平成26年2月定例県議会知事施政方針並びに提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、当面の県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
(最近の経済情勢)
さて、日本経済の動向を見ますと、アベノミクスの効果などにより、引き続き、緩やかな回復基調にあります。
しかし、県内では、全体としてはまだまだ景気回復が実感できる状況にはありません。
また、4月からの消費税増税が景気に与える影響が懸念され、国は、約5兆円の経済対策を講ずることとしております。
こうした国の経済対策や県経済の動向などを踏まえて、今年度補正予算と来年度予算を編成し、今議会に提出致しました。
(予算の骨格)
まず、本年度補正予算では、国の経済対策に対応し、社会インフラ整備や防災対策等について措置し、総額で114億円を追加しております。
次に、来年度予算では、以下の3点を大きな柱として編成しております。
第一に、地域資源を活用した産業振興、第二に、医療・福祉・教育の充実、第三に、安全安心な県土づくりであります。
このほか、定住・中山間地域対策、地域交通の確保、環境対策などに、重点的に配意した予算としております。
来年度予算の総額は、5,272億円で、前年度に対し、0.7%、40億円の減少となっておりますが、歳出のうち、公債費及び融資を除いた一般歳出では、0.5%、17億円の増加となっております。
次に、主要な施策について、順次、ご説明申し上げます。
(産業振興)
まず、産業振興について申し上げます。
県内のものづくり産業を取り巻く環境は、国内市場の縮小や生産拠点の海外進出などにより、厳しい状況にあります。
このため、県内企業による新たな受注獲得のための設備投資や生産性の向上につながる取組みを支援してまいります。
さらに、東南アジアでの需要獲得に向け、来年度から、現地に支援拠点を設け、企業の進出準備や受注開拓などを支援してまいります。
また、県の産業技術センターの「先端技術イノベーションプロジェクト」につきましては、県内企業による新技術や新商品の開発を促進するよう、早期事業化に努めてまいります。
(IT産業の振興)
次に、IT産業につきましては、この5年間で売上げが約50%、県内雇用が約20%増加するなど着実に成長してきております。
この成長をさらに促進するため、自社製ソフトの開発・販売の支援、首都圏からのIT企業や人材の誘致の促進、高校生などを対象としたIT人材育成のための塾の開設などを行うこととしております。
(企業誘致)
企業誘致につきましては、今年度は、これまでに、12件の立地計画を認定し、約180名の雇用増加が見込まれております。
来年度以降も企業誘致をさらに促進するため、製造業に対しては、助成の対象となる投資規模の下限を引き下げ、IT企業に対しては、助成の対象に人材の確保・育成などを追加し、また、県西部、隠岐、中山間地域への立地には、県の助成率を加算するなど助成制度の拡充を行ってまいります。
(中小企業支援)
次に、消費税引上げに対する中小企業等への支援につきましては、専門家派遣事業や相談窓口での助言などに加えて、資金繰り円滑化のため、県の融資制度として、新たに「消費税対策資金」を創設し、この4月から取扱いを開始いたします。
また、農林水産物やその加工品、あるいは工芸品の販路拡大のため、引き続き、地産地消の推進、商談会への出展支援や島根フェアの開催などを行ってまいります。
(貿易の振興)
次に、貿易の振興につきましては、欧米やアジアなどの成長市場での取引拡大を目指し、海外からバイヤーを招いて商談会を開催するなど積極的に取り組んでまいります。
(雇用対策)
次に、雇用対策につきましては、国の経済対策による交付金を活用し、人材育成や雇用拡大に取り組んでまいります。
また、特別支援学校の生徒の就労や障がい者の雇用を促進してまいります。
(観光の振興)
次に、観光の振興について申し上げます。
昨年は、出雲大社の「大遷宮」などにより、予想をはるかに上回る多くの観光客の方々が島根を訪れました。
この勢いが継続し、さらに県内各地に及ぶよう、今年も積極的に観光誘客を行ってまいります。
このため、観光キャンペーン「ご縁の国しまね」を拡充して、映像などによるPRを増やすなど、全国に向け情報発信してまいります。
また、古代の歴史文化に関わりの深い奈良県などとも連携しながら、引き続き、「古代歴史文化賞」を実施するなど、日本の中で古代世界への興味・関心がさらに高まる取組みを行い、観光誘客にも活用してまいります。
さらに、石見神楽や縁結びゆかりの地など、県内の観光資源を活用した旅行商品づくりへの支援などを行ってまいります。
昨年、世界認定された隠岐ジオパークにつきましては、地元との連携を強化して、誘客キャンペーンの実施、周遊バスや観光ガイドの充実、遊歩道の改修などを進めてまいります。
国際観光につきましては、近年、台湾をはじめ東アジアなどからの観光客が増加してきております。
こうした地域への誘客PRや鳥取県と連携してクルーズ客船の誘致などに取り組んでまいります。
(農林水産業の振興)
次に、農林水産業の振興について申し上げます。
国は、昨年末、今後の農政改革の基本的方向を示す「農林水産業・地域の活力創造プラン」を決定しました。
この計画に基づいて、農地中間管理機構の創設、米政策の見直し、日本型直接支払制度の創設など、新たな農業・農村政策が始まります。
また、県内におきましては、来年3月にはJAの統合が予定されております。
こうした国や県内の動きを見極めながら、中山間地域を含め、県内の農家の方々が安定的に営農を続けられるよう、引き続き、JAなどとも連携し、全県一体となって農業・農村の振興に取り組んでまいります。
このため、来年度は、担い手への農地の集積・集約化の支援、農業・農村の多面的機能を支える地域活動への支援、6次産業の推進、就農促進に向けた園芸施設のリース料支援、食肉公社の施設改修、新規就農者や若手農業者等への実践的研修などに取り組んでまいります。
林業につきましては、作業道や木材加工施設の整備、木材の販路拡大、木質バイオマス利用対策などを対象とする国の事業が、来年度まで延長されることとなりました。
この事業に、原木の生産と伐採後の再植林を進める県単独事業を加えて、循環型林業の育成に努めてまいります。
また、県産木材を使用した住宅の新築・増改築等に対する助成につきましては、制度を延長することとしております。
水産業につきましては、国により、大幅な燃油対策が補正予算で措置されましたが、県としましては、引き続き、県内漁業の経営安定化や流通体制の強化に取り組んでまいります。
宍道湖のシジミにつきましては、昨年秋の調査で、資源量の大幅増加が確認されました。
引き続き、宍道湖保全再生協議会を中心に、資源回復に向けた取組みを進めてまいります。
(社会基盤整備)
次に、社会インフラ整備について申し上げます。
山陰道につきましては、「湯里・福光間」が3月15日に開通する運びとなりました。
また、来年度以降も「仁摩・湯里間」など、順次、開通が予定されており、着実に整備が進んでおります。
未着手区間の「福光・浅利間」及び「益田・萩間」につきましては、事業化が早く進むよう、引き続き、国に働きかけてまいります。
大橋川改修につきましては、来年度完成予定の天神川水門の工事や追子地区などの堤防整備が進められております。
引き続き、事業の円滑な推進に取り組んでまいります。
浜田港と山陰道を結ぶ臨港道路福井4号線につきましては、このたび、平成29年度の完成を目指して、工事が着手されることとなりました。
来島ダムの分水問題につきましては、県及び地元市町による調整会議の場におきまして、引き続き、関係の方々の意見をよくお聞きして、適切な解決を図っていく考えであります。
(災害復旧)
次に、昨年、県西部で発生した豪雨災害への対応状況について申し上げます。
道路や河川、農林関係施設につきましては、復旧工事を迅速に進めてまいります。
鉄道につきましては、三江線は本年7月中に、山口線及び山陰本線は本年秋頃に、全線で運転再開の見込みであります。
引き続き、JR西日本や山口県と連携を取り、復旧に向けて取り組んでまいります。
(航空路・離島航路の利用促進)
次に、航空路線・離島航路の利用促進について申し上げます。
まず、航空路線につきましては、この3月から、萩・石見空港の東京便の2便化が復活します。
県も、地元とともに利用促進に努めてまいります。
出雲縁結び空港につきましては、東京便の中型機の運航継続、福岡便の1便増便、そして札幌便の夏季運航が決定されております。
隠岐航路につきましては、来月から超高速船レインボージェットが就航します。
これにより、就航率の向上や運航期間の拡大など、利用客の利便性が向上し、隠岐の振興に大きな役割を果たすことが期待されます。
(中山間地域対策・定住対策)
次に、中山間地域・定住対策について申し上げます。
中山間地域対策につきましては、地域毎の「郷づくりカルテ」に基づいて実施してきております。
その中で、特産品づくりなど具体的な取組みが進む地域も出てきており、経営指導の専門家を派遣するなど、地域づくりの支援を行ってまいります。
また、来年度は、過疎債の発行枠が増額されており、過疎債も活用しながら対策を進めてまいります。
定住対策につきましては、東京と大阪に、定住アドバイザーに加え、新たに人材誘致コーディネーターを配置し、島根への定住を進めてまいります。
(地域医療と福祉の充実)
次に、地域医療と福祉の充実について申し上げます。
地域医療の確保につきましては、若手医師の県内定着に向けたキャリア形成の支援や、看護職員の復職支援などに、引き続き、取り組んでまいります。
在宅医療の推進につきましては、情報ネットワークを活用して、医療機関相互間、さらに訪問看護事業所などとの間で、患者情報の共有化を図るなど、医療と介護の連携を推進してまいります。
福祉医療費助成制度の見直しにつきましては、市町村との協議を経て、自己負担額の引下げと精神障がい者への適用拡大を今年10月から実施することとしております。
子育て支援につきましては、平成27年度から実施される国の新制度に対応して、「県子ども・子育て支援推進会議」において議論を進め、今年秋までに、市町村への支援などを盛り込んだ支援計画の大枠を策定することとしております。
少子化対策につきましては、今般の国の補正予算で、結婚から出産・子育てまで切れ目ない取組みへの予算措置がなされ、こうした予算も活用しながら進めてまいります。
次に、4月からの消費税引上げに伴う増収分につきましては、国及び地方ともに、その全額を今後の社会保障の財源とすることとされております。
県におきましても、増収分は、少子化対策や障がい者福祉、高齢者福祉などの社会保障の充実・安定化のための施策に充てることとしております。
(教育の充実)
次に、教育の充実について申し上げます。
学校教育につきましては、児童・生徒に対して、従来よりもさらにきめ細かな教育指導ができる体制づくりが教育の現場から求められており、また、県議会からも小・中学校の少人数学級の早期実施などについて要請がありました。
こうしたことを踏まえ、現在の小学校1年と2年における少人数学級編制に加え、これまで40人学級編制であった小学校3年から中学校3年までの学年を対象に、35人学級編制を導入することとし、今後3年間で計画的に実施してまいります。
併せて、小・中学校の特別支援学級や高等学校におきましても教員配置の充実に努めてまいります。
また、小・中学校における学校司書の配置が進むよう、引き続き、支援を行うとともに、学校図書館を活用した教育を推進してまいります。
いじめの問題につきましては、国の関係法令の施行を踏まえ、関係者間の連携を一層強化しながら、未然防止や早期発見、速やかな対処などの対策を推進してまいります。
また、いじめなど、生徒指導上の諸問題を調査・審議するための附属機関を教育委員会に設置することとしております。
離島・中山間地域の県立高校に対しましては、地元町村や住民の方々と連携して行う高校魅力化の取組みを、引き続き、支援してまいります。
(原発の安全・防災対策)
次に、原発の安全・防災対策について申し上げます。
島根原発2号機につきましては、本年1月から、原子力規制委員会での適合性確認審査が開始されております。
審査が終了する時期は不明でありますが、中国電力との安全協定に基づく最終的な了解につきましては、審査結果の説明を受け、それに対して県議会をはじめ、県の安全対策協議会、原子力安全顧問、関係自治体などのご意見をよくお聴きして、総合的に判断する考えに変わりありません。
次に、原発の防災対策につきましては、国、島根・鳥取両県、島根原発の立地市及び周辺市による作業チームにおきまして、万が一の場合、住民の方々が避難する仕組みづくりなどを、引き続き、進めてまいります。
また、社会福祉施設など、要援護者が一時的に避難する際の屋内退避施設への放射線防護対策につきましては、今般の国の補正予算で一定の予算措置がなされ、これを受け、県も補正予算の中で対応することとしております。
(環境保全)
次に、産業廃棄物につきましては、県環境管理センターが運営する管理型の処分場が、平成28年度中に満杯になる見込みであるため、県としましては、処分場拡充整備費の一部を助成し、環境の保全や産業の振興を図って行く考えであります。
(防犯・交通安全対策)
次に、防犯・交通安全対策につきましては、ボランティアや関係団体などと連携した県民運動や広報啓発を強化し、犯罪や事故のない安全で安心な地域づくりを推進してまいります。
(竹島問題)
次に、竹島の問題について申し上げます。
来年度の政府予算案では、新たに日本の領土・主権に関する対外発信を強化するための予算が計上されました。
政府におかれては、この予算措置により、竹島に関する調査研究や国内外への情報発信などに積極的に取り組まれることを期待しております。
来週22日は、「竹島の日」であります。
今年も、多くの関係者の方々に出席いただき、9回目の記念式典が開催されます。
県としましては、今後とも、竹島問題について、国民の理解と関心が高まるよう、この式典をはじめとし、竹島資料室での展示など、啓発活動に積極的に取り組んでまいります。
(財政健全化)
次に、県財政の健全化について申し上げます。
国の来年度の地方財政対策では、地方一般財源総額は、前年度に比べてやや増加し、地方交付税の別枠加算などについても、一定程度、維持されることとなりました。
他方、今後の県財政につきましては、消費税引上げの影響など日本経済の動向や国の地方財政対策などに大きな影響を受けるため、なお不透明な状況が続くものと予想されます。
このため、平成24年度と25年度に行ってきました経過監視の期間を、平成27年度までさらに2カ年延長し、事務事業の見直し、歳入の確保や特別職と管理職の給与の特例減額の継続など、県財政の健全化に努めてまいります。
(住みやすく活力ある島根を目指して)
さて、昨年は、出雲大社の大遷宮をはじめとし、島根の話題が全国のメディアで数多く取り上げられ、多くの方々が島根に来られるようになりました。
また、来年度には、松江尾道線が全線開通の予定であるなど、遅れていた社会インフラ整備も進んできまして、産業や観光の振興にとって不利な条件が、徐々にではありますが、改善されてきております。
こうした動きを捉え、県内各地の古き良き文化・伝統、豊かな自然など地域資源を大いに活用し、産業振興を進めながら、住みやすく活力のある島根を目指して、全力を挙げてまいります。
(直接請求に係る条例案についての知事意見)
さて、終わりに、今議会に提出いたしました議案のうち、「島根県エネルギー自立地域推進基本条例」制定の直接請求に係る議案について申し上げます。
このたび、地方自治法第74条第1項の規定に基づき、条例制定請求代表者北川泉氏、高橋泰子氏、多賀礼子氏及び中村榮治氏から、条例制定請求書の提出があり、これを2月7日に受理し、同条第3項の規定により、知事の意見を付し、本日、議案として提出したものであります。
この直接請求された条例案は、「地球環境を保全し、循環型社会を実現すること」、「原子力発電からの計画的脱却により、安全な社会を目指すこと」などを基本理念とし、地域内で供給される再生可能エネルギーの量が地域内で消費される量を上回る「エネルギー自立地域」の形成などを図ろうとするものであります。
この条例案にあります省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの導入は、県の重要な政策課題でありますが、この条例案には、いくつかの問題点がみられます。
まず、県内全体のエネルギー需給の現状を、国の都道府県別エネルギー消費統計などで見ますと、総エネルギー消費量に対して、再生可能エネルギーで賄われている割合は、2.6%とわずかであり、県内全域でエネルギーの自立を目指すとすれば、現在の約40倍の再生可能エネルギーの生産が必要となります。
こうした膨大な量の再生可能エネルギーの導入や、原子力発電からの計画的な脱却を目指すためには、国による固定価格買取制度などによる財源の確保、電力安定供給のための技術開発、発電に適した用地の確保や土地利用の規制緩和など様々な面で、国の関与や対応が必要であると考えられます。
しかし、この条例案では、こうした課題に如何に対処するのか、については明確にされておりません。
このため、この条例案で県が策定することを求められている、エネルギー自立のための「基本計画」を現実的で実効あるものとして策定し、実施することは、困難であると考えられます。
次に、条例案では、県内の市町村単位で、あるいは集落単位で「エネルギー自立地域」を実現することもあるとされていますが、その場合には、地域内に再生可能エネルギーの活用に適した用地が十分にない地域や、地域内に電力使用量の大きい事業所が多い地域などでは「エネルギー自立地域」を目指すことが困難であると考えられます。
こうした点について、市町村の意見をよく聴取する必要もあると考えられます。
このように、この条例案につきましては、いくつかの問題点がみられますので、慎重に対応することが必要であると考えます。
県としましては、省エネルギーと再生可能エネルギーの導入につきましては、今後とも、県議会や県民・事業者の方々、そして市町村などの意見をよくお聞きしながら、鋭意、調査・検討し、実施してまいりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
この条例案についての私の意見は、以上のとおりであります。
この後、提出した諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることにいたします。
何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私の説明を終了いたします。
お問い合わせ先
政策企画監室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 島根県 政策企画監室 電話:0852-22-6063 FAX:0852-22-6034 Eメール:seisaku-kikaku@pref.shimane.lg.jp