平成22年11月定例県議会知事提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(最近の経済情勢)
まず、最近の我が国の経済情勢を見ますと、急激な円高による輸出と生産の落ち込みなどにより、先行きに懸念が生じ、雇用情勢も厳しい状況であります。
こうした中で、政府は、9月の約1兆円の経済対策に続き、10月には約5兆円の経済対策をとりまとめ、現在、そのための補正予算案が国会で審議中であります。
この対策には、雇用、子育て、介護分野のほか、公共事業の積増しなどが盛り込まれており、この補正予算の早期の成立と速やかな実行を期待しております。
(県の経済対策)
島根県におきましても、景気の先行きに不安感が広がっており、来春の高校卒業予定者の内定状況も厳しい情勢にあります。
県としても国の補正予算に対応して必要となる予算措置を迅速に講じていく方針でありますが、国の補正予算における各事業の詳細につきましては、まだ十分明らかになっておりません。
このため、今議会冒頭に提出した県の補正予算案におきましては、新規学卒者等の就職を支援する事業など県独自の雇用対策にかかる経費と、介護施設の整備など先の国の経済対策を受けて措置する必要のある経費などのみを追加したものとしております。
今後、国の補正予算の内容とそれに伴って県が取るべき措置が明確になり次第、今議会中にもさらに追加の補正予算案を提出することを含め、適切かつ迅速な対応を取ってまいります。
(活力ある県内産業の振興)
こうした厳しい経済情勢が続く中、産業の振興による雇用の拡大は極めて重要であります。
企業誘致につきましては、本年8月以降、福利厚生サービスの提供を行う企業や、自動車座席シートの縫製を行う企業など、7件の立地計画を認定しました。これらの計画により、新たに400名を超える雇用が創出される見込みであります。
また、10月には、大阪におきまして製造業・ソフト産業140社の方々をお招きし、島根県の企業誘致策をアピールしてまいりました。引き続き、企業誘致に全力をあげてまいります。
次に、観光振興につきましては、「神話のふるさと『島根』推進事業」の基本構想を今月1日に策定し、公表したところであります。
今後、神々の時代から受け継がれ、「古事記」、「日本書紀」、「出雲風土記」、「万葉集」などにも描かれた県内各地の豊かな自然や歴史・文化を積極的に活用した誘客を行ってまいります。
まず県内では、県民の皆さんと一体になりまして島根の素晴らしさを学び、郷土への誇りと愛着を高めるとともに、観光客の方々をおもてなしする体制づくりに取り組むこととしております。
また、県外の方々などに島根の魅力を「楽しんで」、「感じて」、「学んで」いただくため、島根の歴史文化遺産を展示する展覧会を平成24年度に東京及び京都の国立博物館で開催したり、県内各地で神楽公演や各種企画展を行うなど、様々なイベントを展開することとしております。
そして、こうした情報を多様なメディアを活用して県内外に広くPRし、旅行会社に対して旅行商品づくりを積極的に働きかけて、観光客の増加を図ってまいります。
この観点から、先日、大阪と東京で観光業者等を対象に、観光情報説明会を行いました。
引き続き、県内各市町村、観光関連企業や経済団体、そして多くの県民の皆様からいろいろなアイデアや提案をいただきながら、県をあげて取り組むことにより、全国の方々に「神々の国しまね」への関心と知名度を高めてまいります。
また、10月には、首都圏におけるアンテナショップ「にほんばし島根館」の改装オープンを行いました。
拡充した売場や、新たに整備した大画面での映像などを活用して、県産品の認知度向上と観光誘客の強化を図ってまいります。
次に、農林水産業の振興について申し上げます。
県内農業につきましては、夏の猛暑などの影響により、本年産米の作柄は「やや不良」となり、1等米比率も大幅に低下する中で、米価は全国的に下降基調にあるという厳しい状況にあります。
このため県では、稲作農家の方々のために相談窓口を各農業普及部に設置するとともに、新たに融資制度を創設するなど緊急支援措置を講じてきております。
また、今般、関係機関の協力を得て、水田を活用した農業展開の指針を取りまとめました。今後この指針も踏まえながら、引き続き、地域の特性を活かした多様な水田農業の取組みを支援してまいります。
林業・木材産業の振興につきましては、10月1日に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。
県が行う公共建築におきましても県産材の使用を積極的に進めるとともに、市町村、民間の方々による県産材活用を促進してまいります。
水産業につきましては、「JFしまね福浦さわらの会」が第49回農林水産祭において、島根県では25年ぶりとなる天皇杯を水産部門で受賞されることとなりました。
これは、徹底した鮮度管理によるサワラの付加価値向上への取組みが高く評価されたものであります。
このような各地の農山漁村の特色や創意工夫を活かした売れるものづくりを、今後も積極的に推進してまいります。
さて、次にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について申し上げます。
TPP参加・不参加に伴う影響は極めて広範で大きなものでありますので、政府は、まずこうした問題についてどう対処するのか、国民によく説明することが求められております。
たとえば、参加に伴い関税撤廃があらゆる物品に対して行われますと、日本の農業は壊滅的な影響を受けるおそれがあります。
政府は、これにどう対処するか、各界の意見をよく聞いて慎重な対応を行うことが是非とも必要であります。
県としても、こうした点を国に対して強く訴えるとともに、持続可能な農業を確立するための政策の推進を働きかけてまいります。
(社会資本・生活基盤の整備)
次に、社会資本整備について申し上げます。
高速道路の整備につきましては、10月に島根県など整備が遅れている9県の知事が共同して、国に対して政策提言を行ってまいりました。
過密の大都市から地方へ人口を分散していくためには、地方で企業立地が進むことが必要であります。そのため、高速道路ネットワークのミッシングリンクを早期に解消することなどを国に強く要請したところであります。
次に、県内航空路の確保について申し上げます。
萩・石見空港につきましては、地元の方々とともに、大阪線の利用促進に積極的に取り組み、8月以降、目標とした80%以上の利用率を達成しております。この実績をもとに、早期の運航再開を、目下、全日空に要請しているところであります。
出雲縁結び空港につきましては、今月20日に愛称化記念式典を開催しました。今後もこの愛称を活用した利用促進に努めてまいります。
(安全・安心な県民生活の確保)
次に、中国電力島根原子力発電所における保守管理不備の問題について申し上げます。
県におきましては、9月初めに国から2号機の運転再開についての説明を受けた後、松江市と合同で立入調査を行ったり、県の原子力安全顧問、県議会や住民の方々などの意見をお聴きしてまいりました。
これらを総合的に勘案し、10月19日、県として2号機の運転再開を認める旨を経済産業省に伝えました。
その際、運転再開を認める条件として、国が引き続き特別な保安検査等により中国電力に対して厳格な指導・監督を行うことを経済産業大臣に強く求めました。
また、中国電力に対しましても、2号機の運転再開にあたっては、国の厳格な指導・監督の下に、関連会社を含め全社を挙げて再発防止対策を確実に実行していくことを強く申し入れました。
さらに、中国電力及び国から、県、松江市及び住民の方々に対して、適時・適切に状況の説明をしてもらったり、意見交換等を行う場を設けることとしております。
その第1回目の会合は、2号機の営業運転開始前に開催できるよう、目下、関係者間で調整中であります。
次に、治安対策について申し上げます。
県では、「犯罪に強い社会の実現のための島根行動計画」に基づき治安対策を強化してきております。
特に、暴力団対策につきましては、近年、暴力団が組織の実態を隠しながら県民生活や経済活動に深く入り込み、資金獲得の手段を多様化させているため、県民や事業者と一体となった暴力団排除の取組みが必要であります。
こうした状況を踏まえ、島根県暴力団排除条例案を今議会に提出致しました。今後、この条例に基づき、県民総ぐるみで社会から暴力団を排除してまいりたいと考えております。
また、島根県立大学の学生、平岡都さんが痛ましい事件によりお亡くなりになられて1年が過ぎました。改めて、ご冥福をお祈りするとともに、一刻も早い事件解決を切望しております。
犯罪の起きにくい社会をつくるため、防犯ネットワークを活用して安全情報をタイムリーに提供するなど、官民一体となって地域の犯罪抑止に全力をあげてまいります。
(若者の活躍)
さて、千葉県で行われました今年の国民体育大会では、365名の選手団が参加し、陸上競技成年女子棒高跳びや、レスリング少年男子フリースタイル120キロ級で優勝するなど、立派な成績を残しました。
また、この秋から島根初のプロスポーツチーム、島根スサノオマジックがよく健闘しております。県民に親しまれるチームとして、大きく成長するよう県民をあげて応援していきたいと考えておりますので、宜しくお願い申し上げます。
また、里見香奈さんが、このたび女流王将を獲得され、倉敷藤花、女流名人と合わせ女流三冠の偉業を、史上最年少で達成されました。
このような島根の若者の活躍は、県民にとって大きな喜びであります。今後も若者たちの活躍を大いに期待しております。
(補正予算案など提出議案)
それでは次に、今回提案致しました一般会計補正予算案などの概要について、ご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、先に触れましたように来春の新規学卒者等の就職に対する特別支援など、早急に対応すべきものについて措置することとし、総額4億4,000万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,466億4,000万円余となります。
この補正予算案のほか、予算案1件、条例案7件、一般事件案6件の計15件を提案しております。
これらの詳細につきましては、この後、総務部長に説明させることと致します。何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げます。
さて、最後になりますが、この場をお借り致しまして、今後、私が県政に取り組む決意について、一言申し述べさせていただきたいと存じます。
私は、平成19年4月、「活力ある島根」の実現を訴え、多くの県民の皆様のご支援を賜り、知事に就任致しました。以来、3年半を経過したところであります。
私はこの間、島根が持つ豊かな自然や古き良き文化・伝統、特色のある地域資源といった強みを活かしながら、また、できるだけ多く県内各地の現場を見、県民の皆様のご意見などをよくお聞きしながら、島根の発展のために、全力をあげて取り組んでまいりました。
また、中長期的な展望の下に、県財政の建て直しを進めながらも、一昨年秋のリーマンショック以降は、厳しい経済雇用情勢を踏まえ、切れ目のない大型の景気・雇用対策を打つなど、機動的な政策運営に努めてまいりました。
他方、少子高齢化と人口減少が進む島根におきましては、問題山積であります。医療・福祉の充実、産業振興、農林水産業対策、中小企業対策、離島・中山間地域対策、教育の充実、安全・安心社会の確立など、取り組まなければならない課題が数多くあります。
こうした中で、私は、県民の皆様のご支持が得られれば、引き続き、県政を担わせていただき、島根のさらなる発展のために、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
私が目指す島根は、「誰もが住みやすく、活力ある島根」ということであります。
たとえば、「子どもたちが元気に心豊かに育つ」、「若者が生き生きと働ける場が増える」、「障がいをお持ちの方もご高齢の方も安心して暮らすことができる」、「女性がはつらつとして家庭や社会で活躍できる」、そして、「皆なが助け合い、温かく活力ある島根を築く」ことを目指したいと考えております。
これを実現することは容易なことではありませんが、私は、県民の皆様と一体となり、全力を挙げて取り組んでまいる決意であります。
以上、私の決意を表明をさせていただきました。これをもちまして、私の発言を終りとさせていただきます。
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