平成29年6月定例県議会知事提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、最近の県行政の主な動きについてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(1.最近の経済情勢)
まず、日本経済の動向を見ますと、全体として緩やかな景気回復基調にありますが、米国をはじめ、欧州やアジアなど諸外国の政策展開や金融資本市場の変動などについて、留意する必要があります。
県内経済につきましては、企業の生産活動などに緩やかな持ち直しの動きが続いておりますが、今後の世界経済の変動などに注意が必要であります。
県としましては、引き続き内外の情勢をよく注視しながら、必要な対策を行ってまいります。
(2.産業振興)
さて、今年度は、5か年計画として策定しました「県版総合戦略」の中間の年となります。
人口減少に歯止めをかけて、「子育てしやすく活力ある地方の先進県しまね」を目指すためには、産業の振興により、若い人たちが安心して働ける雇用の場を増やしていくことが極めて重要であります。
(1)まず、観光につきましては、4月に「日が沈む聖地出雲〜神が創り出した地の夕日を巡る」が新たに日本遺産に認定されました。
これは、地元の皆様の長年のご努力の成果であり、これを契機として、これまでに認定された津和野の百景図や出雲國たたら風土記とともに、島根の歴史文化などの情報発信を進めてまいります。
(2)「ご縁の国しまね」プロモーションにつきましては、映画「たたら侍」が、出演者の不祥事により上映中止となっていましたが、このほど、映画の製作委員会は、映画を再編集して今週17日から上映を再開することを発表しました。
この映画を通じて、再び多くの皆様に島根の魅力を感じていただけることを期待しております。
県としましては、今後とも、EXILEの皆さんと一緒にこの映画と連携したプロモーションを積極的に進めてまいります。
(3)今年、世界遺産登録10周年となる石見銀山につきましては、大田市と連携して、来月2日に記念式典を行うこととしております。
また、石見銀山の果たした世界的な役割や価値を紹介する「石見銀山展」を来月14日から9月3日まで石見銀山資料館と古代出雲歴史博物館において同時開催をするほか、大田市などが行う様々な記念イベントなどを通じて、石見銀山の魅力を広く発信してまいります。
(4)平成32年の1月から3月に東京国立博物館において開催する予定の「出雲と大和」の歴史や文化を紹介する展覧会につきましては、その準備を進めるための実行委員会を先月設立したところであります。
平成32年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年であるとともに、日本書紀が編纂されてから1,300年を迎える年でもあります。
日本のはじまりに関わる古代文化を彩った島根・奈良の両県が協力し、国内外の多くの方々にアピールできる展覧会となるよう取り組んでまいります。
(5)JR西日本の「TWILIGHTEXPRESS瑞風」が、いよいよ今週17日から運行開始となり、沿線地域や立ち寄り先となる観光地での受入れ準備も整ったところであります。
また、来年夏に行われる「山陰デスティネーションキャンペーン」のプレキャンペーンが来月から行われ、全国の旅行会社など約700名の関係者による宣伝販売会議の開催などが予定されております。
引き続き、山陰の魅力をPRする取組みを官民一体となって進めてまいります。
(6)隠岐ユネスコ世界ジオパークにつきましては、現在、隠岐4町村などと連携し、来月行われる再認定に向けた現地審査の準備を鋭意進めているところであります。
(7)昨年、「国立公園満喫プロジェクト」に選定された大山隠岐国立公園につきましては、国内外からの利用者の拡大に向けて、快適な滞在環境の整備や、魅力ある体験プログラムの作成などを進めております。
国立公園の周辺地域を含め、島根の自然や文化・歴史を一体的に楽しんでいただけるよう、国、地元自治体、関係機関などと連携して、誘客対策に取り組んでまいります。
(8)ものづくり産業につきましては、産業技術センターの先端技術イノベーションプロジェクトにおいて、加工しやすい鉄材料の製品化や県内各地の農産品を活かした健康食品の開発などの取組みを進めております。
引き続き、新たな技術の導入による生産性向上の支援や人材の育成・確保に取り組んでまいります。
(9)県内IT産業につきましては、受注が好調な状況が続いており、引き続き、即戦力人材の確保、地域での人材育成、技術開発を支援してまいります。
また、「しまねソフト研究開発センター」をはじめ、県内試験研究機関や高等教育機関と連携して、県内産業のITを活用した競争力の強化を進めてまいります。
(10)企業誘致につきましては、昨年度は20件の立地認定を行い、認定企業の総投資額は約102億円、新規雇用計画数は約310人となり
ました。
今年度は、県内全域での企業立地に向け、中山間地域における立地認定の雇用要件を一部緩和しました。
10月に大阪で開催する立地セミナーなどを通じて、こうした支援制度に加え、企業が行う人材確保や育成に対する県の支援策を積極的
にPRし、島根への企業進出を進めてまいります。
(11)中小企業・小規模企業につきましては、経営力の強化を図りながら、地域資源を活用した商品開発や円滑な事業承継の支援、地域の生活を支える商業の機能維持・強化を図る取組みなどについて、市町村と連携して進めているところであります。
この4月からは、資金繰りなどの対策として、制度融資や立地関係資金などの貸付利率を引き下げました。
今後も、経営状況などの把握に努め、必要な支援を行ってまいります。
(12)県内企業における人材確保は、引き続き厳しい状況にあります。
このため、県内で開催する就職面接会に参加する学生を増やすための取組みの強化や、県内企業における高校生や大学生のインターンシップの促進、低学年次の学生も対象とした県内就職の魅力発信などに取り組んでまいります。
また、県内企業の魅力ある職場づくりを進めるため、経営者を対象とした働き方改革に関するセミナーの開催や、社内研修の充実に取り組む企業への支援などを行ってまいります
(3.農林水産業の振興)
次に、農林水産業の振興について申し上げます。
(1)農業につきましては、新たな担い手の確保・育成に向け、就農相談から就農後の支援まで総合的な取組みを進めてまいりました結果、昨年度の新規就農者数は173人と過去最高となりました。
今後も引き続き、担い手の確保に向けた取組みを進めてまいります。
(2)水田農業につきましては、来年から米の生産調整が見直しされることへの対応として、県や農業関係団体などで組織する島根県農業再生協議会において、地域ごとの生産数量の目安を提示するほか、売り先を確保したコメづくりや水田放牧の拡大、飼料用米の生産などの取組みを一層進めてまいります。
併せて、集落営農組織の法人化と、これらをまとめた広域連携組織の育成による生産体制づくりも推進してまいります。
(3)林業・木材産業につきましては、需要の拡大を図る一方で、作業道や高性能林業機械、質の高い製品加工ができる施設の整備等を推進してきたことにより、県内の原木生産量はこの5年間で1.7倍に伸びました。
今後も、生産現場での低コスト化や競争力の高い木材製品加工の推進などに取り組み、林業・木材産業が成長産業となるよう支援してまいります。
(4)水産業につきましては、昨年のシジミの漁獲高で、島根県が3年連続日本一となり、また、浜田漁港では、昨年の水揚げが過去5年で最高の58億円まで回復するなど、資源管理や漁獲物の鮮度向上などの取組みが成果を上げつつあります。
引き続き、漁業経営の安定化に向けた取組みを支援し、漁業・漁村の活力再生を図ってまいります。県内経済につきましても、緩やかな回復が見られるものの、このような情勢から、要注意の状況が続いております。
このため、県としましては、引き続き、内外の情勢をよく注視しながら、必要な対応を行ってまいります。
(4.子育て支援・女性の活躍推進)
次に、子育て支援と女性の活躍推進について申し上げます。
(1)子育て支援につきましては、引き続き市町村と一緒になって、計画的な待機児童の解消や病児保育事業の拡充などを進めてまいりま
す。
また、保育士の不足の解消策として、潜在保育士の職場復帰を支援するための登録制度であります「保育士バンク」を新たに設置して
保育の受け皿確保に努めるなど、若い世代が子どもを生み育てやすい環境づくりに全力を挙げてまいります。
(2)女性の活躍推進につきましては、「しまね働く女性きらめき応援会議」において、県内の女性の働き方の特性や課題の分析結果を踏
まえた目標設定と、行程表の策定を行うこととしております。
今後、これをもとに、女性の活躍がさらに進むよう官民一体となって取り組んでまいります。
(5.中山間地域・離島対策と移住・定住対策)
次に、中山間地域・離島対策と移住・定住対策について申し上げます。
(1)中山間地域・離島における「小さな拠点づくり」につきましては、市町村と連携し、住民の方々が地域の課題や将来を話し合う場を設けて、機運を高めるための取組みを行っているところであります。
こうした動きをさらに広げるためには、多くの地域で生活機能の確保、生活交通の確保、地域産業の振興につながる実践事例を作るこ
とが必要であり、話し合いが進んでいる地域が計画づくりから実践活動へ速やかに移れるよう、積極的に支援してまいります。
(2)離島対策につきましては、4月から施行された有人国境離島法に基づき、離島航路・航空路運賃の低廉化などの支援を開始しております。
県としましては、国の支援制度を十分に活用しながら、隠岐地域の交流人口の拡大や新規雇用者の増加につながるよう、隠岐4町村とともにしっかりと取り組んでまいります。
また、法律に基づく施策を実施するための「県計画」につきましては、隠岐4町村とよく話し合い、県議会をはじめ、商工団体など関係者のご意見をお聴きしながら、策定作業を進めてまいります。
(3)移住・定住対策につきましては、県内にUIターンされた方々や、UIターンの支援に携わっておられる方々の意見をもとに、より一層きめ細かな支援を行っていけるよう、市町村やふるさと島根定住財団などと連携して取り組んでまいります。
(6.社会基盤の整備)
次に、社会基盤の整備について申し上げます。
(1)山陰道につきましては、昨年12月に浜田・三隅道路の全線開通に続き、今年度は朝山・大田道路が開通する予定であります。
今後とも、残る事業中区間の早期開通に向けて着実に整備が進められるよう、沿線市とともに取り組んでまいります。
「益田・萩間」につきましては、事業化に向けた手続きを着実に進め、早期に事業着手するよう、引き続き国に強く働きかけてまいり
ます。
(2)大橋川改修につきましては、松江市内の4地区で堤防工事が着実に進められ、今年秋には、上追子川の水門工事に併せて、排水機場工事も始まる予定であります。
引き続き、国や松江市と連携して事業推進に努めてまいります。
(3)萩・石見空港の東京線につきましては、来年4月以降の2便運航の継続に向け、
(イ)首都圏等からの個人・団体客の誘客の強化に加え、
(ロ)農林水産品の販路開拓や移住体験ツアー等、政策課題への取組みによる利用促進などにより、
利用実績のさらなる拡大を目指す緊急対策を実施する考えであります。
今後も、地元協議会や航空会社と連携して、関係部局が一体となって利用促進に努め、2便運航の継続に全力で取り組んでまいりま
す。
(4)三江線につきましては、沿線住民の方々や三江線利用者のニーズを踏まえ、代替交通のルートや沿線地域の公共交通確保のための計画の策定に向け、関係者間で議論が進められております。
県としましては、廃止予定日であります来年4月1日までに、持続可能な代替交通が確保され、地域住民の方々などの移動に支障が生じないよう、引き続き沿線6市町、JR西日本、広島県などとよく協議しながら、全力で取り組んでまいります。
(7.地域医療と福祉の充実)
次に、地域医療と福祉の充実について申し上げます。
(1)今後、一層の高齢化が予測される中、高齢者の暮らしを支える地域包括ケアシステムの構築が大変重要な課題となっております。
島根県では、昨年度策定した「地域医療構想」を踏まえ、来年度からの次期「保健医療計画」と「介護保険事業支援計画」を策定する
ため、医療と介護の連携や在宅医療の推進などについて具体的な検討を進めてまいります。
県民の方々に、それぞれの地域で安心して生活していただけるよう、今後も市町村や関係機関と連携し、医療と介護の体制整備に向け
取り組んでまいります。
(2)福祉・介護人材の確保につきましては、離職者の復職を支援するコーディネーターを配置するほか、中高年齢者を対象とした介護の
入門的研修を実施するなど、より多様な人材の参入を促進します。
また、中学生・高校生に介護の仕事の意義や魅力について理解を深めてもらうため、出前講座やパンフレットの配布などを行ってまい
ります。
(8.原発の安全・防災対策)
次に、原発の安全・防災対策について申し上げます。
(1)島根原発1号機の廃止措置計画につきましては、4月19日に原子力規制委員会で認可されました。
原子力規制庁は、審査の結果の説明を、5月24日、25日の両日、県、県議会、松江市、出雲市、安来市、雲南市に対して行いました。
また、中国電力は、住民説明会を5月30日から6月1日にかけて松江市及び米子市における3会場で開催しました。
そして、県は、安全対策協議会や原子力安全顧問の意見を今月8日にお聴きしました。
最終的な了解につきましては、今後、県議会をはじめ、関係自治体などのお考えをお聴きして、総合的に判断する考えであります。
(2)2号機につきましては、原子力規制委員会で審査が継続中であり、県としても引き続き審査状況を注視しております。
(3)一昨年に発生しました低レベル放射性廃棄物に係る流量計の取扱いに関する不適切事案につきましては、原子力規制委員会は、中国電力が行う再発防止対策について、原子力規制庁の保安検査等により確認していくとされております。
(4)また、昨年12月に2号機で確認された空調換気系のダクトの腐食につきましては、原子力規制委員会では今後、中国電力が報告した原因究明及び再発防止対策の内容を厳格に確認していくとされております。
県としましては、今後も原子力規制委員会と中国電力に適切な対応を求めてまいります。
(5)次に、原発の防災対策につきましては、4月に、住民避難に必要なバスの派遣協力に関する協定を、中国5県のバス協会と締結いたしました。
引き続き、国、島根・鳥取両県、島根原発の立地市及び周辺市における作業チームにおいて、万が一に備えた避難計画の実効
性向上などに向け、検討を進めてまいります。
(9.防犯・交通安全対策)
次に、防犯・交通安全対策について申し上げます。
県内では、高齢者を中心とした還付金詐欺をはじめ、有料サイトの架空請求詐欺など、特殊詐欺被害が続発しております。
また、3月末から4月初めにかけて高齢者の道路横断中の交通死亡事故が連続して発生したことから、交通死亡事故多発警報を発令し、緊急対策を実施したところであります。
こうした犯罪被害や事故の抑制に向けて、官民一体となって対策を講じてまいります。
(10.竹島問題)
次に、竹島問題について申し上げます。
今月11日に第4期の竹島問題研究会を設置いたしました。
今後も引き続き、竹島に関する歴史的事実の調査をはじめ、日韓両国の主張の整理・検証や、次期学習指導要領の改定を踏まえた竹島に関する学習を推進するための検討などを進めることとしております。
(11.広報の強化)
これまで述べてまいりました様々な施策を強力に展開していく上で、県民の皆様にご理解とご協力をいただくこと、そしてまた広く県内外にこれらの取組みをPRしていくことは極めて重要であります。
この4月に新設をいたしました広報部を中心として広報・広聴の機能を強化して、観光面等において島根に吹いている追い風を、地域振興や産業振興など島根の発展につながる幅広い分野に波及させるよう努めてまいります。
先月、部局長で構成する「しまねの情報発信強化検討会議」を設置したところであります。これにより各部局間の一層の連携を図り、より効果的・戦略的情報発信を進めてまいります。
現在、策定作業を進めております「島根県広報広聴基本方針」につきましては、今議会におきまして、素案をお示しさせていただいて、ご意見をいただきたいと考えております。
(12.財政健全化)
平成19年に策定した財政健全化基本方針につきましては、今年、最終期となる10年目を迎えます。
この10年間の財政健全化においては、給与の特例減額、職員定員の削減による職員給与費の縮減、県債の繰上償還などによる公債費の縮減、地方交付税等財源の確保の取組みなどにより、今年度において収支均衡の目標を達成できる見込みとなりました。
こうしたこれまでの財政健全化の取組みの総括について、今議会において報告する考えでございます。
一方で、今後の経済社会情勢、そして国の財政や地方財政対策などは不透明な状況にあり、その変動に耐えうるよう、行財政改革を継続していく必要があります。
今後、議会のご意見をよくお聴きした上で、秋頃を目途に、新たな財政運営の指針を策定し、財政の安定性の確保に努める考えであります。
(13.若者の活躍)
さて、3月から4月に行われた全国高校選抜大会などにおいて、柔道競技の無差別級で開星高校の松村颯祐君が優勝し、なぎなた競技の女子個人で出雲北陵高校の石飛涼子さんが優勝したほか、多くの種目で入賞を果たしました。
また、昨年の全国高校写真選手権大会で優勝した大田高校写真部が、8月にイタリアのベネチアにおいて作品の展示を計画するなど、様々な分野で島根の高校生が活躍しております。
また先月は、プロバスケットボールチームの島根スサノオマジックが、念願の最短でのB1昇格を果たしました。
こうした若者の活躍は、我々県民に大きな喜びと感動を与えてくれるものであります。
今後も、島根の若者たちが大いに活躍することを期待しております。
(14.補正予算など提出議案)
それでは最後になりますが、今回提出いたしました一般会計補正予算案などの概要について申し上げます。
一般会計の補正予算案につきましては、萩・石見空港の利用を促進するための緊急対策のほか、国の交付金の内示等に伴い補正を要するものについて措置し、総額3億1,500万円を増額しております。
この結果、補正後の一般会計予算の規模は、5,121億円となります。
この補正予算案のほか、予算案3件、条例案9件、一般事件案11件の計24件を提出しております。
これらの議案の詳細につきましては、この後、総務部長から説明させることと致します。
何とぞ宜しくご審議のほど、お願いを申し上げまして、私からの説明を終了いたします。
お問い合わせ先
政策企画監室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 島根県 政策企画監室 電話:0852-22-6063 FAX:0852-22-6034 Eメール:seisaku-kikaku@pref.shimane.lg.jp