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赤痢菌

■赤痢菌はグラム陰性、非運動性短稈菌で、大腸菌と生化学的性状を近似し、血清学にも密接な関係があります。3類感染症であり、診断されると社会的影響が大きく、赤痢菌により近い大腸菌との鑑別が問題となっています。

 

 

赤痢菌について
発生状況 ◎細菌性の赤痢は世界のすべてにみられる感染症です。特に衛生環境の悪い熱帯または亜熱帯の発展途上国では高頻度に発生します。我が国でも1951年(昭和26年)頃は人口10万対100前後の罹患率で赤痢の発生がみられましたが1967年(昭和42年)頃から急速に減少し、現在は全国で年間約1,000人以下の感染者数となっています。
◎感染者は海外渡航歴のある人が多いですが、最近では海外に行ったことがなくても広域に流通する食品が原因で感染する人もいます。
病原体 Shigellaは細菌性赤痢の原因菌です。その生化学的性状はEscherichiacoli(大腸菌)と近似しています。この2種の菌はDNA間の相同性が通常85%以上です。Shigellaは分類学的にE.coli(大腸菌)に含まれると言っても良いでしょう。最近、より生化学的性状や血清型が似ている大腸菌との誤同定が問題となっています。
◎赤痢菌はS.dysenteriaeS.flexneriS.boydiiS.sonneiの4菌種に分けられます。赤痢菌はグラム陰性の通性嫌気性桿菌です。
感染経路 ◎糞口伝染病の代表的なもので、直接あるいは間接に伝播します。患者の手指、食品、器物、水が感染源となります。
潜伏期 ◎潜伏期は1〜5日、大多数は3日以内です。
臨床症状 ◎発熱、腹痛、下痢、ときには嘔吐であり、病変は大腸および直腸の粘膜上皮に限局する急性炎症と潰瘍形成です。重症例では回腸末端部におよび、頻回の便意、便は便状の部分なく膿粘血のみを少量ずつ排出します。しかし、最近は比較的軽症例が多いようです。
検査室診断 ◎便等から直接選択培地(SS寒天等)により赤痢菌を分離し、生化学的性状、血清型別を検査し同定します。なお、大腸菌との誤同定を防ぐため、PCR法も有用です。
治療と予防 ◎治療にはナリジキシン酸、カナマイシン、アミノベンジルペニシリン、コリスチンなどが使用されていましたが、ホスホマイシンやオフロキサシンなどのニューキノロン系の薬剤が汎用されます。ただし、多剤耐性を考慮して使用前に感受性試験を実施することが必要です。
感染症法での取り扱い ◎3類感染症に指定されていて、感染者(患者・無症状保菌者)が発生した場合、診断した医師はただちに最寄りの保健所へ届出が必要です。

 


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保健環境科学研究所

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