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当センターで開発した「ぽん太」の研修会が開催され、講師をして来ました!

平成30年12月7日(金)雨時々曇り

 

 

 「ぽん太」とは、当センターの発案により開発された、樹木の健全度を診断する装置です。

決して、ローソンのポンタではないですよ(笑)。商品化されて8年がたっていることもあり、本装置の研修会は久しぶりでした。

 

 この装置は当センターで取得した特許を活用して、県内企業と共同開発したものです。幹を軽く叩いた時の音(周波数)で、通常

目には見えない樹木内部の劣化を診断でき、街路樹や公園木の倒伏危険性を判断することができます。また、スギの幹の中の材色※を

推定したりすることも可能です。

 「ぽん太」は樹木を管理する行政、造園、樹木医などから購入され、全国的に普及が進んでいます。最近では台湾や韓国での販売

実績もあります。

 

 ※スギの中心部の材は、綺麗な赤橙色からくすんだ黒色までありますが、黒色系は価格が低いことが多いです。もし、黒色系である

ことが立木の段階で分かれば、早めに間伐することができます。

 

写真1写真2

携帯性に優れた「ぽん太測定の様子

 

 

 

 ただ、開発中は実用化するのは無理ではないかと思うような、相当の不安や苦労がありました。

 

 最初、開発を共同で行った企業にはたまたま音響学に知識を持つ方がいらっしゃいました。このため、すぐに診断原理について理解

くださり、プログラミング作業も早く、試作機は円滑に作ることができました。

 

 しかし、発売1か月前に大きな問題が発生しました。東京都渋谷で街路樹を試作機で測定してみようと関係者で集まったのですが、

いざ使ってみると、まったく幹の打音の周波数を拾えなかったのです。この装置は,現場ではまったく使えないのではないか、と参加

者に不安がよぎりました。

 あとで分かったのですが、都市の雑踏が打音を乱していたことや、マイクの特性に一部問題があることなどが原因であることが分か

りました。その後、同企業の優れた技術の方が考案した方法により、この問題は現在では解決されています。

 本装置は幹を叩くだけで、幹の中を瞬時に見分けるという、分かりやすいキャッチフレーズを謳っていました。それゆえ、誰でも

専門的な知識なく簡易に診断できることを実現するため、苦心が非常に大きかったです。

 なお、この研究は当センターでは現在は終了していますが、企業のほうでは現在も改良が進められています。

 

 この「ぽん太」の研究開発ではとても多くのことを学びました。

 

 ☆完璧な技術というのは世の中には存在しないと思っています。技術的に未熟で不安要素があり、自信がなくても、なるべく早く

現場での活用・試用を勧めてみる。また、製品化を方などに早い段階から話を持ち掛けてみる。

 そうすると、今まで想定していなかった問題点に出くわす反面,新たな用途などに気づき、研究がさらに発展することがあります。

世に出してみて初めて気づくことが多いのです。

 実社会で批判されることを恐れず、とりあえず前に進めてみることが大事です。研究ですので失敗は付き物と捉え、時には開き直り

も必要かもしれません。

 

 ☆異分野の人に関わってもらうと、自分では考えつかないような発想が生まれること。自分の仕事をなるべく多くの人に語ってみる

ことや、積極的に共同研究したりすることも大事です。

 

 ☆自然界は多様であるということです。樹木を例にとるなら、さまざまな樹種があり、個体によって特徴があります。

例えば、ぽん太で測定してもまったく同じ反応が得られる個体はほとんどないです。農林業の現場は多様であり、このことは農林分野

で広く使える技術の開発をしばしば難しくしています。その多様性を心に留めながら、仕事をする必要があります。

 

 ☆新しい技術であればあるほど、つぎつぎと壁にぶつかります。(ありきたりの言い方ですが)あきらめの悪さ?と粘り強さが必要

です。

 

写真3

研修の様子(説明に熱心に聞き入る研修者)

 

 話をタイトルに戻しますが、研修会は松江市総合運動公園で行われました(11月下旬)。

参加者は樹木医など30名で、遠くは熊本、和歌山、高知から来ていただきました。樹木医さんは自費で来られた方ばかりでしたので、

講師としての責任を感じました。

 それと同時に、自分がかつて真剣に取り組んだ研究について、時を経て再び話をさせて頂けるという、研究者冥利に尽きる一日

でした(感謝)。

 

 

森林保護育成陶山大志

 

 

 

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