●発生状況
中東呼吸器症候群(MERS)は、2012年に初めて確認されたウイルス性の感染症です。
主に、中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン(2015年6月5日現在))で発生しています。
その他のヨーロッパ、アフリカ、アジア及び北米大陸での報告もありますが、中東地域で感染した人(輸入症例)もしくはその輸入症例患者と接触した人であることがわかっています。
また、2015年5月以降、韓国において、中東地域からの輸入症例とその患者との接触歴のある者からの患者発生が報告されています。
【中東呼吸器症候群(MERS)が発生している中東地域から帰国・入国された方へ】
中東呼吸器症候群(MERS)が発生している中東地域から帰国・入国された方で、発熱や咳などの呼吸器症状がある方やMERSが疑われる患者と接触した可能性がある方は、帰国・入国時に
検疫所の検疫官に申し出ましょう。
また、帰国・入国後14日以内に呼吸器症状がみられた場合は、「発生地域から帰国・入国した後、体調が悪い」等、
検疫所又は
最寄りの保健所へ電話連絡してください。
他者への感染のおそれがありますので、
検疫所又は
保健所の指示があるまでは、絶対に直接医療機関に行かないでください。
●病原体
2012年に初めて報告された新しい種類のMERS(Middle East Respiratory Syndrome)コロナウイルスによる感染症です。
2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))の原因となった病原体もコロナウイルスの仲間ですが、SARSとMERSは異なる病気です。
●感染経路
感染経路は、まだ正確にはわかっていませんが、ヒトコブラクダがMERSウイルスの感染源動物の一つであるとされています。
その一方で、患者の中には動物との接触歴がない人も多く含まれています。家族間や、医療機関における患者間、患者−医療従事者間など、濃厚接触者間での感染も報告されています。
【院内感染対策】
●潜伏期
2〜14日(中央値は5日程度)です。
●臨床症状
主な症状は、発熱、せき、息切れなどです。下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。
MERSに感染しても、症状が現われない人や、軽症の人もいますが、特に高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があります。
●治療と予防
患者の症状に応じた対症療法が行われます。予防接種はありません。
患者発生地域へ渡航する場合には、感染予防と万が一感染した場合のために、事前に注意事項を確認しておきましょう。
●感染症法での取扱い
全数把握の二類感染症に指定されていて、診断した医師は直ちに
最寄りの保健所に届出ることになっています。
【病原体診断】
鼻腔拭い液、咽頭拭い液、気道吸引液等の検体から分離同定による病原体の検出やPCR法による病原体遺伝子の検出を行います。
現在、各都道府県等の検査機関(島根県は、保健環境科学研究所)でMERSのスクリーニング検査(MERSコロナウイルスの少なくとも1つの遺伝子領域の確認)
を実施することが可能となっていますので、まずは
最寄りの保健所にご相談ください。
このスクリーニング検査で陽性になった患者は、さらに国立感染症研究所において確定検査(MERSコロナウイルスの少なくとも2つの遺伝子領域の確認)を行い、
ここでも陽性になったものをMERS患者(確定例)とします。