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事例6低密度植栽による植栽作業の省力化

 

島根県東部農林振興センター出雲事務山中啓介

島根県林業坂越浩一

島根県中山間地域研究センタ岩田若菜

 

キーワード

 

ヒノキ、低密度植栽、作業功程、下刈り

 

 

調査地

 

島根県安来市広瀬町布民有林

標高:300〜350m年平均気温:12.1年平均降水量:1,742mm

積雪:多地質:花崗土壌型:褐色森林土

 

 

施業履歴

 

 2007年以前

コナラなどが侵入している壮齢アカマツ人工林

 

 2008年12月

山火事の跡地を地拵え後、ヒノキ2年生実生苗を1,000本/ha(低密度)、3,000本/ha(普通)で植栽した。この時の作業功程を調査した

 

 

 

調査結果の概要

 

・植栽から1か月後では、コンテナ苗は20%の個体が倒伏していたのに対し、普通苗で倒伏した個体はなかった(表1)。また、コンテナ苗では幹が傾いていた個体が30%であったのに対し、普通苗は約3%であった。これはコンテナ苗の樹高と地際直径の比率(樹高/地際直径)が74であり、普通苗宮城が47、普通苗島根が66と比較して値が高かったためだと考えられる。

・根が露出した個体はコンテナ苗が30%であったのに対し、普通苗ではほぼみられなかった。今回の植栽では通常のクワを使用しており、コンテナ苗の根系直径より植栽穴が大きくなったことと、踏み固めが不十分だったことが原因と推察される。

・1成長期後の活着状況について、コンテナ苗は獣害(イノシシによる掘り起し)が原因で枯死した個体が20%あった(表2)。一方、普通苗では自然枯死と獣害を合わせてもコンテナ苗と同程度か、より低い枯死率であった。今回の調査では普通苗の枯死率が低かったため、コンテナ苗の活着の優位性は認められなかった。

・コンテナ苗は両普通苗と比較して、3成長期後の樹高平均値が低かったが有意な差はなかった(図1)。また、両普通苗に樹高成長の差はほとんど認められなかった。

・植栽から3成長期までの地際直径の成長量は、いずれの苗木もほぼ同程度であった。

 

 

今後の施業への示唆・留意点

 

・低密度植栽は普通植栽と比較して一日当たりの植栽本数は少なくなったものの、植栽面積は普通植栽の2倍以上となった(図1)。低密度植栽では植栽間隔が広くなるために植栽位置の決定に時間がかかる一方、面積当たりの植栽本数が普通植栽の1/3に減少した。このため、本数の減少効果が植栽位置決定に必要な時間の掛かり増し分を上回ったと考えられる。

・経験年数の長いベテラン作業員と経験の浅い作業員とも一本当たりの植栽時間は低密度植栽の方が増加した(図2)。この植栽時間の増加は新人作業員よりもベテラン作業員の方が大きかった。低密度植栽では既植栽木や他の作業員との位置関係の把握が個々の作業員だけでは困難であった。このため、指導的立場のベテラン作業員からの植栽位置の指示が増加しており、このことが作業時間増加の要因であると考えられる。

・今回の作業功程、労務費等の標準単価を基に植栽経費を試算した(表1)。普通植栽で約47万円を要した経費が低密度植栽では約17万円と1/3程度に減少した。植栽経費軽減という観点のみからは、低密度植栽は有効な手段であると考えられる。

 

 

発表成果

 

山中啓介(2009)平成20年度低コスト育林高度化事業報告書、林業機械化協会、67-72

 

 

図表

 

(図)

1一日当たりの植栽作業量(一人当たり)

 

 

 

(図)

2一本当たりの植栽に要する時間

 

 

 

表-1植栽経費の試算(円/ha)

(表)

 

 


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