平成23年9月定例県議会知事提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(最近の経済・政治情勢)
まず、日本経済の動向を見ますと、東日本大震災の影響や急激な円高などにより引き続き厳しい状況にあります。
また、県経済につきましては、弱い動きが続くなか、生産活動などで若干の持ち直しがみられますが、雇用情勢は、依然として厳しい状況にあります。
国政におきましては、民主党代表に選出された野田佳彦氏が、8月30日内閣総理大臣に就任され、新しい内閣が発足しました。
震災からの復興、原発の安全対策、円高・経済対策など、喫緊の課題が山積しております。
また、中長期的な取組みを要する大事な課題として、国のエネルギー政策の確立、税と社会保障の問題などがあります。
新体制の下で、問題解決に向けて全力をあげて対応されることを強く期待しております。
こうした経済・政治情勢でありますので、内外の景気動向、国の動きなどをよく注視しながら、適切かつ機動的な経済・財政運営に努めていく考えであります。
(東日本大震災からの再生)
さて、大震災から半年が経ちました。政府は復旧・復興を進めておりますが、被災地の方々には不自由な生活が続いております。また、福島原発の事故はまだ収束に至っておりません。
県としましては、警察官を含め県職員の派遣などの被災地支援を引き続き行ってまいります。
今回の大震災では、非常に広い地域にわたって、かつてないような大きな被害が生じました。と同時に、東京など大都市部に経済活動などが過度に集中しているため、そこで起こる混乱が日本全体に大きな影響を与えるという日本の経済・社会の脆弱性が浮き彫りになりました。
私は、新たな国づくりとして、地方への人口や経済活動などの分散を進め、日本全体として大災害に強く、自然が豊かで誰もが住みやすい社会の実現を目指していくべきだと考えております。
(県産農林水産物の安全・安心の確保)
さて、福島原発の事故の影響は、遠く島根の農業にまで及んできました。肉用牛に与えられた宮城県産の稲わらから、国の基準値を超える放射性セシウムが検出されました。
県としましては、国やJAなどとよく相談しまして、県産牛肉の安全性に万全を期し、風評被害を防止するため、県内の食肉処理場で解体されるすべての肉用牛について放射能検査を行う、いわゆる「全頭検査」によって安全性を確認した上で、出荷する措置を取ったところであります。
また、県外に出荷される肉用牛につきましては、全頭検査の体制が整った県外市場において生産者が負担する検査費用の全額を補助することとしたところであります。
なお、これまでに検査を終えた牛肉の大部分からは放射性セシウムは検出されず、検出されたものも国の基準値を大きく下回っており、島根県産の牛肉の安全性は確保されております。
さらに、肉用牛の価格下落などの風評被害による損害は、原発事故賠償の対象となるものでありますが、損害を受けた畜産農家の当面の経営安定に必要なつなぎ資金を融資するため、肉用牛経営緊急対策資金制度を創設したところであります。
また、収穫の最盛期を迎えている県産米につきましても、安全・安心を確保する観点から、JAなどと共同で、収穫前の玄米と稲わらについて、放射能調査を行っているところであります。
この調査は、旧市町村ごとに実施するものでありますが、これまでに調査を終えた箇所からは、放射性セシウムは一切検出されておりません。
県は国に対しまして、全国的に統一した牛の全頭検査の仕組みや汚染稲わらなどの処分方法を早く確立することなどを求めておりますが、今後も、県産農林水産物の安全・安心を確保するため、必要な対策を機動的にとってまいります。
(原子力安全・防災対策)
次に、島根原発の安全対策と防災対策について申し上げます。
国は、原子力発電所の脆弱性をチェックするため、各電力会社に対して、いわゆるストレス・テストの実施を指示しております。
中国電力は国の指示を受け、島根原発において様々な安全対策を実施、または計画をしておりますが、県としましては、計画された対策の早期実施や一層の安全対策を国及び中国電力に対して求めております。
また、原発の防災対策に的確に対処するため、県の全庁を挙げた取組みとして6月に「防災対策本部会議」を設置し、さらに、8月に「原子力安全担当参事」と「原子力安全対策課」を設置し、組織の強化を行っております。
さらに、鳥取県を含め原発周辺の市町と協議しながら、原発防災対策を広域的に強化するための準備作業を進めているところであります。
(自然災害対策)
次に、東日本大震災を踏まえた津波対策の強化につきましては、県の地震被害想定調査検討委員会において、大規模な地震に伴う津波を想定して、県内各地域ごとに津波浸入の規模を推計する作業に着手しております。
今後この結果に基づき、市町村とともに住民の避難の仕方など対策の強化を図ってまいります。
(観光の振興)
次に、観光の振興について申し上げます。
「神々の国しまね」プロジェクトのシンボルとなる事業として、神話の博覧会、「神話博しまね」を来年度開催することとし、7月にその概要を公表しました。
この「神話博」は、主会場となる出雲大社周辺で、来年、学校がほぼ夏休みに入る7月21日から神在月の始まる11月11日までの114日間開催することとしております。
横15メートル、縦3メートルの大型スクリーンの映像による神話の世界の紹介や神楽などの伝統芸能の上演、古代出雲歴史博物館での展示などを通じまして、古事記などに記された神話の持つ魅力を、いろいろな角度から実感していただくような計画としております。
また、主会場から県内各地を訪ね歩いていただくため、周遊バスなどを運行するほか、各地の観光コースを充実させ、島根の歴史や文化の魅力を各所で楽しんでいただけるよう努めてまいります。
現在、市町村や民間団体と一緒になりまして、また、県民の方々の参画を得ながら、語り部や観光ガイドの育成に取り組んでおります。
また来年度は、万葉フェスティバルや隠岐ジオパークフェスティバルなどといった各地の魅力を伝える様々な催しの開催などを積極的に進めてまいります。
さらに、「神話博しまね」などの情報を、全国から旅行会社等を招いて10月に開催する全国宣伝販売促進会議や、11月に東京と大阪で開催する観光情報説明会、あるいはテレビ、旅行雑誌などのメディアを通じまして幅広くアピールしてまいります。
(企業誘致)
次に、企業誘致につきましては、今年度は4月以降、8件の立地計画を認定し、これにより約150人の雇用が見込まれております。
また、9月はじめには東京で、130社200名の企業の方々をお招きして「しまね産業セミナー」を開催しました。
今後もこうした場を通じて、工場の地方分散を検討している企業がその候補地の一つとして、島根県を考慮されるよう、県の立地優遇制度や立地環境の良さなどをアピールしてまいります。
(IT産業の振興)
IT産業につきましては、今年7月、県内のIT業界の方々が主導され、松江発のコンピューター言語Rubyの利用拡大を内外に発信することなどを目的として、Rubyアソシエーションという新組織を松江市に設立されました。
そして、先週松江において、このRubyアソシエーションが中心となって、3回目となるRubyワールド・コンファレンスが開催され、国内外から約1,000名の参加者を得ました。
県内IT企業がこうした機会を自らの事業の発展に活かせるよう県として積極的に支援してまいります。
(社会基盤の整備)
次に、社会インフラ整備について申し上げます。
今回の大震災において、高速道路が被災地の救助活動や生活物資などの輸送路として果たす大きな役割が改めて認識されました。
7月末には、高速道路整備が遅れている島根県など10県の知事が共同して、国に対し、その整備促進を要請しております。
今後とも、山陰道の早期整備を国に強く要望してまいります。
斐伊川・神戸川治水事業につきましては、上流部の尾原ダムは10月中に試験湛水を再開したのち、今年度中には完成予定であります。
中流部の斐伊川放水路は、平成20年代前半の完成を目指し進められておりますが、併せて、県におきましても、出雲市内の内水対策のための河川改修を着実に進めてまいります。
また、下流部の大橋川改修につきましては、地区住民や関係者のご理解のもと、追子地区において築堤工事が着手されました。
引き続き、こうした治水事業が円滑に進められるよう、取り組んでまいります。
昨年「重点港湾」に選定された浜田港につきましては、今年国が募集した「日本海側拠点港」に正式に応募しました。
8月には国の検討委員会に対しまして、ウラジオストクとの間のローロー船航路の拡充や原木の大量調達に向けた取組みなど、浜田港の強みを活用した拠点化の方策について県と浜田市が一緒になって説明したところであります。
(航空路線の利用促進)
出雲縁結び空港につきましては、今年3月から小型化された東京便について、中型機での再運航を要望してまいりましたが、この10月から実現されることとなりました。
萩・石見空港につきましては、7月と8月に期間運航された大阪便について、地元とともに利用促進に取り組んできましたが、利用者数では昨年度とほぼ同程度の利用実績がありました。引き続き、大阪便の通年運航再開について運航会社に要望してまいります。
隠岐空港につきましては、大阪夏季ジェット便の目標利用率80%を達成しました。この結果を踏まえ、来年度の運航についても要望を行い、将来の東京直行便開設につながるよう努めてまいります。
(隠岐地域の振興)
隠岐航路につきましては、高速船レインボー2の後継船として、今年10月に隠岐広域連合がジェットフォイルを導入することとしており、県として必要な支援を行う考えであります。
また、隠岐ジオパークにつきましては、この度、日本ジオパーク委員会が、来年度の世界ジオパーク認定の候補地に決定しました。
今後は、来年秋に予定されている世界ジオパークの認定に向けて、地元の推進協議会の取組みが一層進むよう、県としても積極的に支援してまいります。
(地域医療の充実)
次に、地域医療の充実について申し上げます。
地域枠で入学したり奨学金の貸与を受けた島根大学医学部の学生や研修医の方々の県内勤務を促進するため、今年8月に「地域医療支援センター」を設置しました。
この「センター」は、大学、医療機関、医師会、行政等が一体となって、医学生が卒業後、県内各地の医療機関に勤務しながら専門医の資格を取得するなど、医師としてのキャリア・アップを支援することとしております。これにより、島根の地域医療を支える医師が増加することを期待しております。
また、6月に運航を開始したドクターヘリにつきましては、県内各地域からの要請を受けて、当初の予想を上回る1日平均1.7回程度の出動を行っており、救命率の向上、後遺症の軽減などに大きく寄与してきております。
(再生可能エネルギーの活用)
さて、先般、国会において「再生可能エネルギーに関する特別措置法」が成立しました。これにより新たに導入される「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が県内で活用されるよう、国の動向をよく注視しつつ、調査研究や普及啓発などに努めてまいります。
(交通事故の抑止対策)
次に、交通事故の抑止対策について申し上げます。
この8月に策定した第9次島根県交通安全計画では、昨年、年間31人まで減少した交通事故死亡者数を平成27年までに20人以下とする目標を掲げております。
交通事故による死亡者の半数を占める高齢者に対する施策を始めとして交通事故の抑止対策に取り組んでまいります。
(市町村の動き)
次に、市町村合併についてでありますが、今年8月1日に、松江市と旧東出雲町の合併により、新「松江市」が誕生しました。
また、今年10月1日には出雲市と斐川町の合併により、新「出雲市」が誕生することとなっております。
今後ともこの両市をはじめ市町村と連携・協力し、地域づくりに取り組んでまいります。
(財政の健全化)
次に、財政の健全化につきましては、平成20年度から23年度までの4年間を集中改革期間として取り組んでまいりました。これまでのところ、概ね当初の目標に沿った形で進んでおります。
平成24年度以降、財政健全化をどのように進めていくのかにつきましては、目下、検討作業を行っているところであります。今後とも県議会をはじめ県内各界の意見もよくお聞きしながら検討を進めてまいります。
(島根総合発展計画)
「島根総合発展計画」につきましては、平成19年度に今後概ね10年後を見通した計画として策定し、今年度末には最初の4年間の「実施計画」の計画期間が終了することとなっております。
財政健全化の作業と並行して、経済・社会情勢の変化などを踏まえ、また、県議会をはじめ幅広く県民の方々の意見をお聞きし、次の4年間の実施計画を今年度内を目途に策定する考えであります。
(若者の活躍)
さて、今年の夏も、若者のはつらつとした活躍がありました。
全国高校総体では、安来高校がフェンシング男子団体で28年ぶりに優勝、横田高校がホッケー男子で3年ぶりに優勝、松徳学院がバドミントン女子団体で県勢として初めての準優勝を果たしたのをはじめ、16種目で入賞がありました。
また、全国中学校体育大会では、水泳男子高飛込みで松江市立湖東中学校の生徒が優勝しました。
こうした若者の活躍が、今後さらに拡がっていくことを期待しております。
(補正予算案など提出議案)
それでは終わりになりますが、今回提案致しました一般会計補正予算案などの概要について、ご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、第1に、都道府県が共同して行っている被災者生活再建支援基金への追加拠出など、東日本大震災や福島原発事故に伴い補正を必要とする経費、第2に、公共事業について国の補助金・交付金の追加内示に伴い補正を必要とするもの、第3に、地域医療提供体制の整備など、早急に対応すべきものについて措置することとし、総額29億1,200万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,414億3,600万円余となります。
この補正予算案のほか、予算案14件、条例案4件、一般事件案9件の計28件を提案しております。
これらの詳細につきましては、この後、総務部長に説明させることと致します。何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私からの説明を終了致します。
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