●発生状況
咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever, PCF)は小児に好発する、発熱、咽頭炎、結膜炎を主な症状とする感染症です。
感染経路は飛沫感染(咳やくしゃみのしぶきに含まれるウイルスによって感染する)と接触感染(ウイルスで汚染されたドアノブなどを触った手による感染)です。
プールでの接触やタオルの共用により感染することもあるので、プール熱と呼ばれることもありましたが、近年ではタオルの共用が減った等の理由からプール利用における集団感染の報告は見られなくなってきています。
例年、7月から10月を中心に患者発生がみられますが、近年、冬季の流行も確認されています。
島根県では、2013年秋から2014年春にかけて患者報告数の多い状態が続き、2015年春と、2015年冬から2016年春にかけても流行が見られましたが、2017年以降は報告数が少なくなっていました。
しかし、2023年秋から冬にかけて大きな流行となっています。
●病原体
アデノウイルスによる感染症です。アデノウイルスには51種類の血清型及び52型以降の遺伝型(genotype)があり、A〜Gの7種に分類されています。
咽頭結膜熱の原因ウイルスとしては、3型が最も多く、1、2、4、5、6、7型も高頻度に関わっています。
●感染経路
患者からの飛沫感染、接触感染が中心で、家族内では飛沫感染のほか、患者とのタオルの共用、ドアノブなどからの接触感染があります。
●潜伏期
一般に5〜7日です。感染可能期間は発症から主要症状が治癒するまでの1〜2週間が最も強くあります。
また、便中には結膜炎治癒後1か月間はウイルスが排泄されるため、日頃からの衛生管理が重要です。
●臨床症状
39℃前後の発熱、咽頭痛、結膜炎が主な症状で、結膜充血、食欲不振、全身倦怠感、眼痛、眼脂、流涙などの症状が3〜5日
程度持続します。原因ウイルスのうち、アデノウイルス7型の感染では肺炎などの重症例も報告されています。
●検査室診断
通常、発熱・咽頭痛・結膜炎の3主徴で臨床診断されますが、確定診断のためには咽頭拭い液、結膜擦過物、糞便からの
ウイルス分離あるいは抗原の検出が行われます。医療機関で検体を採取して短時間で判定できる検査キットも市販されています。
●治療と予防
治療は、対症療法が中心に行われます。予防は、個人的な衛生管理として、流行期の人込みを避けること、排泄物の適切な
処理(便からもウイルスが排出されるため)、あるいは手洗いの励行、タオルなどの共用を避けること、などによります。
●感染症法での取扱い
五類感染症小児科定点把握疾患として、指定届出機関の医師は最寄の保健所に1週間の患者数を報告することになっています。
学校保健安全法では第二種の感染症に指定されています。発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消退したあと2日を経過するまで出席停止となっています。
更新日:2023年12月(流行状況の更新)