1)ブタにおける日本脳炎ウイルスHI抗体保有状況 2023年
2023年6月から9月の間に島根県食肉公社(大田市)で採取したブタ血清についてJaGAr#01株に対するHI抗体の推移および2ME感受性抗体を測定した。なお、2ME感受性抗体はHI抗体価が40倍以上となった際に行うこととしている。結果は下表に示すとおりである。
調査開始した6月上旬から8月上旬まではHI抗体陽性率が10%から60%であったが、8月中旬以降は、HI抗体陽性率が100%となった。HI陽性となった個体の2ME感受性抗体陽性率は68.1%(32/47)と過去10年で最も高かった。このことから、2023年6月上旬以前から9月までの長期間、日本脳炎ウイルスを保有する蚊が活動し、ブタにウイルス感染をさせていたと考えられた。
Konnoらによれば、ブタの半数以上が抗体陽性となると約2週間後からその地域で日本脳炎患者が発生することを報告している。
実際に2016年は8月下旬から抗体陽性となった6頭の内、2ME抗体陽性が5頭確認され、9月にヒトの日本脳炎患者が2例発生した。また、2019年は6月下旬から抗体陽性となった6頭の内、2ME抗体陽性が3頭確認され、10月にヒトの患者が1例発生した。
2023年は、ヒトの患者発生は確認されなかったが、本調査は上述のとおり、ヒトでの患者発生と関連していることから、次年度も引き続き調査を実施し、流行予測および感染予防啓発に努める必要がある。
調査開始した6月上旬から8月上旬まではHI抗体陽性率が10%から60%であったが、8月中旬以降は、HI抗体陽性率が100%となった。HI陽性となった個体の2ME感受性抗体陽性率は68.1%(32/47)と過去10年で最も高かった。このことから、2023年6月上旬以前から9月までの長期間、日本脳炎ウイルスを保有する蚊が活動し、ブタにウイルス感染をさせていたと考えられた。
Konnoらによれば、ブタの半数以上が抗体陽性となると約2週間後からその地域で日本脳炎患者が発生することを報告している。
実際に2016年は8月下旬から抗体陽性となった6頭の内、2ME抗体陽性が5頭確認され、9月にヒトの日本脳炎患者が2例発生した。また、2019年は6月下旬から抗体陽性となった6頭の内、2ME抗体陽性が3頭確認され、10月にヒトの患者が1例発生した。
2023年は、ヒトの患者発生は確認されなかったが、本調査は上述のとおり、ヒトでの患者発生と関連していることから、次年度も引き続き調査を実施し、流行予測および感染予防啓発に努める必要がある。
*本調査は令和4年度感染症流行調査実施要領(厚生労働省)に基づき行った。
表23 ブタの日本脳炎ウイルスHI抗体保有状況(2023年)
採血月日 | 検査頭数 | HI抗体価 | HI抗体陽性率 | 2ME感受性抗体※1 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
<10 | 10 | 20 | 40 | 80 | 160 | 320 | ≧640 | (≧10)% | 検査数※2 | 陽性数(%) | ||
6月9日 | 10 | 6 | 4 | 40 | 4 | 3(75.0) | ||||||
6月23日 | 10 | 9 | 1 | 10 | 1 | 1(100.0) | ||||||
7月7日 | 10 | 7 | 1 | 2 | 30 | 3 | 2(66.7) | |||||
7月21日 | 10 | 4 | 2 | 4 | 60 | 6 | 6(100.0) | |||||
8月4日 | 10 | 7 | 1 | 2 | 30 | 3 | 2(66.7) | |||||
8月18日 | 10 | 1 | 1 | 6 | 2 | 100 | 10 | 10(100.0) | ||||
9月1日 | 10 | 2 | 2 | 3 | 3 | 100 | 10 | 5(50.0) | ||||
9月15日 | 10 | 3 | 5 | 2 | 100 | 10 | 3(30.0) |
※1:2-メルカプトエタノール(2ME)感受性抗体(感染初期のIgM抗体の存在を示す)
※2:HI抗体価 1:40以上
※2:HI抗体価 1:40以上