平成20年9月定例県議会知事提案理由説明要旨
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(島根県出身の若者の活躍)
今年の夏は大変暑い夏でありましたが、元気な島根の若者の活躍が各所に見られました。
8月の全国高校総体では、女子のなぎなた競技で出雲北陵高校の生徒が優勝し、男子ホッケーでは横田高校が3年連続優勝という偉業を成し遂げました。
また、全国中学校体育大会では、男子ソフトテニスで大社中学校が島根県では団体として初めての優勝を勝ち取りました。
北京オリンピックでも、女子ホッケーや男子テニス、野球で島根県出身の選手が奮闘しました。
こうした島根の若者の活躍は、我々県民に大きな感動を与えてくれました。
(最近の経済情勢と国の経済対策)
このような明るいニュースがある中で、経済面では厳しい状況が続いております。世界的な原油高や米国景気の低迷が続き、日本経済の先行きにも懸念が生じ、更に下振れするリスクも指摘されております。
県内におきましても、燃油や各種生産資材の高騰により、農林水産業・中小企業などに大きな影響が生じております。
このため、政府は、8月末、原油・食糧価格高騰への対応や国民生活の不安解消などを柱とした、事業規模11兆7千億円の総合経済対策を取りまとめました。
しかし、9月1日の福田総理の突然の辞任表明により、臨時国会の開会が延期され、対策関連の補正予算の成立が遅れることが懸念されております。
(県の経済対策)
県としましては、国の経済対策ができるだけ早く実施されることを期待しておりますが、国の対策とは別に、農林水産業の省エネルギー化を進めるための予算の増額補正などを今議会に提案しております。
また、中小企業の対応策として、県の制度融資の金利の引き下げや融資の返済期間や据置期間の延長を9月10日より実施しております。
今後も国の対策なども踏まえながら、県内の経済活動や県民生活に支障が生じないよう適切な対応策を講じてまいります。
(県の財政運営)
こうした不安定な政治経済情勢がありましても、これにより県の財政運営に支障が生じて必要な施策が実行できないようなことがあってはなりません。県としましては、国に対して引き続き、地方財政対策の強化を要請しながら、これまで県が進めてきた「財政健全化基本方針」に沿って健全化を進めていく必要があります。
(企業誘致などによる産業の振興)
こうした中で、県経済の発展と安定のために、産業の振興はますます重要な政策課題となっております。
企業誘致は、日本経済の先行き不安もある中で、これまでのところ比較的順調に推移しております。今年度認定した立地計画は、件数で12件、総投資額は120億円を越え、新規雇用計画数は400人近くとなっております。
来月末には広島で立地セミナーを開催するなど、引き続き誘致活動を積極的に行ってまいります。
(ソフトウェア企業の誘致)
また、ソフト系IT企業の誘致につきましては、今年度から新たな優遇制度を設け重点的に取り組んでおりますが、7月には、この制度を適用する第1号の企業として、「Ruby」によるプログラム開発を行う県外企業の立地計画を認定しました。これに続き幾つかの案件について目下、交渉中であります。
このほかソフトウェア技術者の養成を行ったり、島根大学で「Ruby」の利便性を高める技術の研究を行うプロジェクトも始まっており、県としましては、このような取り組みが円滑に推進され、成果が現れるよう支援してまいります。
(県内企業の人材確保)
また、県内企業による人材確保につきましては、全国的な就職活動の早期化の動きに合わせて、県内企業も早めに求人活動に動き出すよう働きかけているほか、10月以降、県出身者の多い大阪、広島で大学生等を対象とした県内企業の説明会を開催することとしております。
(海外での販路拡大)
県産品の海外での販路拡大も重要な課題であります。ウラジオストクと浜田を結ぶ貨物専用船の新規航路開設が決定され、7月25日に第1便が就航しました。同時期にウラジオストクで島根フェアを開催し、私も一緒に出向きまして島根のPRを行いました。現地の子供用品店や中古車市場なども見て回りましたが、人々の日本製品に対する関心の高さや県産品の評判の良さを改めて実感しました。
また、境港と、韓国東海、ウラジオストクを結ぶ貨客船航路が来年開設される予定であります。県としましては、こうした好機を逃さず、県内企業のビジネスチャンスの拡大を図っていきたいと考えております。
台湾につきましては、10月から11月にかけて、浜田市や県が支援する島根物産展が台湾の2つの百貨店で開催されることとなっております。今後も引き続き、米、果物、牡丹などの農林水産物を中心に販路拡大や、観光誘客にも積極的に取り組むこととしております。
(観光の振興)
次に、観光の振興について申し上げます。
この3月に「しまね観光立県条例」が成立しました。この趣旨を踏まえ、県民総ぐるみで観光客の方々をもてなす気運を高めるためのシンポジウム開催や、県内の観光情報について自由に意見交換ができるインターネットサイトの立ち上げなどを行うこととしております。
また、国は滞在型の観光地づくりを目指す「観光圏整備法」を成立させ、目下、広域観光圏作りを進めております。これを受け、島根・鳥取両県で協力して、8月には両県の民間経済団体、関係市町村及び県当局で協議会を設立し、この度、鳥取県三朝町から島根県大田市までを1つの観光圏域として整備するため計画を策定し、国に申請いたしました。
今後、石見銀山や出雲大社、中海・宍道湖、大山などの拠点を結んだ魅力ある広域観光圏ができるよう、鳥取県と連携し、官民一体となって取り組んでまいります。
(道路など社会資本の整備)
次に社会資本整備について申し上げます。
道路特定財源の「一般財源化」が来年度から実施されることが決定されていますが、具体的な進め方は来年度の国の予算編成の中で議論されることになっております。
道路のネットワークは経済発展のために欠くことのできない基礎的インフラであり、遅れている地方の道路整備に支障が生じないよう、国・地方合わせて必要な道路整備の財源を確保すべきであります。一般財源化は行うにしても徐々に行うべきものと考えます。
特に山陰道などの高速道路ネットワークは、日本全国どこにいてもスムーズにアクセスできるよう、できるだけ早く整備することが必要です。また、従来の地方道路臨時交付金のような、地方の裁量性が高く道路整備の遅れた地方に重点配分する仕組みも維持拡充される必要があります。
こうした道路整備の必要性につきましては、7月に開催された全国知事会においても知事会の提言として取りまとめられました。
今後も立場を同じくする県などと一緒になりまして道路整備の必要性を強く訴えていきたいと考えております。
(大橋川等の治水事業)
次に、斐伊川・神戸川の治水事業について申し上げます。
上流部の志津見ダム・尾原ダム、中流部の放水路については、国により順調に工事が進められております。
下流部の大橋川の改修は、松江市の中心市街地での大規模事業であり、背後のまちづくりや環境への影響に十分に配慮して進める必要があります。
そのため、治水事業と一体となったまちづくり計画について、現在、松江市が中心となり、国、県も一緒になって、市民の意見を聞きながら、計画策定作業を進めております。
また、環境影響評価につきましては、国が行った環境影響調査の結果について県の意見を求められております。近くまとめられる県の環境影響評価技術審議会の答申や関係市町村の意見を踏まえて、必要な意見を述べてまいります。
今後も、松江市民や流域住民のご意見をよくお聞きし、また、下流の鳥取県とも調整を図りながら、治水、環境保全、まちづくり、この3つが調和した事業となるよう取り組んでいきたいと考えております。
(第2期地方分権改革)
第2期地方分権改革につきましては、国の地方分権改革推進委員会において議論が進められており、5月末には、国と地方の役割分担の見直しと地方への権限移譲を柱とした第1次勧告が取りまとめられました。
今後、11月の第2次勧告で国の出先機関の改革について、また、来春の第3次勧告では地方税財政改革について取りまとめられることとなっております。
第1次勧告では、直轄国道や一級河川の一部を都道府県へ移管する内容の勧告がなされました。道路や河川等の社会資本の整備には、大規模な改良工事や災害対策事業などで巨額の財源を要するものであり、権限移譲にあたっては、これに対応できる十分な財源措置が必須であります。
地方分権は必要でありますが、同時に財源の確保が不可欠であることを、国に対して強く主張してまいります。
(過疎・中山間地対策)
過疎・中山間地対策につきましては、これまで政府、与党、地方団体などで次期過疎法の制定に向けて種々の活動が行われてきています。
本年11月には全国過疎地域自立促進連盟による総決起大会が予定されておりますが、引き続き、県議会の皆様や関係市町村と一体となり、そしてまた、全国知事会や関係県などとも連携を深め、次期過疎法の実現に向けて働きかけてまいります。
(中山間地域再生モデル事業)
こうした国レベルの活動に加え、県としても地域活性化の具体的方策について調査、研究を行っております。例えば、今年度から、県のモデル事業として中山間地域において従来の集落を超えた広域的な枠組みづくりを目指す「中山間地域コミュニティー再生重点プロジェクト事業」に取り組んでいます。
現在、浜田市をはじめ5市町をモデル地域として指定し、広域的な住民自主組織の設立や地域での話し合いの推進、また、地域の束ね役となる地域マネージャーの配置などを進めております。
(あさひ社会復帰促進センターの開所)
さて、法務省が浜田市で整備を進めている「島根あさひ社会復帰促進センター」が、いよいよ10月に開所されることとなりました。
これに伴い多くの地元からの雇用や地域消費の拡大が図られるなど、様々な経済効果も現れてきております。
今後、このセンターが受刑者の社会復帰のための機能を果たしながら、地元浜田市をはじめとする石見地域全体の活性化に資するよう運営されることを期待しております。
(地域医療の確保)
次に地域医療の確保につきましては、医師不足が全国的な問題となっている中、島根県では、離島・中山間地域のみならず、市部の中核的な病院でも医師不足がさらに深刻な状況となっております。
国においては、これまで医学部の定員を抑制してきましたが、こうした状況を踏まえ、「骨太方針2008」において医学部の入学定員を「過去最大程度まで増員」することが決定されました。この方針を受け、島根大学は、平成21年度から10人の定員の増加を計画しております。
この医学部定員の増加を、離島・中山間地域などの医師不足解消に結びつけていくことが大切であり、島根大学と一緒になりまして、地域での勤務を誘導するような対策を進めてまいります。
(新型インフルエンザ対策)
次に新型インフルエンザにつきましては、その発生は時間の問題であると言われ、世界的流行に備えた体制の確立が必要となっております。このため、7月末には、私が本部長となって「新型インフルエンザ対策推進本部」を設置しました。
現在、新型インフルエンザについて県民への広報を強化するとともに、実際に発生した場合の県内における体制作りの準備を進めており、11月には県と関係機関が一体となった訓練を行うこととしております。
(還付金詐欺等の防止対策)
さて近年、全国的に高齢者が被害者となる還付金詐欺や交通事故が相次いで発生しております。島根県は有数の高齢県であり、これらの防止対策は極めて重要な課題であります。高齢者の方々を個別訪問して被害防止の助言や指導を行ったり、テレビの映像を活用した説明を行うなど高齢者に分かりやすい広報・啓発活動に取り組んでまいります。
(社会貢献活動への支援)
活力ある島根を築いていくためには、地域に密着した県民の方々の公益活動を一層推進していくことも大事であります。
今般、地方税法が改正され、所得税の寄附金控除の対象となる寄附金のうち住民福祉の増進に寄与するものについては、地方公共団体の判断で個人住民税からも控除できることとなりました。これを受けて島根県では、地域の民間公益活動を促進するよう、公益的な非営利法人に対する寄附金を条例により指定したいと考えており、今議会にそのための条例案を提出しております。
こうした資金的支援により民間の公益活動がさらに活性化することを期待しております。
(県職員のNPOへの派遣)
また、今年度から始めました県職員のNPO法人への派遣研修につきましては、7月から開始し、12月までに13団体に27人を派遣する予定であります。
これにより職員のNPO活動に対する理解を深め、現場での様々な体験を県が進める施策の構築、実施に活かすようにしていきたいと考えております。
(行政の公明・適正化)
最後に、最近生じました病院などでの採血器具の複数者使用や教職員採用試験の合否情報の事前連絡などの問題について申し上げます。
採血器具の複数者使用につきましては、全国的な問題となり厚生労働省では全国調査を実施して、その結果を公表するとともに、同省からの都道府県への通知の方法を改善するなどの措置を発表しております。
県としましても、事務処理や情報伝達の仕方などについて点検を行い、国からの通知文書の取り扱いのルールづくりなどの事務改善に取り組んでおります。
また、教職員採用試験の合否情報の事前連絡につきましては、過去においてそうしたことを行った管理職員に対し厳しく注意するとともに、全職員に対して二度とこうした行為が起きることのないよう強く指示しました。
今後とも、行政事務の公明・適正化を徹底し、全力をあげて県民の信頼に応えていくよう努めてまいります。
(補正予算案など提出議案)
それでは次に、今回提案いたしました一般会計補正予算案などについて、ご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、公共事業など国からの補助金や事業費の確定に伴い補正を要するもののほか、障害者自立支援、養護学校分教室整備、燃油高騰対策など早急な対応を要するもについて措置することとし、総額15億1,400万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,060億200万円余となります。
この補正予算案のほか、予算案14件、条例案5件、一般事件案10件の計30件を提案しております。
これらの詳細につきましては、この後、総務部長から説明させることといたしますが、何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
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