと活躍でき、家庭と仕事のバランスのとれた充実した生活が送れるよう取組を進めてまいります。
(2)まず、家事や育児など家庭の中で女性に偏っている負担を、男性にシフトしていく必要があるため、男性が、家事や育児を積極的に行い、家庭の中で役割を果たすことを、当然として捉える社会的な理解や認識が定着するよう、新たに、男性や企業に向けたセミナーの開催などに取り組んでまいります。
また、就業を希望する女性を支援するワンストップ就職相談窓口について、ウェブによる相談を開始するなど体制を拡充してまいります。
(3)「イクボス」の取組につきましては、昨年12月に、企業・団体等の経営者・管理職等を対象とした「イクボスセミナー」を開催したほか、「イクボス」の趣旨に賛同する企業で創る「しまねイクボスネットワーク」を立ち上げ、現在、加入企業を募集しております。
職場の働き方改革に積極的に取り組み、部下がいきいきと活躍できる職場を実現する「イクボス」が、県内の企業・事業所に広がるよう取り組んでまいります。
(13.保健・医療・福祉の充実)
次に、保健・医療・福祉の充実について申し上げます。
(1)地域医療の確保につきましては、特に中山間地域や離島において、診療所の医師の高齢化や後継者不足が課題であり、地域の拠点病院が診療所を支援する役割はより一層重要になっており、患者を幅広く診察する「総合診療医」の必要性が高まっております。
県としては、県立中央病院をはじめとする「総合診療医」の養成に取り組まれている県内の病院と連携し、引き続き「総合診療医」の養成を進めてまいります。
こうした取組を通じて、大学や、医療機関、しまね地域医療支援センター、市町村などと連携しながら、地域で必要とされる医師が着実に増えていくよう取り組んでまいります。
(2)薬剤師の確保につきましては、県内の薬剤師数が全国平均を大きく下回り、薬剤師不足が深刻化しております。このため、県内の医療機関・薬局に新たに就業する薬剤師を対象として、在学中に奨学金の貸与を受けていた場合の奨学金返還を、県と事業者が共同で助成する制度を創設し、薬剤師の確保が困難な医療機関等を支援してまいります。
(3)「しまね健康寿命延伸プロジェクト」につきましては、公民館や商工団体など49団体で構成する「健康長寿しまね推進会議」とともに、減塩やウォーキング、ラジオ体操による運動などのこれまでの取組に、何かを一つプラスする「プラスワン活動」を推進し、健康寿命延伸の取組が県民運動として定着するよう取り組んでまいります。
(4)高齢者福祉につきましては、今年度策定する「第8期島根県老人福祉計画・島根県介護保険事業支援計画」に基づき、誰もが住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現のため、介護予防や認知症施策の推進、高齢者の社会参加など地域の実情に応じた取組を支援してまいります。
(5)障がい者の自立支援につきましては、今年度策定する「第6期島根県障がい福祉計画」及び「第2期島根県障がい児福祉計画」に基づき、障がいのある方が、住みたい地域で充実した生活が送れるよう、相談支援体制や就労支援などを充実・強化してまいります。
(6)ひきこもり支援につきましては、ひきこもりの状態にある方の高年齢化や、ひきこもり期間の長期化が課題です。
県では、こうした状況を踏まえ、身近な地域で専門的な支援が受けられるよう、現在、県立心と体の相談センターに設置している「ひきこもり支援センター」の機能の一部を備えた「ひきこもり支援センター地域拠点」を新たに益田市に設置し、県西部での相談体制を強化してまいります。
(7)子どもの貧困対策につきましては、今年度「島根県子どものセーフティネット推進計画」を改訂することとしております。
この見直しにより、子どもの貧困に気づき、早期支援に繋げられるよう、新たに、SNSを活用した仕組みを構築するほか、市町村と連携した子どもの居場所づくりや学習支援などに取り組んでまいります。
引き続き、経済的困窮をはじめとする様々な課題を抱える子どもとその保護者が孤立しないよう、地域全体で支える環境づくりを進めてまいります。
(14.児童虐待防止対策)
次に、児童虐待防止対策について申し上げます。
一昨年12月に安来市において発生した、児童相談所などが支援していた母子が亡くなるという痛ましい事案について、「島根県社会福祉審議会」において原因等の検証が行われ、先月、検証結果をまとめた報告書が提出されました。
報告書では、再発防止に向け、児童相談所や市町村の体制強化のほか、自死予防に関する専門的な研修の実施などの提言をいただいております。
これらの提言を踏まえ、児童相談所に児童福祉司などの専門職員を増員するとともに、全ての市町村の要保護児童対策地域協議会において、この事案を元に検討を行うなど、必要な支援体制の整備や関係職員の対応力の向上を図り、児童虐待防止の取組を強化してまいります。
(15.教育の充実)
次に、教育の充実について申し上げます。
(1)県が単独で実施している小中学校の少人数学級編制につきましては、昨年度、見直しの検討を行い方針決定をしましたが、今回示された小学校の学級編制を35人としていくという国の方針を踏まえ、短期間で学級編制基準が変動することを避けるため、小学3年から6年の学級編制基準を現行の35人のままとすることといたしました。
また、基準の見直しにあわせて行うこととしていた県単独による教員加配については、国による加配の今後の状況を踏まえながら実施することを検討いたします。
(2)島根を愛する人づくりにつきましては、島根で生まれ育つ子どもたちに、将来島根に暮らすことを考えてもらうことが重要です。
来年度には、地域住民や市町村、地元企業、大学など多様な主体が参加し、地域と高校が一体となって子どもたちを育む「高校魅力化コンソーシアム」が全ての県立高校で構築されます。
こうした取組を進める中で、県内就職や県内大学への進学を進路として考えてもらえるよう、また、大学で求められる探究心などが身につくよう、子どもたちを導く役割を管理職とともに担う主幹教諭を、順次、全ての県立普通高校に配置し、県内大学との高大連携の取組や、入試改革に適応した学力の底上げを図ってまいります。
(3)学習環境の整備につきましては、子どもたちが確かな学力を身につけられるよう、鉛筆やノートを使う従来の学習方法に加え、児童生徒一人ひとりがパソコンを使える環境を構築し、個々に応じた学習を進めてまいります。
県立高校においては、個人負担による1人1台端末の導入を令和4年度入学生から順次実施することとし、端末購入費の助成を行うとともに、個人負担による購入が困難な生徒への貸出用端末等を整備してまいります。
私立高校についても、購入が困難な生徒への貸出用端末の整備等を支援してまいります。
(4)また、専門高校等においては、デジタル化時代における地域の産業人材を育成するため、産業教育設備を整備してまいります。
(5)このほか、学校司書等により児童生徒一人ひとりに寄り添った学びのサポートを行う市町村の支援や、地域への愛着と誇りを持ち、「生きる力」を育むふるさと教育や地域課題の解決等を通じた学びに取り組んでまいります。
(6)特別支援教育につきましては、来年度から新たに盲学校に幼稚部を開設して、幼児期からの専門的な教育を実施してまいります。
また、特別支援学校高等部の生徒の就職を促進するため、職場体験受入先の開拓を進めるとともに、県立高校においても、障がいにより学習や生活上に困難を有する生徒が適切な指導を受けられるよう、拠点校に巡回指導を行う教員を配置いたします。
(7)新型コロナへの対応業務が続く中、働き方改革を進めながら教員が子どもに向き合う時間を確保するため、事務的業務を担う支援員や部活動指導員を、引き続き配置いたします。その配置にあたっては、地域の人材を活用するなど、学校と地域が一体となって、子どもたちを育む体制の強化にも取り組んでまいります。
(16.多文化共生)
次に、多文化共生について申し上げます。
(1)日本語指導が必要な児童生徒への支援を充実するため、来年度から、多様な学びが選択できる宍道高校の定時制に、日本語や日本の礼儀・マナーを学ぶ科目の新設や日本語指導員の配置を行い、日本語指導が必要な生徒を受け入れてまいります。
また、小中学校において、日本語などをきめ細かく指導する市町村を支援してまいります。
(2)さらに、出雲市などにおいて、県内での就業を希望する定住外国人が増加しているため、来年度から東部高等技術校において、就業に必要な日本語やビジネスマナー・ビジネススキルを学ぶ職業訓練コースを新設し、定住外国人の県内就業を支援してまいります。
(3)これらの取組を通じて、外国人住民と共生する地域づくりを進めてまいります。
(17.自然、文化・歴史の保全と活用)
次に、自然、文化・歴史の保全と活用について申し上げます。
世界遺産である石見銀山遺跡や、7件の日本遺産など、県内の魅力あふれる歴史文化遺産や自然について、確実な保全・継承を図るとともに、県外向けの講座開催や動画配信により認知度向上と理解促進を図り、観光振興や地域の活性化に繋げてまいります。
(18.生活基盤の確保)
次に、生活基盤の確保について申し上げます。
(1)JR木次線につきましては、人口減少や新型コロナの影響による利用者減少に歯止めをかけるため、地元協議会が実施する木次線を活用した旅行商品の造成や、団体利用の経費を助成するなど、利用促進のための支援を強化してまいります。
(2)デジタル化の推進につきましては、昨年12月に、国において「自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進計画」が策定されるなど動きが加速しており、県としても庁内に専門人材を追加して配置し、体制を強化するとともに、デジタル化に向けた県の方針などを定めた計画を策定してまいります。
(19.防災対策の推進)
次に、防災対策の推進について申し上げます。
(1)防災・減災、国土強靱化対策につきましては、これまで国に様々な機会を通じて継続を要望してまいりましたが、昨年12月11日に事業規模15兆円程度の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、初年度分の予算が令和2年度第3次補正予算に計上されました。
本県では、江の川流域の治水事業や、道路落石対策など、必要な事業が多く残っていることから、この予算を最大限活用し、県民の安全・安心を確保するための対策を強力に進めてまいります。
(2)江の川流域の治水対策につきましては、国・県・市町が連携して取り組むこととしており、特に平成30年と令和2年で二度家屋浸水が発生した地区を中心に、優先的・重点的に整備することとしております。
江の川沿川の住民の皆様が、一日も早く、安心して生活できる環境の整備に、引き続き取り組んでまいります。
(3)次に、原発の安全・防災対策について申し上げます。
島根原発2号機につきましては、原子力規制委員会において、新規制基準に適合するかどうかの審査が行われていますが、残された審査項目もわずかとなったところです。
県としては、引き続き審査状況を注視してまいります。
(4)原子力防災対策につきましては、国、島根・鳥取両県、原発の立地市及び周辺市による作業チームにおいて、万が一に備えた避難計画の実効性向上などに向け、引き続き検討を進めてまいります。
(20.交通安全対策)
次に、交通安全対策について申し上げます。
近年、県内における交通事故の発生件数や死傷者数は減少傾向にありますが、高齢者が被害者または加害者となる事故の割合が高いことから、引き続き、高齢者の交通事故防止を最重点として、関係機関や団体等との連携により交通安全対策に取り組んでまいります。
(21.若者の活躍)
次に、若者の活躍について申し上げます。
文化分野では、第26回日本管楽合奏コンテスト全国大会において、松江西高校が小編成のS部門で最高位にあたる最優秀グランプリ賞と文部科学大臣賞を受賞し、スポーツでは、第52回全国高等学校選抜ホッケー大会において、横田高校男子が3位に入賞するなど、優秀な成績を収められました。
こうした島根の若者の活躍は、私ども県民に大きな感動と喜びを与えてくれるものであり、今後も、大いに活躍されることを期待しております。
(22.国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会)
次に、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。
昨年10月に、県内各界の代表者をメンバーとする準備委員会を設立し、本格的に準備を開始いたしました。
今月3日には、天皇杯及び皇后杯の獲得と、大会後も継続する本物の競技力向上を目指し、競技力向上対策本部を立ち上げました。
また、既に開会式・閉会式は、県立浜山公園で行うことが決まっておりますが、その他の競技会場地について、現在、市町村及び関係団体と協議を進めており、できるだけ早く決定したいと考えております。
こうした取組を通じて、県全体での機運醸成を図り、県民の皆様のご理解とご協力を得ながら準備を進めてまいります。
(23.竹島問題)
次に、竹島の問題について申し上げます。
(1)今月22日は、「竹島の日」です。
今年は、感染症対策を講じながら、関係の方々にご出席いただき、16回目の記念式典を開催いたします。
県としては、今後も、竹島問題についての国民の理解と関心が高まるよう、「竹島の日」の式典や、様々な啓発活動、調査研究などをさらに進めてまいります。
(2)また、国においては、昨年10月から広島県、島根県及び沖縄県で領土・主権展示館の地方巡回展を開催され、1,400人を超える方々が訪れました。
今後も、こうした取組を通じて、竹島に関する我が国の立場・主張を、国内外に、さらに積極的に情報発信されることを期待するとともに、県としても、この問題が早期に解決されるよう、様々な機会を通じて国に働きかけてまいります。
(24.「島根創生」の実現を目指して)
おわりに、「島根創生」の実現を目指して、一言申し上げます。
人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根をつくる「島根創生」の実現を目指し、昨年3月に「島根創生計画」を策定いたしました。
今年度は、実行に移す年でありましたが、新型コロナの影響が長期間に及び、「島根創生」を進める事業についても、一部で中止や延期、縮小を余儀なくされております。
まずは、新型コロナへの対応が最優先ですが、一方で、本県が直面する人口減少の問題は待ったなしの状況であり、感染の状況を踏まえながら、「島根創生」の取組も着実に実施していく必要があります。
新型コロナを契機として、国内では大都市部から離れる人の流れが見られるなど、人々の価値観は変化しつつあり、県としては、こうした状況の変化にも臨機応変に対応しながら、Uターン・Iターン対策や島根を創る人づくりの取組などをはじめとする人口減少対策に取り組んでまいります。
今後も、県議会や県民の皆様からご意見をうかがいながら、「島根創生」を全力で推進してまいります。
引き続き、県政運営へのご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。
この後、提出しました予算案を含め諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることといたします。
何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
お問い合わせ先
政策企画監室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 島根県 政策企画監室 電話:0852-22-6063 FAX:0852-22-6034 Eメール:seisaku-kikaku@pref.shimane.lg.jp