平成24年2月定例県議会知事施政方針並びに提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、当面の県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
(最近の経済情勢)
まず、日本経済の動向を見ますと、大震災の影響、円高、欧州の金融危機などにより、依然、厳しい状況にあります。県経済も同様に厳しい状況にあります。
こうした中で、政府は第3次及び第4次補正予算を編成し、震災復興に加え、全国的な防災対策の強化や経済対策の追加などの措置を講じてきております。
県は、こうした国の動きに対応し、今議会に来年度予算案に加え、防災対策と経済対策の追加を中心に総額70億円の補正予算案を提出したところであります。
(予算の骨格)
それでは、まず来年度予算案の骨格について、ご説明申し上げます。
来年度予算案では、第一に、防災対策など安全・安心な県民生活の確保、第二に、農林水産業や商工業の振興と経済対策の実施、第三に、医療・福祉と教育の充実、第四に、神話博しまねの開催など地域の魅力づくりと賑わい創出を大きな柱としております。
このほか、定住対策、離島・中山間地域対策、地域交通の確保、防犯・環境対策、地域活性化などに重点的に配意した予算としております。
来年度予算の歳出総額は、5,277億円であり、前年度当初予算に対しまして、0.9%、45億円の減となっております。
公債費を除く一般歳出では、0.1%、6億円の増と、前年度並みの規模を確保しております。
今後とも経済情勢等をよく注視しながら、機動的な経済・財政運営に努めていく考えであります。
それでは、次に、主要な施策について順次、ご説明申し上げます。
(原発の安全・防災対策)
まず、当面の県政の大きな課題であります原発の安全・防災対策について申し上げます。
国は、福島原発事故を踏まえ、各電力会社に対し、地震・津波などに対する安全対策の強化を指示し、中国電力においても、そのための工事等が進行中であります。
他方、全国各地の原発は、定期検査に伴って順次、運転停止となっております。
4月には、島根の1号・2号機を含め、全国で全ての原発が停止状態になると見られております。
これら原発の再稼働問題は、原発の安全対策の進捗状況や今後の電力需給の動向、そして、地元の意見などを、政府においてよく確認して判断することになるとされております。
県としましては、これまで他の原発立地道県と一緒になりまして、政府に対して、福島原発事故の原因分析を踏まえ、安全対策を確実に実施することや、中長期的な国全体のエネルギー政策の中で原発をどのように位置付けようとしているのかなど、政府の考えを明確に示すよう求めてきております。
島根原発の再稼働につきましては、今申し上げたような問題について、政府の対応等をよくチェックし、また、県の原子力安全顧問など専門家や島根原発周辺の自治体の意見、そして県議会をはじめ県民の方々などの意見をよくお聞きして、総合的に判断した上で、県としての方針を取りまとめていく考えであります。
さらに、島根原発に万が一の事態が生じた場合の対応は極めて大事な課題であります。現在、原発から30キロ圏内の島根・鳥取両県と周辺6市で構成する「原子力防災連絡会議」等を通じて、避難対策の枠組み作りの作業を行っているところであります。
30キロ圏内には約40万人の島根県民が住んでおられますが、万が一の場合の避難先としては、島根県内では最大で10数万人分しか確保できません。
このため、山陽各県とその市町村に対しまして、受入可能施設の提供をお願いし、その結果をもとに、避難先地域の割当案を先般、取りまとめました。
今後、30キロ圏内の周辺4市ごとに、具体的な避難場所を特定するなど、避難体制の枠組み作りに向けて更に取り組んでまいります。
また、万が一の事態が生じた場合の初動体制を迅速かつ的確に立ち上げるため、島根・鳥取両県と周辺6市共同で原子力防災訓練を先般、実施したところであります。今後もこうした訓練を行ってまいります。
さらに、30キロ圏域を中心に、モニタリングポストの増設など放射線監視体制の強化や、緊急時通信網や防災資機材の整備拡充を図ることとしております。
(自然災害対策)
次に、県内の津波対策につきましては、県の地震被害想定調査検討委員会におきまして、佐渡島北方沖などで地震が発生した場合に県内各地域ごとに予想される津波の高さと津波の浸入の規模を順次、公表しております。
これに基づき、市町村とともに住民避難の仕方・訓練など対策の強化を図ってまいります。
(防災対策と地方税の引上げ)
国は、昨年末の臨時国会で、今般の大災害を踏まえ、全国的に防災対策を強化することとし、そのための国と地方の財源を措置する法案を成立させました。
国の財源については、まず、復興債で手当し、後年度に復興特別法人税や復興特別所得税などにより債務償還を行う仕組みとされました。
地方の財源については、まず、地方債で手当し、その債務償還について、地方税法の改正により、平成26年6月から10年間、個人の住民税均等割の標準税率を、都道府県・市町村それぞれ年額500円加算して賄う仕組みとされました。
県におきましては、この国の立法措置に伴い、県税条例改正案を今議会に提出致しております。
(観光の振興)
さて、次に、観光の振興について申し上げます。
今年は、「神々の国しまね」プロジェクトが、本格的に実施される年であります。
「神話博しまね」を、学校の夏休みが始まる7月21日から11月11日までの間、古代出雲歴史博物館前の特設会場において開催すべく準備作業中であります。
この期間中には、県内各地で、例えば、万葉フェスティバルや隠岐ジオパークフェスティバルなど様々な催しを開催したり、周遊バスなどを充実させて、観光客の方々が県内各地を訪れていただくよう取り組んでおります。
さらに、7月から11月にかけて、京都と東京の国立博物館において、荒神谷や加茂岩倉の銅剣、銅矛、銅鐸などを展示した展覧会やシンポジウムを開催することとしております。
また、この1月初めには、谷村新司さんに作成を依頼した公式メッセージソングが完成し、3月には、水木しげるさんの「古代出雲王朝」を描いた漫画が発刊されることになりました。
こうしたPR活動により、島根への関心を更に高めてまいります。
次に、今年7月には石見銀山は、世界遺産に登録されてから5周年を迎えます。全国から大勢の方々にお出でいただくよう、大田市と連携して記念事業を開催することとしております。
また、隠岐ジオパークにつきましては、今年秋に予定されています世界認定に向けて、地元と一緒になって、案内標識や展望施設の整備などを進め、隠岐への誘客に努めてまいります。
鳥取県では「神話博しまね」と並行して「国際まんが博」が開催され、また、10月からは、JRの山陰デスティネーション・キャンペーンもスタートします。島根・鳥取両県で連携して、山陰の魅力を全国にアピールしてまいります。
(産業の振興)
次に、産業の振興について申し上げます。
県内企業の中には、新分野への進出や新技術の導入など、新たな挑戦を計画しておられる企業がかなりあります。こうした動きに対し、試作品開発の助成や新規投資ファンドの創設などにより支援してまいります。
また、企業の資金繰り支援のため、県の制度融資による借入金の返済期限を、4月から1年間延長ができるよう措置しております。
さらに、県内に集積する特殊鋼や石州瓦産業など、地域経済を牽引する産業に対して、競争力強化のための支援を行ってまいります。
また、県産木材や石州瓦を使用した住宅の新築・リフォーム、住宅のバリアフリー化改修及び耐震化工事に対する県の助成につきましては、2年間、制度を延長することとしております。
情報関連産業につきましては、従業者数・売上高とも着実に伸びてきており、立地認定企業数も、過去5年間で16社になっております。
こうした情報関連産業への支援を引き続き行ってまいります。
企業誘致につきましては、今年度は、厳しい経済情勢の中、16件の立地計画を認定しました。これにより約300名の雇用増加が見込まれております。
今後も、企業誘致に積極的に取り組んでまいります。
次に、県産品の海外での販路拡大につきましては、アジアの新興国などの成長市場を視野に入れて取り組んでまいります。
また、浜田港を利用した対ロシア貿易の促進につきましては、コンテナや中古車の輸出促進や、ビジネス支援体制の強化などに努めてまいります。
(雇用対策)
次に、雇用対策につきましては、国の第3次補正予算で追加された交付金も活用し、来年度も引き続き雇用の創出に積極的に取り組んでまいります。
(農林水産業の振興)
次に、農林水産業の振興について申し上げます。
県では、「新たな農林水産業・農山漁村活性化計画」における次期の戦略プランを今後4年間の計画として、今年度中に取りまとめることとしております。
そうした中で、農業の担い手育成のため、県独自の対策として、研修や雇用の受け皿づくり、就農後の地域ぐるみの支援などを強化してまいります。
これに加え、国が来年度創設する青年就農給付金などの事業も活用して、新規就農の促進に積極的に取り組んでまいります。
また、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)につきましては、国に対して、慎重に対応すべきであることや農業に十分な配慮をすることなどを、引き続き、強く求めてまいります。
次に、林業について申し上げます。
間伐促進や林業機械導入など、国による林業再生事業が来年度以降も延長されることとなりました。
この国の事業に県単独事業も加えまして、利用期を迎えた森林からの原木の伐採、木材加工体制の整備、県外への販路拡大、そして伐採後の再造林などを通じて、循環型林業の育成に努めてまいります。
次に、水産業につきましては、県内漁業の経営安定対策の取組みが急務となっております。
浜田地域の沖合底びき網漁業におきましては、漁船の老朽化等により存続が危惧される中で、漁船の長寿命化など、構造改革の取組みが関係者により始まろうとしております。
県はこの取組みに対しまして、国の助成事業も活用し、浜田市と協力して支援してまいります。
(社会基盤整備)
次に、社会インフラ整備について申し上げます。
高速道路などの整備につきましては、国をはじめ関係機関等のご尽力により、このところ一定の進展が見られます。
まず、松江・尾道間の高速道路は、この3月24日に三刀屋木次インターチェンジから吉田掛合インターチェンジまでが開通する予定であります。
そして、来年度には三次までが開通し、平成26年度には尾道まで全線が開通する見込みであります。
松江第五大橋道路「松江だんだん道路」は、来年春に全線開通の予定であります。来月24日には、西尾インターチェンジから松江ジャンクションまでの供用を開始する予定であります。
山陰道につきましては、年末の国の予算編成において、来年度から、湖陵・多伎間、大田・静間間、三隅・益田間の事業が着手されることとなりました。
残る未着手区間の温泉津・江津間、益田・萩間の早期の事業化を含め、山陰道全体の整備促進を国に対して、引き続き、強く働きかけてまいります。
斐伊川・神戸川治水事業につきましては、中流部の斐伊川放水路が来年度中に完成の見込みであります。これに関連し、出雲市内の内水対策を着実に進めてまいります。
下流部の大橋川改修は、1月から追子地区において、築堤工事が本格的に動き出しました。
これらの治水事業が速やかに進められるよう、取り組んでまいります。
浜田港につきましては、昨年、日本海側拠点港に選定されました。今後、臨港道路などの整備が進むよう、引き続き国に働きかけてまいります。
次に、航空路線の利用促進について申し上げます。
萩・石見空港では、現在運休中の大阪便が、昨年に続き、今年も7月と8月に期間運航され、出雲縁結び空港では、東京便の中型機での運航が継続され、また、隠岐空港では、大阪便の夏季ジェット機の運航が継続されることとなりました。
今後もこれら3空港の利便性向上のため、地元とともに観光振興など利用促進に取り組んでまいります。
次に、隠岐の島前3町村を結ぶ内航船につきましては、3町村において老朽化した現在の「いそかぜ2」に代わる船を、来年度建造することとされております。県としましても必要な支援を行ってまいります。
(離島・中山間地域対策等)
次に、中山間地域対策につきましては、地域の活力が維持されるよう、平成24年度から4年間の中山間地域活性化計画を今年度中に策定すべく作業中であります。
そうした中で、市町村が公民館等の単位で地域運営の仕組みづくりや地域課題の解決を図るために、ソフト事業の過疎債を活用して行う取組みに対して支援することとしております。
次に、定住対策では、市町村などと連携して、UIターンの最初の相談から定住後の支援まできめ細かく一貫した受入れ支援が行えるよう、体制を強化してまいります。
そうした中で、県外から島根への定住を希望する方々に対して、島根の魅力がよく伝わるよう、県内に既にUIターンされた方々の実体験等の情報を発信するなどの取組みを行ってまいります。
平成24年度末に期限切れとなる離島振興法につきましては、国において検討が進められておりますが、その拡充・延長について、隠岐の町村等と協力して、国に引き続き要望してまいります。
(地域医療と福祉の充実)
次に、地域医療と福祉の充実について申し上げます。
県内で地域医療を担っていただける医師が増えるよう、医学生向けの奨学金を活用したり、昨年設置しました「地域医療支援センター」において、若手医師のキャリア形成を積極的に支援してまいります。
また、昨年6月に運航を開始したドクターヘリは、救急医療等で大きな役割を果たしております。
さらに、ITを活用して、病院間や病院と診療所の間で医療情報のネットワークシステムを構築し、医療機関相互の連携強化を図ってまいります。
看護職員の人材の確保に関連し、高度化・専門化する医療に対応できる人材を育成するため、県立大学に4年制の看護学部をこの4月1日から開設することとなっております。
高齢者福祉につきましては、医療や介護など必要なサービスが、切れ目なく提供されるようなシステムの構築を支援してまいります。
障がい福祉におきましては、子どもの心の問題に対応するため、「こころの医療センター」を核として、各圏域において、保健、医療、福祉、教育の各分野の連携により支援してまいります。
子ども・子育て支援につきましては、保育サービスの充実、地域ニーズに対応した子育て支援、独身男女の縁結びの支援などを行ってまいります。
(教育の充実)
次に、教育の充実について申し上げます。
子どもの読書活動の推進につきましては、引き続き、小・中学校や高等学校への学校司書の配置などに取り組んでまいります。
また、子どもの体力向上のため、学校での体育活動を充実してまいります。さらに、全国で活躍できる選手の育成を目指し、特にジュニア選手の強化に取り組んでまいります。
特別支援教育につきましては、対象児童生徒数の増加に対応した校舎の増設確保や、肢体不自由・病弱などの児童生徒に対応した施設整備を進めてまいります。
また、小学校における発達障がい等の児童の支援を行う教員の配置などに取り組んでまいります。
浜田高等学校の定時制課程につきましては、今年4月、昼間部を開設するとともに、通信制課程を新設することとしております。
これにより、県西部の定時制・通信制教育の充実を図ってまいります。
(文化芸術の振興)
文化芸術の振興につきましては、昨年11月議会で制定された文化芸術振興条例を踏まえ、島根の文化芸術の振興、人材の育成などに取り組んでまいります。
(再生可能エネルギーの利活用)
再生可能エネルギーにつきましては、多様なエネルギー源の確保や地域経済の活性化などの観点から、その利活用を進めてまいります。
特に、市町村などと連携して、県内に豊富に存在する小水力や木質バイオマスなど地域資源の利活用や住宅用太陽光発電の導入促進などに取り組んでまいります。
(防犯対策)
次に、防犯対策につきましては、高齢者や子ども、女性が被害者となる犯罪や事故の防止に向けて、「子ども・女性みまもり運動」など、県民総ぐるみの活動を推進してまいります。
(竹島問題)
次に、竹島問題につきましては、昨年来、韓国は竹島占拠の既成事実化の動きを強めておりますが、こうした動きは容認できません。
県としましては、議会とともに政府に対し、竹島問題の早期解決が図られるよう、粘り強く外交交渉を行うことを強く求めてまいります。
(地方分権改革)
次に、地方分権改革について申し上げます。
政府は、国の出先機関を広域連合に移譲するため、関係法案を今国会に提出することを目指しております。
このため、中国5県の知事会においても、受け皿としての広域連合の検討を始めたところであります。
今後、県議会の意見もお聞きしながら、県としての対応方針を検討してまいります。
(財政の健全化)
次に、県財政の健全化につきましては、これまで事務事業の見直し、歳入確保、給与の特例減額などにより、当初の「基本方針」に沿って改善が進んできております。
こうした中で、職員給与につきましては、人事委員会の勧告と今後の財政見通し等を踏まえ、来年度以降地域給を導入することと合わせ、特例減額を本年度で終了することと致しました。
今後は、当面、平成24年度と25年度を経過監視期間として、事務事業の見直し、事務の簡素合理化による定員削減、歳入の確保等を進め、更なる健全化に努めてまいります。
また、経過監視期間中、管理職職員の管理職手当及び特別職の給与につきましては、一定の特例減額を継続することとし、そのための条例改正案を提出致しております。
(島根総合発展計画)
次に、「島根総合発展計画」につきましては、最初の4年間の実施計画が今年度末に終了し、来年度から4年間の実施計画のあり方について、総合開発審議会で審議していただいております。
県議会での議論をはじめ、パブリックコメントや広聴会など広く県民の方々からいただいたご意見を踏まえ、今年度中に審議会から計画案の答申をいただき、県として実施計画を最終決定したいと考えております。
(住みやすく活力ある島根を目指して)
さて、終わりになりますが、県内外で厳しい状況が続く中、将棋の里見香奈さん、テニスの錦織圭さんなど、文化やスポーツの分野で島根の若者の活躍が我々県民に大きな喜びを与えてくれております。
私は、こうした元気な若者の活力に加え、年配者世代の豊かな経験、そして、粘り強い県民性など、島根の持つ力が十分に発揮され、「住みやすく活力ある島根」が築かれるよう、今後も全力で取り組んでまいりますので、宜しくお願い申し上げます。
この後、予算案を含め諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることに致します。
何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私の説明を終了致します。
お問い合わせ先
政策企画監室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 島根県 政策企画監室 電話:0852-22-6063 FAX:0852-22-6034 Eメール:seisaku-kikaku@pref.shimane.lg.jp