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黄色ブドウ球菌

■平成12年に本菌を原因とした雪印牛乳の大規模な食中毒が起きました。ブドウ球菌は食中毒の原因菌としてだけでなく、化学療法剤の耐性菌としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が問題となっています

 

黄色ブドウ球菌について
発生状況 ◎衛生管理の向上によりブドウ球菌による食中毒事例は減少しましたが、細菌の増殖しやすい夏期に多発します。しかし、生活環境や食生活の変化から冬期にも発生があります。
病原体 ◎ブドウ球菌はStaphylococcusaureus(黄色ブドウ球菌)、S.epidermidis(表皮ブドウ球菌)、S.saprophyticusの3菌種でしたが(1978年)、現在は28菌種、10亜種のブドウ球菌が報告されています。しかし、ヒトの食中毒の原因となる菌種はほとんどすべてStaphylococcusaureus(黄色ブドウ球菌)です。
◎ブドウ球菌はグラム陽性、顕微鏡で見るとブドウの房状塊、非運動性、通性嫌気性(酸素があっても、酸素の量が少なくても発育する)の直径0.8〜1.0μmの球菌です。
感染経路 ◎ヒトや動物の各部位にはブドウ球菌が高率に定着しています。ヒトに病気をおこすような黄色ブドウ球菌は健康なヒトでも鼻前庭や咽頭部に高率に定着しています。
◎ブドウ球菌食中毒は黄色ブドウ球菌が増殖する際に産生するエンテロトキシンによっておこります。エンテロトキシンは100℃30分以上の加熱にも耐える毒素なので、食品中の黄色ブドウ球菌がエンテロトキシンをつくってしまうと加熱しても食中毒は防ぐことができません。
◎我が国の食中毒の主な原因食品は、おにぎり、すし、弁当等です。
潜伏期 ◎喫食から発症まできわめて短く、1〜3時間(平均約3時間)です。
臨床症状 ◎はき気、嘔吐、腹痛、下痢が主な症状です。嘔吐は1〜2回のものから10回以上に及ぶこともあります。下痢は70%にみられ、重症例では1日10回以上の下痢や血便や粘血便となることもあります。
症状の持続時間は数時間のものが多いですが、時には1〜2日にわたることもあります。予後は良好で死亡例はほとんどありません。
検査室診断

培地上での黄色ブドウ球菌◎原因食品、便や吐物を検体とし、分離培地(卵黄加マンニット食塩寒天、B-P寒天等)による菌の分離、コアグラーゼテスト、グラム染色などにより同定します。さらにエンテロトキシンの検査(RPLA法による検査やPCR法)も重要です。

 

卵黄加マンニット食塩寒天上でのブドウ球菌→

治療と予防 ◎本菌による食中毒を予防するためには、食品材料を汚染しないこと、加熱等によって殺菌すること、長時間放置しないことなど細菌の増殖を防ぐことです。調理の際は手袋やマスクを着用することも予防のひとつです。
行政対応 ◎食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ます。また、感染症法ではMRSAは定点把握の5類感染症(定点報告)として、発生情報が収集されています。

 

 


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