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針広混交林などの多様な森林(もり)づくりを検討する

課題名:水土保全など公益的機能を森林造成技術の確立(研究期平成15年度〜18年度)

 

研究の目的

 人工林の管理不足から、森林のもつ水土保全などの公益的機能の低下が懸念されている。そのため、公益的機能の発揮に重点を置いた針広混交林など多様な森林整備が注目され、その具体的手法の提示が求められている。

(1)育苗・植栽が可能で、かつ本県の環境に適合した広葉樹の選定とその育苗方法。

(2)公益的機能の発揮を重視した針広混交林の造成技術。

 

結果の概要

(1)本県の立地環境に適合した広葉樹の選定と育苗方法

 島根県の立地環境に適合した広葉樹を選定し、発芽試験および育苗試験を実施した。

 そのうち主要な10樹種(コナラ、クヌギ、ミズナラ、アラカシ、シラカシ、クリ、スダジイ、ケヤキ、ヤマザクラ、ウリハダカエデ)の育苗方法について「広葉樹育苗の手引き」としてまとめ、発刊した。

(2)樹下植栽、複層林形式による針広混交林造成技術

 14年生のスギ人工林内にケヤキとミズメの2年生苗を100本ずつ樹下植栽し、針広混交林造成試験を実施した。スギ上木および植栽木について、試験開始後1〜3年ごとに樹高、直径、枝張りを測定した。試験地内において、スギ上木は斜面位置による樹高成長の差はなかったが、植栽木は両樹種とも斜面下部に植栽された個体の成長が良好であった。特にスギ上木の林冠が疎開した場所に植栽された個体に旺盛な成長がみられたことから、植栽木の成長差は斜面位置よりも林内照度の差によることが明らかになった。

 このため、人工林内に樹下植栽し、複層林の型で針広混交林を造成するには、林内照度の管理が重要である。植栽木の良好な成長を促すためには、通常の定性間伐ではなく、林床へ光を取り込むことが比較的容易な列状間伐や群状間伐などを実施して、植栽木の成長にとって良好な照度が少なくとも10年程度継続することが重要である。

 

成果の活用上の課題

 従来、針葉樹主体の苗木生産であったことにより、今後、広葉樹育苗の技術定着に時間がかかる。

また、針広混交林の造成においては、下層への光条件が優れる列状または群状間伐等が効果的である。講習や研修会等を実施し、苗木生産者や森林所有者、森林組合など関係者の理解を得る必要がある。

 

 

針広混交林の写真1針広混交林の写真2

針広混交林造成試験地の状況

 

 


お問い合わせ先

中山間地域研究センター

島根県中山間地域研究センター
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