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腸炎ビブリオ

■腸炎ビブリオは日本で発見され、日本で研究された数少ない病原菌です。培地に食塩を添加すると発育が良好になる好塩菌です

 

発生状況 ◎腸炎ビブリオは海水域に分布します。検出時期は水温の高い5〜10月の夏期に高く、水温が下がる冬期にはほとんど検出されません。
腸炎ビブリオについて
病原体 ◎腸炎ビブリオ(Vibrioparahaemolyticus)は、大きさが0.4−0.6×2−3μmのグラム陰性の通性嫌気性細菌(酸素があっても、酸素の量が少なくても発育する細菌)です。液体培養では端在性の1本のべん毛をもち活発に運動する。条件によっては周毛も形成します。
◎腸炎ブブリオは3%食塩を好み、好塩性菌で、発育できる食塩濃度域は0.5〜8%です。(海水の塩分濃度は通常3.2〜3.5%)
感染経路 ◎海水濃度の高い時期に近海域で捕獲された魚介類の不適当な取り扱いにより、増殖します。また、調理加工した魚介類以外の食品にも、まな板・包丁・ふきんなどを通じ二次汚染し、腸炎の原因となることもある。一般にpH5.8以上で、1〜3%食塩を含んだ食品中で増殖しやすく、酢の物では減少します。
潜伏期 ◎10〜24時間程度です。しかし、時には2、3時間という短い場合もあります。
臨床症状 ◎臨床症状として特異的なものはなく、激しい腹痛、下痢、発熱(37〜38℃)、はき気、嘔吐が主な症状です。便性は主として水様ですが、血便・粘液便がみられることがあります。死亡率はきわめて低いですが、循環器症状を疑わせる所見で死亡例も報告されています。
検査室診断 ◎患者便から検査する場合は直接選択分離培地(TCBS寒天等)による菌の分離、生化学的性状などにより同定します。原因食品や環境から検査する場合や患者の便の菌量が少ないと予想される場合は、3%食塩加ペプトン水などで増菌したのちに、選択分離培地に植えます。
治療と予防 ◎本菌は海産魚介類を汚染源として食中毒を引き起こすので、魚介類は調理直前まで低温で保存し、調理前に真水の流水でよく洗い、調理後はできるだけ早く食べます。また、二次感染を防ぐため、調理機材の衛生等についても注意します。
◎治療は主として対症療法が中心です。ただし、下痢に対する薬剤(止痢剤)は、一般的に用いない方がよいとされています。脱水症状を認めた場合は、適切な対症療法が必要となります。
行政対応 ◎食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ます。

お問い合わせ先

保健環境科学研究所

〒690-0122 島根県松江市西浜佐陀町582-1
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